魔王を倒すための決意
「各地に伝令を飛ばせ! 急げ! 魔王だ! 魔王が現れた!」
魔王襲来からわずかな時間。
恐慌状態から立ち直ったギルド職員たちが慌ただしく動いていた。
アンナの怒声がいくつも飛ぶ。
冒険者への依頼はしばらく中止にして、各地のギルドとの連絡に注力する。
その鬼気迫る様子は、俺が声をかける暇すら与えなかった。
それが、2日前のことだ──。
☓ ☓ ☓
「魔王復活は確実。そして各地に新興ダンジョンが発生。及び、既存のダンジョンが凶悪化した」
ギルドにやってきた俺に、アンナはそう告げた。
「各地のSSS級とSS級までが緊急招集。魔王対策に軍も動くことが決まった」
「そうか。S級は?」
聞くと、アンナは首を横に振る。
「だめだ。S級では殺される。あれほどの化け物、SSS級が集まらないと……いや、集まっても倒せるかどうか。そもそもだ。SSS級には各地のダンジョンも潰してもらわないといけない。遅れを取れば人族は滅ぶ。間違いなくな」
「なら、俺が倒しに行く。魔王は俺と戦いたがってたしな」
「だめだ! ダンジョンはともかく魔王討伐の許可はSSS級にしか下りない」
「なら、勝手にやるだけだ」
「アホか! いくらお前でもあんな化け物に勝てるわけがない。現に負けただろうお前は! 魔王の気まぐれで生き残ったことを、実力と過信するな!」
「いや、あれは鼻血を出したことに感動しただけで……」
「とにかく! お前の強さは認める! だがSSS級や軍の最高戦力に任せろ。もはや一介の冒険者の手に負える話じゃない」
「……うーん」
ギルドの中では冷静なほう、ではあると思うが、アンナも実際に魔王の圧にあてられて必要以上に相手を高く見積もっている感じがする。
魔王討伐に許可が必要とは言うが、魔王の居城もまだ見つかっていないという。
ならば、先に見つけてこっそり戦えば、問題にならないのでは?
冒険者というよりも、ひとりの人間、リクド・アルスベールとして魔王と戦いたい。
それならば問題ないはずだ。
ないよな? よし、ない!
俺はそんな独自の理論を打ち立てて、まだまだ慌ただしいギルドをこっそりと出る。
奴は俺を待っていると言った。
ならば、その期待には応えないとなるまい。
そうして俺はこの日、しばらく世話になった街を出ることを決意したのだった。




