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最強冒険者候補の贅沢な悩み

 俺に呪いをかけた相手は戦いの大神シャズレンというらしい。

 しかし俺はそんな神を知らない。


 異世界のだから、というわけではない。


 この国、マリシア王国にはそんな名をした神の伝承がないのだ。


 少なくとも俺の住んでいた村にはなかった。


 もちろん王国図書館などに行けばあるのかもしれない。


 というか図書館があるかどうかも実は定かではないのだが。


「レジオ、鑑定を頼む」

「おぉ……もう終わったのか」


 俺はギルドの受付に回収した魔石を置いた。

 全部で17個。


「わかった。ちょっと待ってろ」


 そう言ってレジオは職員たちに魔石を渡す。


 レジオ自身も鑑定に加わって、魔石を精査していた。


 その間、俺は首を巡らせてギルドを見渡す。


 ギルドは簡素だ。

 受付があって、クエストが貼ってある掲示板があって、待合用のイスやテーブルがある。


 冒険者はそこそこいて、初心者からベテランまで様々といったところ。

 このギルドの規模は小から中規模といったところらしく、周辺の事情も相まって、比較的平和で難易度の低い依頼が多い。


 だから冒険者は多いが、高いランクの冒険者となると途端に数が減る。


 ベテランであってもC級、最高はB級までしかいない。


 A級やその上は、もっと危険度が高くて報酬も高い都市部や辺境のギルドに多いと聞く。


(どれぐらい強いんだろうか。SSS級は……)


 レベル999であっても、俺はステゴロだ。

 武器なし防具なしがどれだけ通用するのか、はたまた全く通用しないのか。


 レベル上げという概念を知らずとも、SSS級にまで上り詰めるような人間が努力せず、身体を、技を鍛えることをしないということはないだろう。


 見えずとも、レベルはカンスト近くまで上がっているはずだ。


 どんな猛者がいるだろうか。


 一度手合わせしてみたい。


 そう考えるだけでワクワクする。


 レベルがカンストしたおかげか、考え方がずいぶん戦闘民族寄りになってしまったものだと自分で自分に苦笑する。


(それにSSS級になれば、俺に呪いをかけたシャズレンについても何かわかるかもしれないしな。SSS級は古代遺跡の調査なんかもあるみたいだし)


 そんなことを考えていると、レジオが戻ってきた。


「終わったぞ、リクド。今回も完璧だ。素晴らしい成果だな」

「ああ、ありがとう」


 俺は礼を言って、報酬の銀貨5枚を収納袋に入れる。


「……冒険者になって3日。だがリクド、お前の実力はすでにもっと上のランクにありそうだな」


 俺が顔を上げると同時、レジオが言った。


「上のランク……?」

「そうだ。EやD、は本来なら飛び級しても良さそうだが……俺の見立てだとお前さんはBまで行けそうだ。近い将来な」

「B……」


 目標はSSS級なので、Bまでしかいけないとなると少し困惑する。

 だがレジオはそんな俺の戸惑いを逆の方向へ勘違いしていた。


「心配するな。お前ならB級まで上がれる。自信を持っていけ!」

「……ああ」


 むしろそこまでしか行けないと言われているようで逆にショックだが、まあいい。

 レジオに悪気があるわけではないし、俺だって目標を伝えたりしていない。


「頑張るよ」

「よし、その意気だ!」


 レジオは言って、一度周りを確認してから顔を近づけてくる。


「だからお前が早くランクアップ出来るようにな、ランクポイントが稼げる依頼を紹介してやる。お前の実力なら、軽くこなせるはずだ」

「ありがとう、助かる」

「おう。じゃ、また明日な」


 俺はレジオに礼を言ってから、宿に戻る。

 部屋に入り、ベッドに倒れ込む。


 心地よい疲労感……は、ない。


 なぜなら、全然疲れていないからだ。


 無我夢中でレベル上げをしていた村時代のほうがもっと疲労困憊だった。


 しかしそれもレベルが500を超えたあたりから、疲労をあまり感じなくなった。

 山をいくつか越えて狩りをして、また戻ってくるのに10時間前後しかかからなくなった辺りからおかしいと気づくようになり、カンストしたら疲労をほぼ感じなくなってしまった。


 精神的な疲労だけだろう。

 今、俺が感じるとするならば。


「早くランクを上げて、強いヤツと戦ってみたいなぁ」


 俺は前世から考えたらものすごく贅沢なことを言いながら、目を閉じてぐっすりと眠るのだった。


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