第6話 オリジン
ダンジョン・オリジン。
千葉の近く、太平洋に突如として出来た宇宙まで伸びる塔型ダンジョン。1番最初のダンジョンだ。このオリジンを中心として人工島『神里』は造られた。
学者によると全部で364層あるとされ、クリアできた者はいない。現時点の人類の最大到達点は第99層。未だ終わりは見えない。
ランクはEX。規格外、という意味だ。だけど第1層から強力な魔物が居るわけではなく、第1層のモンスターはむしろ最弱レベル。10層毎にモンスターのレベルは跳ね上がるけど、その区切り以外で急激にモンスターのレベルが増すことは無い。ビギナーは基本的にオリジンの第1層から第9層でレベル上げをする。わたしも最初の頃はお世話になった。
「久しぶり」
オリジン・関所前。
オリジンも他ダンジョンと同じく高い壁に阻まれており、入るには関所(改札)を通らなくてはならない。けれど他のダンジョンの改札と違い、オリジンは大きな建物の中に改札がある。他のダンジョンの関所が田舎の駅だとしたら、オリジンの関所は都会の駅だ。エスカレーターを上がって、数々のショップの間を通って、ようやく改札に辿り着く。
わたしは真っすぐ改札には行かず、関所内にあるショップ、スクロールショップ『韋駄天』に寄った。
「らっしゃいませ~」
おかっぱの女性店員が挨拶する。わたしは会釈し、安売りワゴンを見る。ワゴンには大量のスクロールが積み上がっている。
「ん~。どれにしようかな」
スクロール。それは魔法陣が描かれた巻物。開いて軽くマナを灯すと魔法陣が起動する仕掛けになっている。
魔法陣とは、マナや魔法を留める『受け皿』。つまり魔法陣が起動する=封じられた魔法が発動するということ。このスクロールがあれば誰でも簡単に魔法を発動できる。
「サンダーのスクロールを5枚と、チェインのスクロールを4枚……」
これで足りるか。
「いや……」
エデンさんの『魔法は組み合わせるのが基本』という言葉が脳裏に過る。
「ルーブのスクロールも買っておこう」
会計を済ませ、スクロールをベルトに括りつける。
消費アイテムも他のショップで集め、改札へ。
改札も幾つか存在し、通る改札によって辿り着く扉は異なる。たとえばシーカーならば誰でも通れる改札、あそこから辿り着ける扉は第1層に繋がっている。ブロンズランク以上が使える改札からは第10層に繋がる扉へ行ける。こんな感じで、高いランクのシーカーのみが使える改札からは高い階層へ、低いランクのシーカーしか使えない改札からは低い階層へ行ける。
わたしはもちろん、ビギナー以上なら誰でも使える改札を通る。ちなみに、オリジンは入場料1000円だ。良心的。
改札を通って、エレベーターに乗る。エレベーターは複雑に入り組んだ透明な管を通り、オリジンの前に到着する。
エレベーターを降り、すぐ正面にはダンジョンのゲート。黒曜石で作られた『枠』に、白い光が満ちている。あの光に飛び込むとダンジョンの中だ。
わたしはダンジョンへ、光へ飛び込んだ。
「ん。懐かしい湿気」
樹海だ。背後にはゲートがある。
他にもシーカーはいっぱい居て、談笑する者も居れば怖い顔で持ち物を確認する者も居る。
第2層へ繋がる扉の位置は覚えている。すぐにそっちへ足を向けるが、瞬間、前髪が静電気に引っ張られて上を向いた。
「……やっぱりね」
秘境の気配だ。ここに来るといつも感じる。
場所は……80層ぐらいかな。オリジンの秘境、興味あるけど、それだけ上層階だと手を出せるはずもなし。気にせず前に進む。
途中コボルト・ハーピー・スライムに出会ったけど、戦闘はせずに逃走。無駄な体力は使わない。
樹海を10分程歩き、ゲートを発見。黒曜石の枠に、光の『扉』。また光に飛び込むと、また樹海だ。ちょっとだけ木々の色が紫になった樹海。ここが第2層。
5層までは行ったことあるし、道も覚えているから迷うことは無い。
逃げて逃げて逃げて逃げて。ほとんど消耗なく5層火山エリアに到達。
「ふぅ。暑い」
わたしは『アイテムポーチ』を出す。
これはシーカー必携のポーチで、なんと中に入れたアイテムを自動的に極小サイズへと変化させるのだ。ス○―ルライトで縮めたような感じである。取り出すと元のサイズに戻る。
わたしはポーチの中から缶を取り出し、開けて飲む。
「ぷはぁ」
いまわたしが口にしたのは『フロストドリンク』。暫く暑さに対し耐性を得る炭酸ジュースだ。熱さではなく暑さに耐性を得るだけなので、マグマとか触ったら普通に溶けるので注意。
「あとはミノタウロスに会うだけ」
ミノタウロスを探していると、正面の地表からマグマスライムが湧いてきた。当然、スキル『逃げ足』を使って逃走。
すると、想像よりも早く――
「お」
マグマの池の前。
顔が牛の巨漢に出会った。
身長3mの、怪物。手に持った大斧はわたしよりも大きい。
「やりますか」
「グオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」
ミノタウロスは咆哮し、斧を振り下ろした。
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