自縛自爆
それは突然湧き出た感情だった。
ティーは、クラスメイトと休み時間に談話中に、自分の机の上に置かれた佐藤さんの手を見て思った。
(佐藤さんの指って5本あって、なんか嫌だな…)
ティーの指は5本ある。正解には、右手左手右足左足の4箇所にそれぞれ5本づつ。
それに対してクラスメイトの佐藤さんの指の数も5本ある。ティーと同じく右手左手右足左足の4箇所にそれぞれ5本づつ。全く同じ本数が。
佐藤さんはティーにさっきの算数の授業のことを話しかけていたけど、ティーの頭の中はそれどころではない。
机の上にある佐藤さんの手が、指が、気持ち悪くてたまらないのだ。
ティーは佐藤さんのことが好きだ。佐藤さんは友達というほどではないが席の前後関係の中で、休み時間に話すことが多い。明るく社交的な佐藤さんにティーは好ましい感情しか抱いたことがない。
しかし、今机の上にある佐藤さんの指を見てると、吐き気を抑えて、相槌を打つのが苦しくてたまらなかった。
ああ、なんで佐藤さんは平気なんだろう。
こんなにもおぞましいものを平気で。
ティーはその日、家の台所で右手の指を1本切断して。
左手の指を1本切断して。
右足の指を1本切断して。
左足の指を1本切断した。
どくどくと流れる赤い液体が、水道から出る透明な液体と混ざり合い、排水口を流れていった。
ティーは翌日、いつものようにティーの机の上に手を置いて話す佐藤さんを見て安心した。
(よかった…)
何も気持ち悪くない。
佐藤さんの指は昨日と変わらない5本。
ティーの指は4本だ。
ティーは心からの笑顔で佐藤さんと休み時間の語らいを過ごした。佐藤さんを好きでいられることがティーは嬉しかった。
体育の授業になり、日陰で座ってるティーに森島さんが駆け寄って話しかけてきた。森島さんは走り終えたばかりで息を整えながら、ティーの右隣に体育座りをした。
森島さんの体操服から伸びる足を見た時。
(森島さんの足って2本あって、なんか嫌だな…)
ティーは堪らない不快感を感じてしまった。
その場で森島さんの足をへし折りたい感情が堪らなく嫌だった。ティーは森島さんの事も好ましく思っている。
綺麗で、少し大人っぽくて、運動神経が良い森島さん。
森島さんを嫌いになりたくなかった。
その日、ティーは風呂場で右足を切断した。
切断した右足から、どくどくと赤い液体が流れていた。
その次の日、ティーは松葉杖をついて小学校へ向かった。
森島さんが「おはよう」と話しかけてくる。
スカートから2本の長い足が見える。
(よかった…)
何も気持ち悪くない。
森島さんの足は変わらず2本のまま。
けれども、ティーの足は1本なのだ。
ティーは森島さんを好きでいられることに安堵した。
ティーはクラスメイトのほとんどを好ましく思っていた。
だからティーは、蒼葉さんと同じで腕が2本あるのが気持ち悪くなったら右手を切り落とした。柏都さんと同じで耳が二つあるのが気持ち悪くなったから左耳を切り落とした。塔野さんと同じで眼球が2つあるのが気持ち悪くなったから右目をえぐり出した。姫宮さんと同じで心臓が1つあるのが気持ち悪くて心臓を抉り出した。
身体から心臓が無理矢理引きちぎられた状態で、足と手と耳と目が1つづつになった少女の死体は幸せそうに笑っていた。
End.




