第2話 秘境発見!
日本にダンジョンが出現して50年が過ぎた。
ダンジョン……それは資源の宝庫。ダンジョンの中にしか無いアイテムは大量に存在し、それらは高い価値を持つ。待ち受けるトラップやモンスターはどれも危険だけど、その危険に見合うだけのものがダンジョンの中にはある。
『精霊石』もその貴重なアイテムの1つだ。精霊石は500玉ぐらいの大きさで、丸呑みすることで人は『ステータス』を得られ、個体によっては『ユニークスキル』も得られる。代償として体の一部に変な痣ができるけど。
わたしはシーカー養成学校を卒業してすぐ、精霊石を飲みダンジョンシーカーになった。なぜわたしが探索者になったのかというと……スローライフを送るためである。
豊かな土地で、海でも眺めながら読書をして、ご飯とかはメイドさんに作ってもらって、ゆっくり過ごしたい。30歳を超えたらそういう風に生きたい。
しかしながら、そんな風に生きるためには多額の財が必要なわけで、30歳になるまでにそれだけ稼ぐにはシーカーになるしかなかった。最低限の適性はあったからね。順調に行けば、30歳でスローライフは不可能じゃない。
……現実は厳しいね。
22歳、独身、無職。これが現実。夢はまだまだ遠い。
ギルドを辞めたわたしはボロアパートに帰り、温いシャワーを浴びて就寝した。
朝が来て、わたしはちゃぶ台の上でノートパソコンを開いた。最新のダンジョン情報を調べるためだ。
わたしの住むこの人工島『神里』には合計201のダンジョンが存在する。ダンジョンは誰かに攻略されると消滅し、その跡地にまた新たなダンジョンが建つ。
Aランク以上のダンジョンは滅多に攻略されることは無いけど、C~Eランクのダンジョンは頻繁に攻略される。シーカー用のデータベースを見るに、昨日も3つのEランク迷宮と2つのDランク迷宮が攻略されたようだ。迷宮攻略後、大体20時間で新たな迷宮が建つ。すでに新しいDランク迷宮が1つ出来上がったようだ。
早速行ってみるかな。迷宮が新しくなったのなら、新たに秘境が出来ている可能性もある。
「ギルド辞めたから、全部自費か。消費アイテムも交通費も」
……距離あるけど徒歩で行くかな。
「ギルドライセンスも無くなったから、使えるショップも限られる。アイテム集めても売れる店が無い。あ、ギルド保険も無いから月1の健康診断も全額自腹……嫌になる」
お金を貯めるためにシーカーになったのに……。
「でも、新たにギルドに入るためには『実績』か『献上品』がいる」
実績があれば、例えばCランク迷宮を攻略した実績があれば引く手数多。だけどわたしのレベルじゃCランクは無理。ならば狙うのは献上品。レアアイテムを賄賂してギルドに入れてもらうしかない。秘境を見つけて、賄賂を手に入れるんだ。
やるしかない。わたしは気合を入れ直し、支度を始める。
剣、盾、軽鎧。これがわたしの装備。よし、行こう。
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神里東部・第4区画。
ヨーロッパ風の街並みの途中に、唐突にそれは存在する。
Dランクダンジョン『ヴァルラン』。
塔の形をしたダンジョン。ちなみに、ここに建つダンジョンの名前は共通して『ヴァルラン』だ。生え変わる度にダンジョンの形も色も変化し、中身も変容するけど名前は変わらない。
攻略難易度はD。ちなみにダンジョンの難易度はギルド協会がダンジョン内のマナ総量から判定するらしい。『前』のヴァルランもDランクだった。ダンジョンのランクは生え変わってもそう大きく変動しない。
ダンジョンは壁に囲まれていて、中に入るには壁の途中にある関所を通らなくてはならない。関所はあれだ、駅みたいな感じだ。田舎の駅。ドアの無い小さな建物の中に改札があって、シーカーライセンス(もしくはギルドライセンス)で読み取り機をタッチすると改札が開く。
カードの形をしたシーカーライセンスで読み取り機をタッチし、中に入る。
シーカーランクの高い者、あるいは所属しているギルドのランクが高い者は無料で通れる。それ以外の人間は登録口座から入場料が自動的に引き落とされる。わたしはビギナーランク(最低ランク)シーカーのため、1万円取られた。
改札を通ればダンジョンの前。そのまま塔の扉を開き、ダンジョンの中へ。
「洞窟型か」
中は洞窟。岩の道。道は広め。
ダンジョンには他にも城塞型や異空間型などもあるが、洞窟型は1番シンプル。洞窟をひたすら進んで、石階段を見つけ上にあがる。これを繰り返す。
「ん?」
前髪がふわっと動いた。まるで静電気に引っ張られたように。
この感覚……間違いない。
「このダンジョンには秘境がある……!」
どうやら人生捨てたものじゃないらしい。体感だけど、ダンジョンに秘境がある確率は0.1%程。これは運が良い。
わたしは感覚に身を任せ、道を進んでいく。途中、ゴブリンやスライムに会ったけど剣で切り裂いて突破。さすがのわたしも最下層レベルのモンスターには負けない。
どんどん踏破していく。このダンジョン、かなり分かれ道が多い。3通り、6通り、多い時は10通りの道があった。けれど、わたしは感覚で秘境に繋がる道がわかる。
ダンジョンに入って2時間。第2層の奥の奥……行き止まりに辿り着く。
目の前は岩の壁。でもわかる……この先にある。
わたしは壁に触れる。
「秘境感知。第1プロテクト、第2プロテクト強制解錠。プロセススルー、アドミッションリミット無効」
目の前の壁に魔法陣が7つ浮かび上がる。7つの内、4つの魔法陣はこちらの侵入を弾く防壁の魔法陣――これはわたしのユニークスキルで破壊する。残りの3つの魔法陣は『扉』を作る魔法陣だ。これらは操って重ねる。すると、魔法陣の集った場所に扉ができた。
壁に出来た扉は黒い木で出来ていて……な、なんというか、オシャレな扉だ。扉には表札が飾ってあり、表札には『joker party』と書いてある。
扉のドアノブに手を掛ける。すると鍵の感触が手に返ってきた。
「暗号解析――」
どうやら入るのに暗号が必要な秘境らしい。
暗号をユニークスキルで読み取る。
「『世界はかくも美しい』」
暗号を口にする。鍵が外れる。
扉が――開く。
「は……?」
扉の先に広がった世界を見て、わたしは目を剥いた。
棚に並ぶ酒瓶と逆さのワイングラス。L字のカウンターと、カウンターに添えられた背の高い椅子たち。
いや、ありえない。ここはダンジョンの中のはず……だけど、明らかに、そこは……バーだった。
お酒が飲める、大人の店だった。
「ハロー、ウェルカム。マドモアゼル」
グラスを持ったペンギンが、色気を帯びた声でそう言った。
ペンギン(cv速水奨)のイメージでお願いします。




