外法の男
合成獣という外法がある。
様々な魔物を人為的に切り貼りし、新たな魔物を造り上げる倫理観を飛び越えた方法だ。
強いものと強いものの、強い部分を組み合わせれば最強になる。
そんな子どもじみた考えも、確かに有効ではあった。
ある一定の強さまでは。
人食い獅子と巨鷲の翼、そして蛇の尾。
それは一部ではマンティコアと呼ばれる伝説の化け物であったが、それを人為的に造り出した天才がいた。
名をユーゲン・エティバ。
北方の出身で、国の最高学府の出身である。
だが彼の興味は世界を豊かにではなく、破壊するほうに注がれた。
いつだったか、幼い彼の村が魔物に襲われることがあった。
尊敬する父がなすすべなく骸となった。
愛する母の指だけが転がっていた。
淡い恋心を抱いていた隣家の女性が喰われていくのを眺めていた。
女性は、頭と左の乳房を揺らしていた。
生気のない瞳と、ユーゲンはずっと目が合っていた。
女性は揺れていた。
右側の肩口から喰われていたのだ。
肉と骨を砕く音を今でも覚えている。
人々が喰われ、悲鳴をあげ、逃げることもできずに蹂躙されていくさまを覚えている。
ユーゲンは、瓦礫の中でそれを見ていた。
恍惚とした表情で。
人が喰われていく姿にではない。
魔物の圧倒的な強さ。何者も屠るあの強さに、陶酔してしまったのだ。
だが、その魔物もSSS級の冒険者にあっけなく殺されてしまった。
ユーゲンは怒った。憎しみを抱いた。
あれほどの強者を、魔物という恐怖の象徴を、人が愚かにも討伐してしまった。
いけない。
それは自然の摂理に反する。
我々、人族は弱く儚い。
だからこそ、“そう”生きなければならない。
頂点面をしてはいけないのだ。
こうして、ユーゲンを頂点とした最強の魔物を造る組織が発足した。
「造り上げるぞ、我らで最強にして頂点たる魔物を」
ユーゲンが恍惚とした表情で言い、賛同した配下たちが頷く。
「復活した魔王を素体にし、勇者の剣ですら滅ぼせない完璧な頂点を」
ユーゲンがまだ見ぬ魔王を受け入れるように天を仰ぎ、両手を広げた。
「我らの神を造り、我らは敬虔な下僕として愚昧な民衆たちを統治し、世界に真の平和をもたらすのだ」




