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第9話 魔法陣理論

 また言われてしまった。

 もうウチの次元の魔法レベルが低いことはわかってるってば。


「保存を目的としないなら、魔法陣は(くう)に描けばよかろうに。器が無ければ魔法陣は絶対の対魔法障壁になる」

「……器を使わず、このなにもない空間に魔法陣だけ描く……ってことですか?」

「そうじゃ」

「で、できるんですかそんなこと? だって、魔法陣は魔轟蟲(まごうちゅう)をすり潰したインクで描かないと効果を発揮しない。でも、インクを空に浮かばせ魔法陣を描くのは不可能……」


 わたしが言うと、エデンさんはグラスを揺らし、


「魔轟蟲ってのはマナを溜め込む虫なのだろうな。魔法陣は濃いマナを帯びたインク、魔導液(まどうえき)で描かないと効果を発揮しない。なぁ嬢ちゃん、もしも魔法でこの魔導液を生み出せたら――どうだ?」


 魔法で――魔導液(インク)を?


「魔法で生み出した物体はある程度術者が操れる。魔法で魔導液を作れれば、それを操って魔法陣は描ける。もしかして、また複合魔法を使うんですか?」


 魔導液を生み出す魔法は無い。

 でも、複合魔法ならもしかしたら――


「今回はシングルで十分だ」

「じゃな」

「シングル……単発の魔法で魔導液を作れるのですか?」


 魔導液を出す魔法なんてわたしの記憶には無い。


「お前の次元の魔法に、血液を出す魔法はあるだろう?」

「あります」

「俺の次元にもヘルプスの次元にもある。して、血液を出す魔法にはある特性があってな。魔法で生み出す血液は術者の血液と同質の物となるんだ」

「……まさか、血液で魔法陣を……?」

「そうだ。嬢ちゃんの血液に高濃度のマナを通す。その上で血液を魔法で生み出す。すると、マナを帯びた血液を出力することができる。この血液が魔導液(インク)になる」


 本当に、この人達の次元の魔法は、わたしたちの知っている魔法の遥か先をいっている。


「でも、血液にマナを通すなんて、わたしにはできません」

「かっかっか! 血液にマナを通す法なぞ、わしが教えてやろう! 小説の礼じゃ。どれだけ才能の無い者でも3時間あればマスターさせてやるぞ。なんせわしはヴァンパイアの王、つまりは血液の専門家じゃからな!」

「ヴァンパイア=血液に詳しいってわけじゃねぇと思うけど、まぁいいか」


 ヘルプスさんはわたしに『操血(そうけつ)学』を教えてくれた。操血学とは吸血鬼の学生が必修で習う『血液操作の法を教える』学問だと言う。


 血液を分解して鉄を作る法とか、血液で止血する方法とか、色々と教えられたけどいまは関係ないので割愛。


 本題、血液にマナを通す方法について。


「心臓にマナを溜めるのじゃ。心臓は血液を全身に送り出す臓器。この心臓にマナを溜めれば自然と全身の血液にマナは通る」

「マナを溜める……というのが、まず難しいんですけど……」

「魔法陣を左胸に描くのじゃ。心臓の位置にのう」


 あ、その手があったか。


「魔法陣はマナを留めてくれる。心臓の位置に描けば、わたしの体を巡るマナは自動的にそこへ溜まる」

「しかし、それではマナの消費が激しい。必要以上のマナを魔法陣は吸収してしまうからのう。魔法陣を描くのはあくまで感覚を掴むため。魔法陣を使い、マナを『留める』感覚を身に着けるのじゃ。感覚を掴めたら魔法陣は消せ」

「それができたら血液生成魔法を使って魔法陣を描く修行だな」


 血液を出す魔法『クリムゾン』は初級魔法。そう難しくはない。

 血液にマナさえ通せれば……!


「ありがとうございます! 今日は失礼します!」


「おう。明日の試験、頑張れよ」

「応援しとるぞ~」


 わたしは魔王2人とペンギン1匹に頭を下げ、BARを出た。

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