スケルトンキングVS巨剣のエリー
「ここも私が先行する。リクドはこいつの動きを覚えて、私が退くようなことがあれば代わりに倒して」
「ああ、わかった」
頷きはしたものの、俺は心配ないと思っていた。
スケルトンキングを見るのは初めてだが、エリーのほうが強いように思う。
ただ、自分の勘だけでエリーの助言を無視するわけにもいかないので、俺はエリーとスケルトンキングの戦いを隅でジッと見つめることにした。
☓ ☓ ☓
「はぁあああっ!」
気合を入れて、巨剣とともに疾走る。
幾多の魔物たちを屠った、単純であり、圧倒的な力。
「はっ!」
「おぉおっ!」
巨剣を振るった。
しかしそれは、スケルトンキングの持つふたつの剣によって防がれる。
ギィィィィンッと甲高い、金属同士がぶつかる音がボスの間に響く。
(受け止める、か。予想はしてたけど、強い。けど……)
エリーは即座に引いて、再び特攻した。
「うあぁあっ!」
「おぉぉぉぉっ!」
剣戟の音が幾多も響く。
剣と剣がぶつかり合い、耳障りな音を鳴らす。
相手は二刀。
普通に考えれば不利だ。
それが、同じ実力であれば。
(魔獣フロスよりは、弱いっ!)
魔力体である魔獣フロスの強さは今思い出しても身震いするほどだ。
しかしスケルトンキングにはそれがない。
「──っ?!」
身体を回転させて遠心力を使い、巨剣を振り回す。
それが無防備に振るったスケルトンキングの剣に当たり、弾き飛ばした。
両手を万歳の形にしたスケルトンキングの腹部に、赤く輝く核が見える。
この距離で外すような冒険者ではない。
ギュッと足を踏み込んで力を込める。
「あぁあああっ!」
気合の声とともに、空気ごと巨剣が横薙ぎに振るわれた。
パキィィィンッ!!」
防御は間に合わない。
巨剣の刃先が核を捉え、破壊する。
「オォォォオオオッ!!」
最初とは違い、嘆きの声を吐きながらスケルトンキングが消滅していく。
剣と鎧も消え失せ、最後に消えていく頭蓋から黄金色の球が落ちる。
(終わった。倒せたけど、強敵だった)
エリーはドロップした討伐証明にある球を見つめながら、肩で息を吐く。
(これが、新興ダンジョン? こんなのがボコボコ出てきたら、手が足りなくなって村や街があっという間に滅んでしまう……)
倒せはした。
しかし、これがまだ未完成のダンジョンという恐ろしい事実に、エリーは身震いする。
エリーだから大した傷もなく倒せたのだ。
そもそもここにたどり着ける冒険者やパーティーがどれだけいるか。
S級がいない場所にもしこのクラスのダンジョンが出現したら──。
改めて、恐ろしい想像だった。
その考えが、予測が、エリーの反応を遅らせた。
地面が割れる。
何かが出てくる。
それが巨大な手だと気づき、握られたのを見た。
人の身体よりも大きな、拳。
「──っ!?」
それは身体に刻まれた反射的な反応だった。
エリーはとっさに巨剣の腹を盾にして構えた。
直後、とてつもない衝撃がエリーを襲う。
「エリー!?」
リクドの声が聞こえる。
身体が吹っ飛ぶ。
殴られたのだと気づいたときには、壁に背中を強打して「ごふっ」と血を吐いていた。
「な、なんで……」
揺らぐ視界で捉えたのは、地面から這い出てくる巨大な魔物。
おとぎ話でしか聞かないような、子ども騙しの恐ろしい怪物。
「エンペラー、スケルトン……?」
存在しないはずの魔物。
それが目の前にいた。
そして這い出てきたエンペラースケルトンが再び拳を振り上げる。
「り、リクド……に、逃げて……こいつは……」
魔獣フロスよりも、さらに恐ろしい相手。
こんなの、SS級やSSS級を何人も連れてこなければ……。
拳が真っ直ぐに向かってくる。
今度こそ、死ぬ。
しかし、エリーが拳に潰されることはなかった。
代わりに身体を撫でたのは、風だった。
「リクド……?」
目の前に立っていたのはリクド。
その手のひらで、自身の何倍もある拳を受け止めていた。
「彼女は疲れてる。お前の相手は俺だ」




