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VSギガンテス

「ハァッ!!」


 初撃はギガンテスだった。

 直上から声を吐き出す。ただそれだけ。

 それだけだが、並の冒険者なら全滅させられるほどの威力を持つ“圧”だった。


「ハァッ!!」


 だから俺も上に向かって声を返した。

 俺とギガンテスの間で空気の層が白く実体化し、破裂して凄まじい風を起こす。


「ははは、強い。強いな小さきもの」


 嬉しそうに言いながらギガンテスは手にした棍棒を振り下ろす。

 クラッドは……まだ逃走中。

 避けた場合の破砕範囲を考えると、届いてしまう可能性がある。


「ふんっ!」

「なんとっ……!?」


 俺はギガンテスの棍棒を左手で受け止める。

 ズンッ、と足が地面に沈んだ。

 衝撃が土をめくり上がらせ、近場にあった木々をへし折る。


「あんたも強いな」

「ふははっ、まるで魔王!」


 ギガンテスが棍棒を引っこ抜くように振り上げ、再び振り下ろす。

 一撃ごとに、どぉんっ、どぉんっ、と爆発が起きたような音が鳴り響く。

 身体に物凄い衝撃が来るが、ダメージを追うほどではない。


「えぇい、話にならん」


 ギガンテスは言って、あっさりと棍棒を捨てた。

 転がった棍棒が大地を削り、めり込む。

 まるでひとつの山が一瞬で形成されたような有様だった。


「ふんぬぁっ!!」


 身体を後ろに反らし、握った拳を振り上げる。

 それをそのまま、直下の俺に向かって突き下ろしてきた。

 空気の層が幾重も裂かれ、隕石のように降ってくる。


 棍棒よりも速く、何十倍も威力がある攻撃。

 俺も振りかぶる。

 そして右の拳をそのまま投てきするように、全身を使って拳を放つ。


 ギガンテスと俺の拳が接触する。


 大地がめくれ上がり、草木は根ごと弾け飛び、一瞬、空気さえなくなったように思えた。


 音は遅れてやってきた。


 ドッ────ォォォォォォォォォォンンンンン!!!


「アァアアアアアアアアアア!!!」


 ギガンテスが叫ぶ。

 接触した拳から衝撃が伝わり、腕がボコボコボコッと不規則に膨らんだあと、肩の根本から弾け跳んだ。


 俺は自らの拳を見つめる。

 自分の力が成した。そのはずだ。

 しかし、ここまで強いということを想定できなかった。


 確かに人間の頭を消し飛ばしたことはある。

 それでも、ここまでの威力ではなかった。

 しかもあれは一瞬とはいえ本気を出した。


 今は、“本気ですらなかった”のだ。


「……強くなってる?」


 レベルはカンストしているはずだ。

 それでも、強くなっている。

 その手応えがあった。


 自分の身体に何かが起こっている。

 だが、その正体を掴むのはまだ先になる。

 そんな予感がした。


「小さきものぉぉぉぉぉっ!!」


 ギガンテスの悲鳴に似た咆哮が俺の意識を呼び戻した。

 もう一本の腕を振り上げている。

 高さは100メートルを超えているかもしれない。

 そんなところから勢いと殺意を乗せた鉄槌が降ってきたら、どれほどの被害が出るかわからない。


「俺の糧になってくれて、感謝する」


 だから俺はそう呟いて飛び上がった。

 ギガンテスの膝、腹部、胸板を蹴ってさらに飛び上がり、やっと真正面からその顔を見た。


 ギガンテスにあるのは驚愕。


 身体をねじって腕を引き絞り、渾身の力を込めて射出する。


 頭が爆ぜた。


 肉片は残らなかった。

 あのときと同じだ。


 ギガンテスの頭部は血煙となって、消えた。


 ギガンテスの身体がゆっくりと倒れていく。

 俺は傾いていく肉体の胸元に乗り、共に落下していく。


 凄まじい音を立ててギガンテスは沈んだ。

 ダンジョンの大地はもうめちゃくちゃだった。


 しばらくして、サラサラとギガンテスの身体が粒子となって消えていく。

 心臓の辺りから出てきたダンジョンコアを取る。


「おーい」


 そして戻ってきたクラッドにコアを見せると同時に出現した帰還用の扉を通って、俺は水のダンジョン攻略に成功するのだった。


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