VSクラッド
「はぁあっ!」
「ふっ!」
クラッドは速かった。
そして拳や蹴りが最初に感じた印象よりもはるかに重い。
何度か打ち合い、しかし有効打は与えない。
拳、蹴り、蹴り、拳。
一撃、一撃に長年の鍛錬が滲んだ良い攻撃だった。
「はっ! はっ!!」
素早い殴打と蹴りの二連撃。
俺はクラッドの拳を手首で絡めて払い、足を上げて蹴りを防ぐ。
だがその一連の動きはフェイントだった。
クラッドは足を戻す動作とともに、その場でぐるりと一回転する。
勢いをつけた高速の裏拳が顔面を狙ってきた。
が──。
「くそっ! これも防ぐか!」
俺は曲げた腕を上げて顔の横をガードしており、クラッドの奇襲を防いだ。
「なかなか重くてすごいぞ、あんたの拳」
「褒められてる気がしねぇ、なっ!」
クラッドが俺に完全に背中を向けたかと思うと、その場で飛び上がって後ろ両足蹴りを放つ。
それにはさすがに意表を突かれた。
ズドッ──!
「うぉっ!?」
腹を蹴られた俺は吹っ飛ばされつつ、接地する前に身体を丸めてそのまま後方に回転。
着地と同時にこちらに飛び込んでくるクラッドを迎え撃つ。
「せやぁあっ!」
「ふっ!」
構え。
拳を振りかぶるクラッド。
拳を固める。
かなりの速さで拳が飛んでくる。
その拳に合わせて己の拳を打ち出す。
ドンッ──!
空気が揺れた。
木々と鳥がざわめき、葉と羽が舞う。
「くっ、お」
腕を弾かれたクラッドの重心が後ろに傾く。
「──ッ!」
しかしクラッドは諦めていなかった。
身体が後ろに倒れ込むのを利用して死角である下からの蹴りを放つ。
だが──。
「これもダメかよっ!?」
俺は跳ね上がってきた足の甲を平手で叩き落とし、倒れたクラッドが跳ね起きる前に、その顔の前に拳を突きつけた。
「まだやるか? やるなら、とりあえずこのまま一発殴ってからになるが」
「……降参だ」
クラッドは跳ね起きようとしていた身体から力を抜いて大の字に寝転んだ。
「なんてっ……!」
刹那、俺が油断したと思ったのかクラッドは両手を支えにして俺の頭側にある片足だけを跳ね上げ後頭部を蹴りつけ……ようとしたところで俺の拳によって地面に沈められた。
「けぺっ……」
「その潔くない感じ、嫌いじゃないぞ」
俺は言いつつ、気絶したクラッドの頭を、地面から引っこ抜いてやるのだった。




