謎の男
「……あんたは?」
聞くと男は、ふっ、と笑みを浮かべて近づいてくる。
「俺はあんたと同じS級、ただしあんたよりもベテランのS級冒険者、クラッドだ」
クラッドと名乗った男は手を差し出してきた。
握手をする。
正直、そこまで強そうとは思えない。
俺がそう考えたことを読み取ったのか、クラッドは手を離して言い訳するように肩をすくめた。
「ああ、強そうじゃないだろ。ギリギリS級の雑魚って思ってるな?」
「いや、そこまでは」
「いいんだ。自分でもわかってる。俺は強くなるために冒険者をやっているんじゃない」
「なら、なんのために?」
聞くと、クラッドは腰に下げたアイテムバッグから一冊の書物を取り出した。
本の端、中央部分に鍵の付いた書物だ。
「こいつは古文書だ。この世界のとある地方の古い話、歴史が載っている文献さ。俺はこういうものにロマンを感じる。そのために冒険者になった。S級になったのは入れる場所が格段に増えるからだな」
「……そうか。それで、そんな人間が何の用なんだ」
「まあ、焦るなよルーキー。さっきも聞いただろ。困ってそうだなって」
「それがどうかしたのか」
「俺が魔王城への行き方を知ってるって言ったら、どうする?」
「教えてくれ」
即答した。
情報を持っているなら、提供してもらうに決まっている。
「迷いがないな。好感が持てる。なら、情報をタダで提供される気はないよな?」
「……条件は?」
「そうこなくちゃな。簡単な話だ」
「……!?」
言うと、クラッドの手にあった書物が消失していく。
正確には、細かい紙片となってクラッドの身体に吸い込まれていった。
グッと気が膨らんだ。
先ほどの弱そうな気配はない。
「分類としては考古学者みたいなもんだが、S級までやってるとそれなりの武も身につける。あんたが魔王を倒せるほどの器かどうか、手合わせしてもらいたい。いいか?」
「そういうシンプルな話こそ俺の求めていたものだ」
腰を落として構えたクラッドを見つつ、俺は自然体で構える。
「行くぜ、最強のルーキー!」
そして言葉とともに、クラッドが俺に向かって飛びかかってきた。
お待たせしました。体調不良から復活しました。
またしばらくお願いいたします!




