ダークドラゴンの巣
ダークドラゴン。
名の通り、闇を冠する龍族である。
様々な属性を持つ竜族の中でも、好戦的であり、残虐であった。
黒雲渦巻く山を根城とし、1匹で街ひとつを壊滅に追い込める個体が数百匹も棲んでいる。
人族が滅んでいないのは、ただ単純にダークドラゴンの気まぐれである。
という学者もいる。
その中でも一番の巨体を誇り、恐ろしいほど巨大な洞窟の奥で寝そべるダークドラゴンがいた。
ダークドラゴン族の長である、ニスフィラムという個体だ。
「長、とんでもない魔力を持ったヤツが近づいてきます」
若いダークドラゴンが言うと、ニスフィラムは閉じていた眼を開け、ダークドラゴンだらけの山を堂々と登ってくる青年を見た。
「……魔王か。お前たちは何もしなくていい。私が話をしよう」
ニスフィラムは身体を起こした。全長20メートルを超える巨大な身体。
黒く艶のある翼は、飛べば山など一息に越える。
強力な腕と鉤爪は齢500年の巨木さえもあっけなく切り裂き、城壁を溶かすダークブレスも扱えた。
生物の頂点。
単体で自分たちに勝てる生物などいない。
ニスフィラムはそう考えている。
それがたとえ、前時代では恐怖の象徴であった魔王であったとしても。
生まれたてのガキに従うつもりなどない。
むしろ、魔王を殺し、自分たちが次代の魔王に治まってやるのもいい。
ニスフィラムは、これから間違いなくそうなるであろう展開を導き出し、無防備にやってくる魔王を見据えた。
「いいところに棲んでいるな、ダークドラゴン」
「私はニスフィラム。頭が高いのではないか、魔王。頭を垂れよ。さすれば話ぐらいは聞いてやろう」
尊大な態度。
だが、頂点であるダークドラゴンであれば許される態度であった。
ニスフィラムは、無自覚にそう思っていた。
「まだるっこしいことは嫌いだ。勝負をしようダークドラゴン、ニスフィラム」
「勝負?」
「ああ、純粋な戦いだ。己のすべてをぶつける。ただそれだけの原始的な勝負」
「やる意味は?」
「我が貴様に勝ったら、全員我に従え。負けたら未来永劫、貴様らに手を出さないことを誓う」
「はっ……」
ニスフィラムは一瞬何を言われたのかわからなかった。
それほどまでに魔王は尊大。傲岸不遜。
身の程知らず。
「なんという尊大さ。だがいいだろう。慢心増長した愚か者を正してやるのも頂点の役目。その勝負、乗ろう。だがひとつ付け加えさせろ。私が勝てば魔王、お前は私たちの奴隷だ」
「いいだろう。それじゃあ、始めようか」




