↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
84/110

火のダンジョンマスター

「ァ……」


 それはかすかな声だった。

 小さく開いた唇からこぼれたわずかな音。


 一番早く反応したのは、レイリアだった。


「総員、耳を塞いで目を閉じ、口を開けろぉっ!」


 直後、巨大な赤子が口をガパリと開いて“泣いた”。


「おぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!」


「あっ……」

「ぺ」

「か」


 命令に反応できたのは最精鋭の100名だけだった。

 それでもふっ飛ばされた。

 レイリアたち馬に乗っていた上官たちは転げ落ちている。


 残りの900名の兵士たちは両目が潰れ、両耳の鼓膜が破裂し、顔の穴すべてから血を噴き出して絶命した。

 馬も当然、全滅だ。


 一瞬だった。

 わずか、ただ一撃の咆哮。


 聖教国の誇る精鋭が、殺害された。


 だというのに、レイリアは嗤っていた。

 口元を歪め、槍を構える。


「これだ。ふふ、油断したなぁ。いいのがいるじゃないか」


 槍の先端が魔力で薄く光る。

 死槍を操る強者の瞳が、目の前の敵を捉えた。


「総員、全力で征く。合わせろ」


 仲間の死を悼む暇などない。

 最精鋭たちは長の言葉とともに、戦闘機械となって武器を構える。


「征く」


 たった一言。

 レイリアがその場から消える。


 いや、違う。

 駆けたのだ。

 常人の目には見えぬ速度で、ダンジョンマスターに向かって。


「ひゅううううううう!!」


 しかし赤子はレイリアを捉えていた。

 飛び上がって自分に向かってくるレイリアに向かって、思い切り吸った息を吹きかけようとしていた。


 声であれほどの威力。

 ならば圧縮され噴き出された息はどれほどのものか。


「ぎゃああああああっ?!!!」


 しかし砲弾よりも強力な息は放出されなかった。


 精鋭たちが赤子の四肢を切り裂き、傷を作っていたのだ。


「硬いぞ! 斬り捨てるつもりだったのに」

「皮膚も骨も尋常じゃない! だが“通る”!」


 兵士たちが報告しながら飛び退く。


「はあぁっ!」

「いぃぃぃぃぃっ!」


 痛みに気を取られた隙に、レイリアが槍を突き出す。

 しかし、すんでのところで避けられた。


「ちっ!」


 かすり傷。

 致命傷ではない。


「ああっぁぁっ!」


 痛みに赤子が暴れる。


「ぎゃぷっ」

「ぎっ」


 ただの地団駄。

 手足を暴れさせているだけだ。


 しかし15メートルを超える赤子の地団駄だ。

 それも速い。


 逃げ損なった兵士が何名か地面や柱に叩きつけられて絶命する。

 人の身体が、まるで虫が押し潰されたみたいに床に張り付く様に兵士たちはゾッとする。


「怯むな! 同じ場所を攻撃し続けろ。あとは私がやる」


 一瞬芽生えた恐怖を、レイリアが断ち切る。

 さらにレイリアは赤子の真正面で立ち止まった。


 これは信頼だ。

 最強の一撃を叩き込む。

 お前たちでお膳立てをしろ。


 そういう信頼だった。


「行くぞ!」

「おおぉっ!」


 最精鋭たちは奮い立つ。

 長に信頼され、場を任されることに喜びを覚える集団。


 最精鋭たちが、死を恐れない狂戦士へと切り替わっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。