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シークレット・ブラッド  作者: うさぎさん⭐︎
【第2部】ワイルド・ブラッド(牙を剝く世界)/ 第1章 サンセット・ブラッド

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2 運命の女神

 

 さてさて。ここは、太陽学園。

 丘の上に建つ、太陽燦々な学園である。

 赤羽牙の席に、牙はいない(まだ)。

 いまごろ、丘と格闘していそうだ。


「はぁ……」

 2年F組。

 席に着いていた海山双葉が、溜め息をついた。

「ちょっとちょっと、双葉双葉、あんたどうしたの?」

 坂井喜美枝さかいきみえが、ポニーテールを揺らして、首を傾げる。

「あんた今日、108回も溜め息ついてるわよ」

 頭上にアホ毛がピンと立つ。

 そのカウンターは一体⁈ とツッコム奴は、ここにはいない。

「はぁ……喜美枝。いたの」

「いるっちゅーの‼︎」

 双葉は、相変わらずのおでこ出しの、ボブヘア。一重のクールな茶の瞳をしている。

「あんたどうしたの? 吸血鬼に噛まれたグール(?)のような顔して」

「……はぁ」

 双葉は唇を抑えた。目を泳がさせる。

「なによ」

「……誰にも言わない?」

「はぁ???」

 双葉は顔を真っ赤にした。

「……出逢ったんだ」

「はい?」

「……運命の女神に」


 牙が木の枝の、即席杖を着きながら、登校しようとしている。

 と、そこへ猛ダッシュの双葉が下校してくる。

「赤羽、おま、まだ、こんなとこに……」

 というツッコミを、牙は期待した。

 だが……。

 双葉は無言でいっちまいやがった。丘の下に。

 ━━牙の姿なんて、今に双葉には、眼中になかったのだった。

(なんだ、あいつ……)


 ピンポーン♪

 軽快に、赤羽家のチャイムが鳴った。

「はーい、どちらさま?」

 美紅と牙の母、美桜みおうが、三角巾にエプロン姿で出てきた。

 エプロン好きには堪らない。 

「あら? どなたかしら?」

 どっかで見た顔だった。

 でも、なんか違った。

「ははーん」

 美桜さんは、頭にアンテナ立てた。

「牙のガールフレンドかしら?」

「え、いえ、お母さん、俺は若……」

「牙はまだ帰ってないけど、牙の部屋で待っててくれる?」

 双葉は、自身を見た。

「……しまった、ぼーとしてて、双葉のまま来ちまった」

「??」


 牙帰宅。

 もう夜だった、ボロボロだった。貧血少年の名を欲しいままだ。 

 ちなみに牙は、毎夜毎夜、吸血モードなるわけではない。

 血が足りなくなると、ハントに行ってしまうこともあるが……。

「かーちゃん、若木来てない?」

「あら、牙、おかえり! 顔青いわよ? いつものことだけど。

 美紅の半分でも、血が余ってればねぇ」

「ねーちゃんと一緒するな!」

 牙が階段と格闘し、やっとこさ、部屋に辿りつくと、

「……おう、赤羽」

 <双葉さん>が、自分のベッドにうつ伏せになって、漫画読んでた。

「この漫画さいこーだな! 特に、ヒーローがヒロインを命懸けで守るとことか! 男は、こうじゃなくっちゃ‼︎」


『ヴァンパオア・アイズ あらすじ』

 異世界チックンなとこからやってきた、魔法吸血少女・アイ。

 アイの噛みつき魔法でシモベになったやっくん。

 アイの謎願いをかなえるため、二人は、異世界チックンへ!

 だが、あまりに強すぎる敵の襲撃に、ふったりはひっきさっかれ〜〜〜〜〜〜〜っい!!!


 牙のお気に入りの漫画だった。

 いつもなら、大いに盛り上がっただろう。

 ……目の前のお方が、ミニスカート・ルーズソックスで、あぐらかいてなければ。

「ミニであぐらかくな〜〜〜‼︎」

「……いいだろ、別に減るもんじゃねーし」

「そんな、学校ではあんなに女子なのに、僕の部屋では、こんなガサツ……」

 牙はクラクラする頭を押さえた。

「んだと、だれがガサツ……」

 冷血コールド・ブラッド双葉の目が、怪しく光った。

「しかし、やっくんがアイのために修行に出る回とか、熱すぎるぜ‼︎」

「いいから、ズボン履けよ」

 牙は三日月柄のハーフパンツを、双葉に放った。

「あんがと」

 意外に素直にいうことを聞くと、双葉はまた漫画読みだした。


 トントントン。

 爽快にドアがノックされた。

 美桜さんが偵察にきたのだ。

「トマトジュースと、牛丼よ」

「ぎゅ、牛丼⁈」

 普通、ケーキとかじゃ……なんて言葉は、美桜さんには通じない。

 まさに、無王(無敵の王)、魔王(マジカルな王)である(?)。

 彼女こそ、母子家庭の赤羽家の要だった。

「ご一緒してもいいかしら?」

「ヤダ」

「聞こえないわ、牙」

 牛丼は3人分。

 トマトジュースも、3人分。

 そう! これは、計画的犯行(?)だった!

「牙が女の子連れてくるなんて、小学生以来だわ」

「その話はやめろよ」

 双葉はクールにトマトジュースを啜った。

 牙は牛丼見て、いや〜な顔をした。

「この子ったら、私の作ったもの全然食べないのよ。ふりかけご飯とか、海苔ご飯とかばかり。

 も〜信じらんない‼︎」

「大変ですね」

「そうでしょ? だからこんな青白い顔ばかりして」

「同感です」

「話がわかるわね! ポップコーンと大違い」

「ぽ? いま、なんて……???」 

 双葉がハニワ化する。

「……こっちの話よ」

「はぁ……」

「それより、お名前聞いていい?」

「あ、はい、海山双葉です」

 きらんきらんと、双葉の背景が輝いた気がした(牙ヴィジョン)。

「うみやま……? どっかで聞いたような━━って、牙のボーイフレンドの若木くんにそっくり! よく見ると」

「気のせいです、おかーさん」

「ええ〜⁈ そんな偶然ある⁈ 真実はひとつなのに!」

「他人の空似です」

「はは〜ん」

 美桜さんの目が光った。

「ちょっと、来なさい牙」

 牙は廊下に連れ出された。

「……で、どっちが、本命なの⁈」

「なんじゃそりゃーーー‼︎ いみふ!!!」


 部屋に一人残された双葉は、密かに思っていた。

(早く帰ってこないかな。

 ……美紅さん) 












 





  





 



 






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