クラッドの話と新たな条件
「おー、いてぇ……」
簡単な野営地を作っておいて、焚き火の近くに寝かせておいたクラッドが目を覚ました。
自分の荷物からタオルを取り出し水で濡らし、顔を拭く。
「俺はどれぐらい寝てた」
「3時間ってところだな」
「3時間……かーっ、そんなにかよ」
クラッドは悔しそうに言って、せっせと自分の野営道具を取り出して、シェラカップに粉を溶いてスープを作ったり、硬いパンを小分けに切ったりする。
なかなかにタフだ。
「どれぐらい手加減した? ルーキ……いや、リクド」
「俺の名前を知ってるのか?」
「有名さ。S級以上の鼻の利くヤツであんたのことを知らないヤツはいない。で、どれぐらいだ」
「……2割だ」
「ってことは8割の力までしか引き出せてなかったのか。くっそー」
「ああ、すまん。違う」
「……ん?」
「2割しか、使ってない」
それも、たぶん。
もしかしたら2割も使ってないかもしれない。
そう言うと、クラッドは目を丸くして、顎が外れるんじゃないかと思うぐらい口を開けた。
「2わ……はぁ? マジかよ? あれで? おい、噂以上じゃないか。誰だよ雷剣よりちょっと強いぐらいだとかフカシこいたのは……あ、雷剣か」
「そんなに噂になっているのか、俺が?」
「ああ、最近はお前さんの話題で持ち切りだよ。エスジックの爺さんが広めたのもデカいだろうな」
「SS級のエスジックさんか」
「そうそう。まあいい、それでリクド。魔王に挑むってのは本気なんだよな?」
「ああ。ヤツが待っていると言った。だから、行く」
俺が答えると、なぜかクラッドが嬉しそうに笑みを浮かべた。
「いいねぇ。そういう純粋な動機ってのは大好きだよ俺は。どうにも人は動機を複雑にしたがるからな。こないだもとある古代王国を調べてたときだったんだがな、戦争の理由が詰まるところ自分が懇意にしている女たちに良いところを見せたいってわけだったんだよ。だけどまあ言い訳に言い訳を重ねて、国のため民のため、ひいては国家繁栄のため、などなど。ただ女とヤリたいから逞しくて強いところ見せて暴れまわるぞでいいのにさ。まあ、結局はそれが原因で弱体化して敗走しまくって滅ぶわけだけども」
「よく喋るな」
「おい、それって悪口だぞ。以降は気をつけろよ」
「なんで俺が怒られてるんだ」
「気にするな。いやいやすまない。脱線したな。それで魔王を倒しに行くリクドくんは魔王城を見つけることができないんだよな」
なんかムカつく言い方だったが、素直に頷いた。
「OK。なら行き方を教えてやる。約束だからな。その代わり、お前さんの旅路に俺も同行させてくれ」
「……なぜ?」
「お前さんが気に入ったからだよ、リクド。強くて動機は純粋。それにまだ出現してないらしい勇者よりも、リクドのほうが魔王を討伐できそうだ」
「胡散臭いな」
「よく言われる。だが、悪い条件じゃないと思うぜ。なんせ俺は魔王城への道を知ってるんだから。それにリクドにゃ負けたがそれなりに戦える。考古学的な調査で色んな街についても詳しい。自律するガイド。連れてって損なしだ」
「色んな街? 魔王城に行くのにそこに詳しくても」
言うと、クラッドは一瞬だけ考え、それから合点が言ったように笑みを作った。
「ああ、そうか。魔王城へ行く条件自体がまだだったな。いいか、リクド。魔王城へ行くためには、ダンジョンコアを集める必要がある」




