対人戦の時間だー!VS野盗
「へぶぁっ!?」
荷台から飛び降りると同時に地面を蹴って先頭の男に急接近した俺は、腕を振ってフックで男の頬をぶっ叩く。
男は奇妙な声を出して吹っ飛び、木に激突してそのまま気絶した。
「……は?」
すぐ近くにいた男が間抜けな声を出す。
「来ないならこっちから行くぞ」
「ごっ!?」
俺は加減しつつ、次の男の顔に真正面から掌底を入れた。
男の首がグンッと後ろに下がって、そのあとに引っ張られて身体が吹っ飛んでいく。
「うわぁあっ!?」
「ぎゃああっ!?」
吹っ飛んだ男にまともにぶち当たって、ふたりほど野盗が倒れる。
残念。直接叩きたかったのに。
「な、なにしてやがる! 斬れ! 殺せ!」
「お、おおっ!」
物騒なことを命令した頭っぽい男に呼応して、野盗が剣を振り下ろしてくる。
しかし──。
「ほっ!」
「へぁ……?」
俺が軽く出したパンチで“剣が切れた”。
当たった場所から、綺麗に切断される。
鋭利なモノを切断したり切ったりするときはコツがいる。
人を殴るときより少しだけ力を入れなくてはいけない。
レベル450辺りまでは何をするにも全力だったから、こういうのが上手くなったものだと我ながら感心する。
「もういいかい?」
「べべぇっ!?」
剣が切断され呆然としている男の頬を、手のひらを振って叩く。
男はその場でグルンっと一回転して地面に落ちた。
当然、気絶している。
「な、なんだこいつっ!?」
「く、くそっ。魔法だ! おい!」
「は、はい!」
頭に呼ばれて後ろのほうからローブ姿の男が出てくる。
そして杖を俺のほうに向けて何やら呟く。
すごい。魔法使いってヤツだ。
魔物にも魔法を使うものはいたが、人間が使うのを見たのは初めてかもしれない。
「我が敵を燃やせ! ファイア!」
「おおっ!」
詠唱と同時に杖の先から炎の塊が出てくる。
そして俺の方へ向かって飛んできた。
「すげーなっ!」
俺は言いながら、握り締めた右ストレートを火球に当てる。
ぼしゅっ。
「「へぇあ?」」
何人かの男たちの声が重なった。
「はぇ?」
背後でエリサの戸惑う声が聞こえた気がするが、まあいい。
「いやぁ、すごい。人が使っても魔法ってかっこいいんだな。もっとないのか?」
ついついテンションが上がって、そんなことを聞いてしまう。
するとローブの魔法使いは引き攣った顔をして、杖を振るった。
「ファイア! アイス! エアード!」
火球と氷柱、風の刃が襲いかかってくる。
「おりゃあ!」
俺はテンションが上がったまま、渾身の力を込めて拳を振るった。
ぼしゅ。ぱきん。ふすん。
魔法が全部掻き消える。
「もうおしまいだー!」
俺が魔法を消すと魔法使いが膝をがっくりと折って涙を流した。
そうか、もう打ち止めなのか。
なら仕方ない。全員、ぶちのめして捕縛……あれ?
「なんで? あ、俺の……?」
魔法使い以外の野盗が、全員地面に倒れていた。
どうやら渾身の力で拳を振ったため、衝撃波が生まれて野盗たちを襲ったらしい。
うーむ。魔法を消すためとはいえ、ここまでする必要はなかったか。
反省、反省。
「魔法を見せてくれてありがとう」
俺は魔法使いに近づいて拳を握る。
「……どういたしまして?……べふっ!?」
魔法使いの頬を拳で一閃。
魔法使いは涙を流しながら街道脇の高草の中へと吹っ飛んでいった。
うむ。
護衛として仕事を全うしたという感じがする。
「ぴゃっ!?」
俺が振り返ると、エリサと馬二頭が抱き合って震えていた。
「終わったよ、エリサさん」
「ひゃ、ひゃい……」
エリサは返事をしつつ、なんとか平静を取り戻したのか御者台に乗る。
そして荷台に戻った俺を見て一言。
「私、あんなに安い値段であなたを雇って良かったんでしょうか」
そんなことを言うのだった。




