襲来
「待て、待て待て……キングだけではなく、エンペラースケルトン……だと?」
エリーを背負ったままギルドに帰り、事情を説明すると、アンナがいつものように額に手を当てて天を仰いだ。
「そいつは伝説級、いや伝説だぞ。だが、この魔晶石と……それにエリー、お前が言うなら本当なんだろうな」
「本当です。そしておそらくですが、ダンジョンのコア自体がヤツだった」
「……これは完全に魔王復活が関わってるな。そうでなければ説明がつかないことだらけだ」
アンナはブツブツと呟いたあと、俺を見た。というか睨んだ。
「それで、エンペラーを倒したんだよな。リクド」
「ああ。なんか、まずかったか?」
「いや……」
アンナが俺の両肩に手を置いて、頭を下げる。
「よくやってくれた。お前がいなかったら、私たちギルド、いや人類は貴重なS級の、巨剣のエリーという大切な仲間を失うところだった」
「アンナさん……」
「そうか。なら、よかった」
「ああ、すべてお前のおかげだ。本当にありがとう」
アンナは深々と頭を下げ、礼を言ってから頭を上げた。
「リクド」と、エリー。
「なんだ?」
「あなたには二度も助けられた。ありがとう」
「そんなことか。気にするな。一時的とはいえパーティーだったんだ。当然のことだ」
「そう……それでも、ありがとう」
エリーは言って、ぎこちなく微笑む。
これまでのちょっと乱暴な話し方と違ってしおらしい。
そういう喋り方のエリーも新鮮でいいな、とは心の中で言うにとどめておいた。
「お前は、王都に呼ばれるかもしれないな、リクド」
「……王都?」
不意に、アンナが言った。
深刻そうな顔だ。
「ああ、伝説級の魔物が現れた。それもダンジョンコアとして。今後、この強さのダンジョンが各地に出現するとなったら、圧倒的に人手が足りない。ヘタをすれば、SS級でも対処できないだろう」
「SS級でも……それほどか」
「それほどだ。そしてお前は、それほどのことを解決してしまったんだ」
「……なるほど」
SS級。
エスジックの階級だ。
しかしエスジックの強さであれば、エンペラースケルトンを倒せるような気がする。
いや、そうか。エンペラースケルトンはまだまだ序の口、これからもっと強い魔物が出現するということか。
ならば、もしかしたらSS級のエスジックですら手に負えない魔物が出てくるかもしれない。
そうなったら、SSS級の出番ということになる。
SSS級。
俺が目指すべき最上級で、そして最強の人間たちが集う階級。
「異例ではあるが、今回の功績を伝えたら国はお前を召集するだろう。もしかしたら、国王命令になるかもしれない」
「そうか……まあ俺は強いやつと戦えたらなんでも……っ!」
不意に、ギルドの外に巨大な気配が現れた。
「なっ!?」
「ひっ……!?」
「な、なんだっ!?」
ギルド職員たち。
冒険者たち。
アンナ、エリー、リムの三人。
全員が悲鳴を上げて膝をつく。
気配という圧力。
それが人々を床に張り付け、呼吸さえもまともにできなくさせる。
「……誰だ」
みんなのことが心配だったが、ひとまずこの気配をどうにかしないといけない。
俺は外に出て、そして目の前に立っている男を見据えた。
誰に聞かなくてもわかる。
直感だった。
こいつは──。
「魔王」




