ダンジョンコアと仲間
「ダンジョンコア?」
「そうだ。聞いたことはあるか?」
俺は頷く。
つい最近、エンペラースケルトンを倒して破壊したばかりだ。
「ああ。この間も破壊した」
「ん? ああ、違う違う。それは普通のダンジョンコアの話だ。俺が言っているのは、魔王城への鍵となる四大元素のダンジョンコアのことだ」
「四大元素のダンジョンコア? それは、聞いたことがないな」
「だろうな。あまり知られてる話でもないんだよ。なにせ魔王が復活したときに同時に出現する最凶の4大ダンジョン、そこを攻略しないと手に入れられないコアだからな」
「なるほど……それはどこにあるんだ?」
「この場所を中心として、東西南北にそれぞれ500キロずつ先だ」
「……なに?」
「東西南北に500キロ。古文書と口伝の情報通りならもう出現しているはずだ」
「なんてまだるっこしいんだ。魔王も先に教えてくれればいいのに」
「それぐらいは当たり前に、それも楽にこなすと思われてるんだろう。まさかできないなんて思われてない」
クラッドの言葉に、魔王の顔が浮かぶ。
まさかこれぐらいのクエストもこなせないのか。
なんだ、期待はずれか。などと言われてる己を想像する。
「……やってやる。やってやるさ! あいつとステゴロができるなら!」
「ははは! よく言った! それでこそ魔王を倒せるかもしれない勇者以外の男だ」
俺が自分の勝手な妄想に憤慨すると、なぜかクラッドは手を叩いて喜んだ。
調子の狂う相手だ。
「というかそもそもなんでそんな面倒くさい作りに。ソロでやる内容じゃないぞ」
「そのとおり。そもそもソロでやるクエストじゃあないんだよ」
「え?」
「魔王が復活し、勇者が生まれたら各地の強者たちが徒党を組んで東西南北のダンジョンを攻略する。そしてダンジョンコアを集めてこの地に戻り、勇者とともに魔王城へ乗り込む。それがスタンダードだ。そうすりゃソロで半年の行程がわずか1ヶ月ということも」
「そうだったのか……」
「というか魔王がソロで挑む相手じゃないんだよ。たとえ勇者だとしても聖剣でトドメを刺すまでは大規模なパーティーで戦う。ソロなんて正気の沙汰じゃない。だが、タイマンのステゴロで勝負するって決めたんだろ? じゃあこれぐらいはやらなきゃな」
「それはそうだが……いや、そうだな。それぐらい、なんでもない」
そう、なんでもない。
自分の強さに自覚的になり、段々と戦うことが虚無になっていくことに比べれば。
「とまあそんなわけだ。ガイド役がいれば半年が3ヶ月になるかもしれない。お前さんの実力ならもっと早くなる可能性もある。スムーズな進行のために俺も同行させろよ、リクド。な?」
「……ひとつだけいいか?」
「なんだ?」
「どうして、同行したいんだ。俺が強くて動機が純粋。本当にそれだけか?」
聞くと、クラッドは諦めたように笑みを浮かべた。
「魔王と魔王城、それから魔王の強さを間近で見たいんだ。あとから伝説を知るのではなく、その生の目撃者になりたいんだ。そして生きてその情報を持ち帰りたい。自伝なんて書けると最高だな。ふっふっふ、どうだ、呆れるほどバカで純粋だろ」
「俺が負けたら死ぬぞ?」
「そりゃそんときはそんときだ。自分の見る目のなさを嘆いて魔王城を棺桶にするさ」
「……くっ、ふふ」
俺は思わず笑ってしまった。
自分と同じレベルのバカがいる。
それがなんだか妙に、心地よかった。
手を差し出し、改めて握手を求める。
クラッドは、すぐに手を握り返してきた。
「改めてよろしくな、リクド」
「ああ、よろしく頼む。クラッド」
そうして俺とクラッドは、ともに魔王城へ乗り込むためにダンジョンを攻略することに決めたのだった。




