その男、不遜。
「なぜ貴様がここにいる……極拳」
レイリアが警戒心を隠さずに言うと、問われた男──SSS級冒険者、極拳のギールは笑みを浮かべた。
「なぜもなにも、魔王が出現し、勇者様のためにすべての人族は一致団結してサポートする義務があるだろう? だから俺も手伝おうと思ってダンジョンコアを取りに来た。少し遅かったみたいだがな」
レイリアはギールの視線が己の手にあるダンジョンコアに注がれていることを感じた。
嫌な視線だ。
見ているくせに、これを主な目的としていない。
そんな目だった。
「だとしたら徒労だったな。見ての通りここは我々が制圧した。貴様は他のダンジョンに行くといい。南がおすすめだ。まだ誰も攻略していないはずだからな」
「ああ、全部のダンジョンに寄るつもりだからそこはどうでもいい。ここに来たのも、一番近かったからだしな」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ」
ギールが応えると、背後に10人ほどの人間が現れる。
それぞれが強い気配をまとい、レイリアたち最精鋭を見据えていた。
「俺は強いヤツと戦いたい。素手なら最高だ。だがまあ、武器を持っていても構わない。どうせ俺相手じゃあクソの役にも立たないからな」
「まるで、今ここで私たちと戦うと言っているように聞こえるが?」
「そう言ってる」
「冗談にしてはつまらなすぎるぞ、冒険者風情が」
レイリアが怒気を孕ませて言うと、兵士たちも極拳会の人間もわずかに怯んだ。
だがギールだけは、それを嬉しそうに嗤って受け止める。
「俺が全部倒してやるよ。お前らも、魔王も、全部だ」
「バカが。少しばかり力があるからと驕りおって。それに魔王は勇者様にしか倒せん」
「ただの言い伝えだろう? なんなら魔王を倒したあと、勇者も俺が倒してやるよ。どれほどの強者か知らんがな」
「……イカれた戦闘狂め。総員、構えろ」
「良いのですか?」
レイリアの指示に、副官のエディンが耳打ちする。
対してレイリアは頷き、ギールを見据え続けた。
「あれは金では動かん。実力知らずのバカは殺すしかない」
「行くぜ、お前ら」
レイリアが呟くのと同時、ギールたちが行動を開始した。




