考えなしのS級ルーキー
考えなしとは、俺のことである。
街を出て一週間。
魔王の巨大な気配を追って進んでいたが、途中でその方向が変わった。
例えるなら、北に向かって進むだけでいいはずなのに、目的地がいつの間にか東や南に捻じ曲げられたような感覚。
通り過ぎた?
いや、そんな間抜けなことが起きるほど薄い気配ではない。
道中手に入れた地図と照らし合わせても、それらしき山々は北にある。
だが、そこに行っても何もないと告げられているような感覚。
かといって東に向かうと今度は西のほうへ気配が変わる。
南に行けば北、西に行けば東、向かう場所と必ず逆のほうへ気配が移動する。
では今立つこの場所こそに魔王がいる居城が隠されているのか。
などと考えもしたが、その場で立ち止まると今度は東西南北それぞれに気配を感じるようになった。
どれほど集中しても気配の所在は変わらない。
魔王のいる場所に行くにはどうすればいいんだ。
俺はそんなことも知らずに、ただ歩いてきてしまった。
「せめて立ち寄った街で情報を仕入れるぐらいはできただろうに」
自分の間抜けさに嘆息する。
アンナたちは俺が勝手に行動すると知っているから教えてくれないだろうが、俺のことを知らない場所ではもっと気軽に教えてくれた可能性もある。
行くつもりはない。
ただ興味があって聞いただけ、とでも言えば。
「はぁ……戻るか」
俺はもう一度ため息を吐き、踵を返そうとした。
そのときだった。
「困ってそうだな、S級ルーキー」
ひとりの男が前方に現れ、挑戦的な瞳を俺に向けていた。




