聖教国精鋭たちの実力
それは攻略と呼ぶよりも、虐殺と呼ぶほうが正しかった。
聖教国の精鋭たちはひとつの水流となってダンジョンの中をぬるりと進んでいく。
人型、獣型、不定形型の魔物たちが悲鳴をあげる間もなく殺されていった。
剣で、弓で、魔法で、斧で、槍で、盾で、ナイフで肉塊に変えられていく。
「第一、クリア」
「第二、クリア」
隊の殿が告げると、その背後を通って広く薄暗いダンジョンを濁流となった兵士たちが流れていった。
ダンジョンの内部は神殿のようだった。
頂点が見えないほど巨大な柱がいくつも立てられ、整備された床が不気味だ。
しかしダンジョンにまったくない特徴かといえばそんなこともない。
特に精鋭たちにとっては、ぬかるみが多く視界の悪い森林タイプでなくてホッとしている者もいるぐらいだった。
「広いな」
レイリアが言った。
「はい。規模が桁違いです。慣れた景色とはいえ、ここまで広いのはさすが魔王城への道へ続くコアがあるダンジョンというべきでしょうか」
エディンが答え、馬で駆けていく。
魔物たちが殺され、兵士たちがひとつの生き物みたいにダンジョンを制圧していく。
自分の出番はダンジョンマスターが出てからになるだろうな。
と、レイリアは確信にも近い予感を持っていた。
この程度であるならば、道中の魔物たちは精鋭の兵士たちで片がつく。
警戒すべきはダンジョンマスターだけだろう。
そのダンジョンマスターですら、場合によっては100名の最精鋭たちで事足りるかもしれない。
そうなったら、少しだけ悲しいなとレイリアは思った。
自らの力を示したい。試したい。
最強の力を手に入れたからには、そう考えるのは当然であるとレイリアは考える。
SSS級の冒険者たちの気持ちもわかる。
たかだかデミドラゴンを倒せる程度の能力で一喜一憂しているのだ。
そんなもの、この1000名ならば一番末席である兵士ですら余裕で斬り伏せるだろう。
「魔王は勇者どのに譲るとしても、その側近、四天王などがいれば……くく、さすがに私の相手が務まるだろうな」
失望させてくれるなよ。
レイリアが口の中で小さく呟くと同時だった。
「第六、クリア。ダンジョンマスターの部屋です、レイリア様」
不意に、第六隊の殿が言った。
全軍が指示もないのに、ピタリと止まった。
周囲の警戒。
そして、安全を確保してから改めて目の前の巨大な扉を見つめる。
この禍々しい気配。
間違いなく、ダンジョンマスターはこの中にいる。
「全隊、聞け。我々は勝利する。神に仕える我々に敗北はなく、勝利のみである。進め!」
レイリアの号令のもと、恐るべき戦闘能力を持つ1000名の兵士がダンジョンマスターの部屋へとなだれ込む。
「…………より、広い、か」
入った先は先ほどまでのダンジョンよりもさらに広かった。
奥のほうは暗く、先までを見通せない。
何かが、もぞりと動いた。
「ぐっ……」
その何かが近づいてきて、姿が見えると、兵士の誰かが呻いた。
“それ”は、とてもおぞましい姿をしていた。
「こいつがダンジョンマスターか」
赤子。
巨大な赤子だった。
両目を縫い合わされた、15メートルを超える、巨大な赤子。
それがここ、火のダンジョンの主であった。




