↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
92/114

遠く離れてもまだ巨大

 ギガンテス。

 それは伝説上の魔物だった。

 魔王が復活するとき、魔王を支える魔物も蘇る。


 とある古文書に記された文言だった。


 その膂力は大地を割り、海に潜む己の身の丈を超える鯨を片手で掴み振り回すほど。


 数多の猛者を屠り、単純な力だけならば魔王に匹敵するとも言われている。


 震え上がる。

 巨大で、その一撃一撃がおそらく掠っただけでも致命傷。


 こんなものを相手にする。

 考えるだけで恐ろしい。もはや神話の世界だ。


 だが、リクドは腕組をして立っていた。

 ギガンテスを前にして、恐怖も気負いもなく、ただいつものように立っている。


「オォォォォォ!」


 ギガンテスが歩みを進めると、首と四肢を拘束する鎖がビンッと張った。

 だが世界が鳴動したような咆哮をあげたギガンテスの力で、左腕、右足、右腕、左足、首の順で鎖が引き千切られる。


 クラッドは、扉の内側で巨大な何かがドチャリと落ちるのを見た。


(あれは……)


 それは四肢と首がもげた人型の何かだった。

 筋肉が発達した四肢。そして精悍な顔立ちの頭部。

 ギガンテスよりもさらに巨大。


 それは神話に登場する神の姿に似ていた。

 天の看守、ロビス。

 何人たりとも逃すことのない、最強最堅と呼ばれた神。


 その神が今、無惨な姿で転がっていた。

 同時に扉が閉まる。

 扉は瞬時に消え失せ、青空が広がっていたダンジョン内が薄暗くなっていく。


「始めよう、小さく儚き者よ」


 喋った。

 ギガンテスの声だ。

 声が圧となって上から降ってくる。


 たぶん、叫べばそれだけで数多の生物を殺せる。

 それほどまでの規格外。恐ろしい魔物。


「倒せるのか! リクド」


 クラッドが声を張り上げる。

 それに対しリクドは、ギガンテスを見上げたまま頷いた。


「問題ない。ただ、悪い。自分の身は守ってくれ」

「り、了解だ!」


 クラッドは言って、その場を即座に離れる。

 即断即行動。これは冒険者が長生きするためのコツのひとつだ。


 リクドが負けて死ねば、クラッドは勝てる気もしない。

 すたこらとその場から逃げる。


 あの巨体だ。

 どうせどこでも戦闘は見られる。


「絶対勝てよー!」


 言って、クラッドは走る。

 口元には笑みを浮かんでいた。


「いやぁ、おかしくなっちまったな。俺も。あんなのどうやっても勝てないはずなのに、はは、リクドなら勝てるだろうって思っちまうんだよな」


 走る。走る。

 リクドは小さくなっていくのに、ギガンテスはまだまだ巨大なままだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。