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第68話


 私は驚いて思わず声を出した。

 宇佐美さんはにっこりと微笑み、それからゆっくりと話し始める。


「まだ神藤くんとバディを組んで半年も経っていないでしょうに、この実力はすごいわ。私だったら一年かけてもここまでの領域には達せないわよ」


 それは……多分、とても良い、と言ってくれているのだろう。

 私は戸惑いと嬉しさで複雑な表情を浮かべた。


「私は……どうすれば良いでしょうか」

「そうねぇ。体術やらは堂間さんが教えるんなら申し分ないでしょうし、私が教えられるのは銃の扱いくらいかしら。どうして機関銃を選んだの?」


 機関銃を選んだ理由か……それは私にも少し答えづらい質問かもしれない。

 武器選びは戦闘隊員になる一週間前までに決める。基本的には、訓練生時代に一番スコアが良かったものを選ぶ人が多い。

 それから、メインは小回りが効くもの、サブで自分の強みを活かせるものを選び、うまく使い分けるのがよくあるパターンだ。

 私はというと、実は訓練生時代に一番うまく扱えたのは剣だった。剣道三段を持っているのもそのためだ。

 だから、本当は小回りが効くという意味でも、剣をメインにするべきだった。だが、いざメインを選ぶとなったとき、目に止まったのが機関銃だった。

 短機関銃。サブマシンガン。持ち運ぶには少し大きいけれど、持ってみると意外なほど体にフィットして驚いた。

 短機関銃は近接戦での制圧に最適な武器だ。自衛隊でも使われているし、戦闘隊員でもそれなりによく見る武器だった。

 私は転移で敵を殺すので、基本的には武器は制圧用だ。動きを止めて、転移で核を取り出して殺す。当初はそんな使い方を想定していたので、短機関銃と剣を選んだ。

 とはいえ、いざ戦ってみると、機関銃でも制圧はそれなりに苦労するし、いちいち剣を取り出すのが面倒なので、機関銃でそのまま殺すことが多かったけれど。

 剣は初め、短剣を持っていた。だが、だんだんと倒す敵の大きさが大きくなっていくにつれ、短剣では届かない場合も増えた。そこで長剣と入れ替えたのだ。

 とまあ、そんな風に今の形になっていったのだが、理由といわれれば、機関銃は私の性に合っていたからというのが一番大きい気がする。


「機関銃が私に合っているなと思ったんです。重さにしても大きさにしても反動にしても、扱いやすいなと感じたので選びました」

「そうなの……使ってるのは重機関銃とかではないわよね?」

「短機関銃です」

「じゃあ近距離戦がメインなのね」

「はい」


 私は頷いて、腰のベルトポーチから機関銃を取り出す。

 ポーチは中に拡大技術が使われているので、見た目よりずっとたくさんのものが入る。ついでに重さも軽量化される仕組みだ。超能力研究の賜物だという。


「良い銃ね……エミュレイターでも、これを浴びればひとたまりもないでしょう。連射できるから一気にたたみかけられるのも強みね」

「そうですね。基本的には、この銃で敵に近距離で弾丸を浴びせて殺します」


 私の戦闘スタイルはシンプルだ。体術はあまり使わず、基本的には銃メイン。時々長剣も使いつつ……という感じ。


「ライフルと比べれば遠距離戦には弱いけれど、あなたの場合、転移で間合いに入れるのだから遠距離戦にこだわらなくても良いでしょうし」

「はい」


 宇佐美さんは興味深そうに私の銃を見つめていた。


「ちょっと撃ってみても良いかしら?」

「あ、どうぞ」

「ありがとう」


 そう言って、宇佐美さんは銃を手に取る。

 そうして撃ち始めたのだが、扱い方がうまいのが一目で分かった。

 今さっき持ったばかりの銃で、確実に的の中心に命中させている。しかも反動もうまく逃がしている。

 的はどうやら特殊仕様らしく、エミュレイター戦で使うこの銃の威力でさえ吹き飛ぶことはなかった。

 しかし、連射していれば当然穴は広がっていき、気づけば的の中心にはぽっかりと穴が開いてしまっていた。


「うぅっ、良いわね!この銃」

「えっ!あ、ありがとうございます?」


 宇佐美さんはにっこにこで私に言った。

 私は戸惑いつつ、とりあえず答える。


「そうね、あなたも撃ってみて。あっちの的に」

「はい。分かりました」


 指さされた的を見て頷く。

 宇佐美さんから銃を返してもらい、的の前に立った。

 慣れた手つきで銃を構える。

 ドドド、と連射を始めると、弾は全て的の中心に命中する。

 まあ、私は何度もこれを使っているので当然だ。このくらいの射撃精度がなければエミュレイターは倒せない。

 とりあえず穴が広がらないうちに、射撃をやめた。


「どうですかね」

「悪くないわ。ちゃんと基礎は踏襲してる感じね。あとは細かいところをよくしていけば良いと思うわ」

「分かりました。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」


 ぺこっと頭を下げると、宇佐美さんは手を顔の前でひらひらさせて言った。


「そんなにかしこまらなくて良いのよぉ。じゃあ、早速教えるからね」

「はい」


 それから私は神藤さんの監視の下、宇佐美さんに銃の扱い方の極意を教えてもらった。

 銃というのは奥が深い。訓練生時代は主に拳銃しか扱ってこなかったので、機関銃の扱いについては、実はまだあまり知らなかった。

 宇佐美さんはそんな私に、丁寧に一つ一つ教えてくれた。

 優しい教え方で、間違えても怒ることはない。ふわふわ笑って、こういう感じよ、とそっと寄り添ってくれた。

 そんな感じだったので、気づけば私もリラックスしていた。

 そうやってその日は、楽しいまま終わった。

 帰り際、宇佐美さんが私に言った。


「あんまり教えられる日は多くないけど、短い間になるべく色んなことを教えられるように頑張るわぁ。また来てちょうだいね!」

「はい!今日は、ありがとうございました」

「ふふ」


 私は嬉しい気持ちで宇佐美さん宅を後にした。


「宇佐美さん、素敵な人でしたね」


 神藤さんに話しかける。

 神藤さんは相変わらずの無表情で答えた。


「……そうだな。あの人は珍しくまともだ」

「珍しくってなんですか。誰も彼も神藤さんみたいじゃないんですよ」

「……君は最近、私に対して不敬じゃないか?」


 神藤さんはこめかみを押さえて言った。

 まあ、確かに不敬なのは認める。私は最近、神藤さんが思ったほど怖くも冷酷でもないことに気づいた。ただ生粋の合理人間なだけだ。


「それだけ信頼しているってことですよ」

「そうか」


 心なしか、神藤さんは少し嬉しそうに見えた。

 嫌われていないということが嬉しいのかもしれない。この人嫌われるの大嫌いだし。

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