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VSエンペラースケルトン

「オォオオッ!」


 エンペラースケルトンが雄叫びを上げ、再び手を振りかざす。

 巨大な拳による衝撃。

 俺は吹っ飛び、壁に激突する。


「リクド!?」

「大丈夫だ」


 エリーに答えた直後だった。


「オォオォォオッ!」


 エンペラースケルトンが両手をめちゃくちゃに振り回した。

 乱打。

 成人男性よりも遥かに大きい拳が降り注ぐ。


 凄まじい音だった。

 まるで重機で壁を掘削しているような音だ。

 壁が削れ、瓦礫が舞う。


 強い。

 身体が半分ほど壁に埋まったところで、乱打が止まる。


 代わりに、ギチギチギチ、と筋肉もないのに引き絞る音を立てながら、エンペラースケルトンが拳を弓矢のように構える。


(キングは剣を構えていたが、こいつはステゴロ。つまり、剣なんかなくてもその力だけで相手をねじ伏せてきたということだ)


 俺は今にも発射されそうなパンチを前にして、ワクワクした気持ちだった。

 エリーがやられかけた怒りとともに、強敵と戦える喜びに感情が沸き立っている。


「オォオオッ!!」


 来る!

 エンペラースケルトンが渾身の力を込めて拳を振るってきた。


 こんなものをまともに喰らえば、このボスの間さえも崩壊するんじゃないか。

 そう思わせるほどの迫力。


「はぁああっ!」


 だから俺も応えることにした。

 岩壁から抜け出し、拳を構え、そして打つ。


 ドォオォォオンッ……!


 洞窟が崩れたのかと思うほどの大音響。

 その音の正体は、俺とエンペラースケルトンの拳がぶち当たる音だった。


「オォォッ!?」


 そしてエンペラースケルトンから驚愕の声が漏れ、手が弾かれる。

 巨大な身体でたたらを踏む。

 瞳があったなら、その巨大な空洞となった眼窩は見開かれていたことだろう。


「いいね、最高だ。ナイスパンチ」


 俺は言って、一歩踏み出す。

 と、エンペラースケルトンが右手を開き、何かを唱える。


「──ッ」


 すると右手の親指から小指までの五指に、魔力の渦が練り上げられていく。


「ご、五大魔法を一気に……!?」


 エリーが驚愕の声を上げる。

 どうやら珍しいことのようだ。


 エンペラースケルトンの指には炎、水、風、氷、土の魔法陣が展開されている。


「に、逃げろリクド! いくらあんたでもこんなデタラメな魔法攻撃……!?」

「問題ない」


 エンペラースケルトンが右腕を振る。

 同時に展開された五種の魔法がうねりを上げて俺へと飛んでくる。


「すぅ……」


 俺は息を吸った。


「はぁあっ!」


 そして吐く。

 同時に突き出した拳がパパパパパンッ!と魔法を打ち消した。


「──?」

「……は?」


 エンペラースケルトンとエリーがまったく同じ反応をしていた。


「オォォオォッ!」


 一瞬早く気を取り戻したエンペラースケルトンが両手を組み、いわゆるスレッジハンマーの形で振り下ろす。


「──ッ……!!?」


 それを俺は両腕をクロスして受け止めた。

 足が地面にわずかに沈んだが、それだけだ。


「オォォォオオオッ!」


 苛立ったのか、エンペラースケルトンが雑に蹴ってくる。

 俺はあえて受け止めず、タイミングを合わせて足の甲に飛び乗った。


「──!?」


 見事、上空に蹴り上げられた俺は、エンペラースケルトンよりも高い場所で拳を構えて溜める。


「いっくぞぉぉぉっ!」


 そして落下と同時にエンペラースケルトンの頭部に向かって渾身のパンチ。

 バギャゴッ!!

 頭部が破壊され、身体が崩れる。


 巨大なクリスタル状の魔晶石が地面に転がり、エンペラースケルトンの身体は消失した。


「よし、これで……」


 着地した俺が言いかけたときだった。

 地響きが起きる。


「きゃぁっ!?」

「地震? 違う、ダンジョンが崩壊してるのか!」


 はるか上空から瓦礫が落ちてくる。

 俺はそれらを避けつつ、魔晶石とエリーの身体を担ぐ。


「逃げるぞ!」

「う、うん……! お願い……!」

「まさかコアも破壊してないのに壊れるなんてな!」


 走りながら言うと、エリーが崩壊していく洞窟を見ながら言う。


「……私も確証はないけど、たぶんあのエンペラースケルトンがコアだったんだと思う」

「あいつが?」

「そう。じゃないと普通は崩壊しない」

「なるほどな。あんたが言うならそうなんだろうな」


 俺は言って、洞窟を走り続ける。

 そして外に出た直後だった。


 大きな音を立てて、あの巨大な地獄めいた意匠の門が崩れ去るのだった。


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