4 涙の中で、輝いちゃってる君
美紅が驚いて、足を止めた。
メガネがなぜか、落ちてくる。
それを押さえながら、
「……ごめんなさい」
気まずそうに言った。
若木の腕から、荷物が全て落ちた。
「う、う、う……」
腕で、顔を抑え、<そいつ>は逃亡した。
「う、うわああああぁぁんんん‼︎」
《《少女》》の号泣が走り去った。
「え? え? え?」
美紅は、ばらまかれた品物と、逃走した<そいつ>を見比べ、
「はぁ???」
メガネをずり上げた。
双葉は体育座りして、太陽公園の小さな丘の近くの、木陰にいた。
また泣けば、若葉に戻るのは、分かっていた。
(泣くもんか)
……もう、若木として、合わせる顔がなかった……。
(なんか、こんなこと、前にもあったな)
追いかけながら、美紅は思う。
(気持ちは嬉しい。でも……愛って、なんなの?
わかんないよ……)
12年前のことが、頭を過ぎる。
「あれ、やば、なんか、体、熱い!」
美紅は大胆に、上着を脱いだ。
チェックのミニスカートに、厚底ブーツ。チョーカー。
無造作に結んでいた髪を、ハーフツインテールにして涼やかに。
「やばい、たぎってきたよ!」
草を踏む音がした。
見上げると、金色の瞳の美紅が、自分を見下ろしていた。
「おほほ! また会ったわね、スウィーティ♡」
「み、美紅さ……」
青白い顔をした、いつになく死にそうな、レアな双葉。
「さぁさぁ、私の血をお吸いなさい!」
露出度多めの美紅が、双葉の顎に手を伸ばした。
「あ、あぅあぅ。やめて、美紅さん、俺、また泣きそ。
てか、献血したからか、ハートブレイクだからか、
いま鼻血ぶーしたら、死んでしまう!」
双葉が走馬灯見そうになったとき、
「やめろよ、ねーちゃん‼︎」
誰かの声が降ってきた。
「あ、あかば……」
危機一髪の双葉。
いつになく凛々しい(当社比120%)牙が、脱いだ運動靴で、美紅をはたいた。
双葉と美紅の間に入り込み、美紅を睨む。
「やめろ、ねーちゃん! この子は、僕の、僕の大切な……」
<友達なんだ>
と、続くと、双葉は思った。
━━だが。
牙は、
「僕の大切な、女の子なんだぁぁぁっぁ‼︎」
思いっきし叫んだ。
双葉が眉をしかめた。
「赤羽。おまえ、まだそんなこと言って……」
言っておいて、牙は思った。
(あれ、僕何言ってるんだろう)
美紅の目が、金色にまた光った。
「弟⁈ あんた、あたしのスウィーティを奪うつもり⁈」
「ね、ねーちゃんなんかに、双葉さんは釣り合わない!」
「なんですと⁈」
「決闘だ! 表にでやがれ!
……はぁはぁはぁ」
息切れだで、二の句が繋げない。
「ハーハーハー、弟よ、何もしてないのに、死にそうなのは、なーんでかなー???」
意地悪く、美紅が笑む。
「こなくそ!
必殺‼︎ チェーンジ、ヴァンプー!!!」
牙が、変身ポーズを決める。とりあえず、両腕開いてあちょーしてた。




