護衛依頼と襲撃
「なるほど。リクドさんは本当に冒険者に成り立てなんですね」
「ああ。あと、リクドで良い。俺は客ではなく護衛だからな」
「あ、わかりました。えっと、り、リクド」
馬車の御者台の上で、エリサが微笑む。
俺は荷台に乗って、食料や寝具などを積んだ横のスペースに腰掛けていた。
「でもすごいですね」
エリサが言った。
「何がだ?」
「だって冒険者になって3日で護衛依頼を任されるなんて」
エリサの言葉に首を傾げる。
「護衛依頼を任されるのって珍しいのか?」
「少なくともそのランクでは珍しいし、正直難しいと思います。ただの討伐依頼なら、守るのは自分の身か仲間だと思うのですが、護衛だと全く戦えない私たちのような商人と荷馬車を守りながら戦うことになるので」
「……なるほど」
「あ、ただ私はそのちゃんとリクドを信頼してますよ? ギルドからお墨付きで紹介された人なので」
「ありがとう」
簡単な依頼ではないらしいぞ、レジオ。
俺は心の中で受付のレジオに文句を言いつつ、周囲を警戒する。
(まだ何もないな。魔物は近くにいないみたいだし)
レベルがカンストすると、気配察知能力も高くなる。
魔法などが使えればもっと便利なのだろうが、さすが戦闘の神に嫌われている俺。
魔法という戦闘に便利で、有利になるものはまったく使えなかった。
使える気配もない。
「だからそんな依頼を受けても大丈夫とギルドが判断したということは、リクドはすごい冒険者なんです」
「そうか。なら、期待に応えられるよう頑張ろう」
「あはは。まあでも、本来は護衛の方が頑張らなくてもいい状況が続くことが、一番いいんですけどね」
「……それもそうだな」
確かに護衛が頑張らなくてはいけない状況というと、魔物たちとの戦闘が起こるということになる。
そのリスク的状況は、商人としてはなるべく起こらないほうがいいに決まっているのだ。
しかし、不意に感知した気配に俺は荷台の上で立ち上がる。
「どうしたんですか?」
「前方、誰か出てくる。突っ切る……ことは出来なさそうか。振り切られないように長く人員を配置してる」
「え? え?」
俺が言って数秒後、街道脇の高草から人影がいくつも飛び出してきた。
総勢で15名ほど。
「ひゃっはー! 荷物全部置いてけ商人!」
叫びながら先頭の男がショートソードを構える。
「ひゃあぁっ!?」
エリサが悲鳴を上げて手綱を強く引く。
二頭の馬が驚きいなないて、馬車を急停止させた。
「へへ、おい。女じゃねぇか。別の楽しみも出来そうだな」
ふたりめの男が言う。
それから男たちが荷台に立つ俺に気づいた。
「あ? 生意気に護衛なんか雇ってやがる」
「いや、見ろ。あれひとりだぞ。ひゃはは! しかも丸腰だ!」
野盗たちは俺の姿を見て笑う。
まあ仕方ない。むしろエリサが変なのだ。
普段着のままで護衛ですと言った俺を、疑いもなく馬車に乗せたのだから。
「バカ、お前。ありゃただの運び客だろ」
「おぉ、そりゃそうか。おい、男。逃げるならお前だけでも助けてやっていいぞ。あ、荷物は置いてけよ」
「そうだぜ。命のほうが大切だろう?」
野盗たちが好き勝手に言う。
一応護衛として、俺は野盗たちを説得しようとしてみる。
「あー、一応聞いておくが、強奪を止めたりとかはしないよな?」
「はぁ? 当たり前だろクソガキ。なんだ? 自分は殺されないとでも思ってんのか!」
青筋を立ててこちらを睨んでくる野盗に、俺は笑みを返す。
「よかった。なら、思いっきりやれる」
そして俺は、荷台から飛び降りた。




