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新米最強冒険者と新米商会代表

 ステータスの説明が本当ならば、俺はきっと戦闘の大神とやらに嫌われているのだろう。


 しかしそんなものがどうでも良くなるぐらい、身体を動かすのは楽しかった。


 それも命のやり取りをする戦闘ともなると、高揚が止まらなかった。


 血湧き肉躍ると言うが、まさにそんな感じだった。


 気づけば、俺は戦闘するということに夢中になっていた。


 殴り、殴られ、蹴り、蹴られ。

 斬られ、ブレスで焼かれ、突かれ、叩きのめされ。


 どこかで殺されていても、死んでいてもおかしくはなかった。


 けれどそうはならなかった。


 だから戦闘の大神に愛されてはいなかった俺だが、前世で出来なかった運動としての戦闘が大好きとなり、結果としてレベルがカンストしてしまったのだ。


 これで戦闘の大神に愛されていたら、どんなことになっていただろうか。


 考えると楽しそうであり、同時に何か恐ろしいものを感じた。


(俺みたいなヤツは嫌われてるぐらいがちょうどいいんだろうな)


 そう考えて、眠りから浮上してくる意識を起こし、目を開ける。


 窓から朝日が入ってきて、俺は気持ち良く起床することに成功した。


☓  ☓  ☓


「護衛依頼?」

「ああ、そうだ」


 ギルドに行くとレジオに手招きされ、出されたクエストが護衛だった。


「小規模、というか駆け出し商人がひとりで隣街に買付に行く。ルートは街道で、魔物に遭遇することは少ない。出てもコボルトが精々だ。なので、依頼ランクはE。お前にちょうどいいと思ってな。討伐依頼も稼げるが、護衛依頼も経験になる。B級になるとこの手の依頼が増えるんだ」

「なるほど」


 俺は頷いて、依頼書を見る。


 依頼者は『シャーラント商会代表 エリサ・シャーラント』と書かれている。


 ふと待合用のテーブルのほうを見てみると、同い年ぐらいの女の子が緊張した面持ちでギルドを落ち着きなく眺めていた。


 たぶん、あの子がエリサだ。

 商人として駆け出し、というのも本当だろう。


「それに討伐依頼よりも報酬がいい。わずかだがな。どうだ、やってみないか?」

「面白そうだな。受けさせてくれ」

「そう来ると思ったぜ。なら受注証明だ。あそこに座ってる子がいるだろう。あれが依頼主だ。挨拶して、自分が護衛になると伝えてこい」

「わかった」


 俺は言われた通り、エリサに近づいて挨拶する。


「こんにちは、エリサ・シャーラントさん」

「ひぇっ!? は、はい! エリサ・シャーラントさんです! 商人です!」


 エリサは緊張しまくっていた。

 飛び上がったエリサは俺を見て、右手を差し出してくる。


「こ、この度は護衛依頼を受けていただき、ありがとうございます! 私はエリサ・シャーラントで……えっと、あれ? い、依頼を受けてくださった方で合ってますよね?」


 そこまで言ったところでエリサはようやく、自分が依頼を受けたかどうかもわからない冒険者に挨拶していることに気づいたようだ。


「大丈夫だ。合っている。F級冒険者のリクド・アルスベールだ。よろしく頼む」

「よ、よかった。不束者ですが、よろしくお願いします!」


 エリサは深々と頭を下げるが、挨拶はそれで合ってるのだろうか。


「あ、それで、ですね。早速なのですが、出発は20分後で大丈夫でしょうか? 隣町までへの往復の食料などはもう準備出来ているのですが」

「ああ、問題ない」


 俺が言うと、エリサはホッとした顔をしてギルドの出口に向かって歩き出す。


「では、行きましょう。買付はスピードが命ですから! 特に新米商人は……」

「わかった」


 俺はエリサに促されるまま外に待機していた馬車に向かう。

 頑張れよ、と親指を立てていたレジオには親指を立てて返しておく。


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