休息場所には金をかける価値がある
受付の男が勧めてくれた宿は確かに良いところだった。
受付の女将は俺が冒険者だとわかると、勝手知ったる様子で部屋に案内してくれて、飯の時間や他の冒険者たちがどこで顔を洗ったりとか、どういうところで道具を揃えているかなどの情報を簡単に教えてくれた。
風呂はないしトイレも共同だが、部屋はちゃんとした個室だし、硬めではあるがベッドもシーツも清潔だ。
湯浴みは近くに公衆浴場みたいなものがあるし、この宿屋だけなら手洗い場と足洗い場がある。
これで朝食が付いて一泊銅貨50枚なら悪くない。
さすがにこの世界での生活も慣れては来たが、清潔というのがタダではないと身にしみて分かっている。
なので清潔なベッドというだけで、金を出す価値があった。
「美味い……」
朝食も美味かった。
黒パンに具材の入ったスープ、ベーコンとスクランブルエッグ、ミニサラダ。
肉や卵はたぶん魔物のモノだが、美味いので気にならない。
というか清潔さと同様、この世界に来て魔物肉には十分慣れた。
最初こそミノタウロスやオークの肉と聞いて「うっ」となったものだが、食べればただの牛肉と豚肉だ。
美味いなら別にいい。
なんとなくだが、大意で日本人的味覚と食事観を持ってて良かったと思うなどした。
「さて、今日も仕事をするとするか」
俺は食事の礼を伝えてから、ギルドに向かう。
☓ ☓ ☓
「よぉ、ルーキー。今日はどんな依頼を受ける」
「そうだな……」
タイミングが良いのか悪いのか、またしてもいつもの受付──名札にはレジオと書かれている──に依頼受注を頼むことにする。
「Fランクが受けられる討伐依頼、これとこれとこれを」
「……まさか、全部か?」
「ああ、全部だ」
俺が示したのは、ゴブリン10匹とコボルト6匹とスモールスネーク1匹の討伐依頼だ。
この中だとスモールスネークが毒持ちなので注意が必要だ。
「お、おいおい。昨日のゴブリン討伐で自信を付けたかもしれないが、昨日は5匹だ。倍以上だぞ。危険だ」
「大丈夫だ。受けさせてくれ」
俺が躊躇わずに言うと、レジオは渋々頷いた。
「わかったよ。まああんまり無茶はするなよ。期待のルーキーだなんて煽った手前、お前さんが張り切りすぎて引き際を見誤り怪我なんてしたら寝覚めが悪いからな」
「ああ、そうならないように気をつけるよ」
「頼むぜ。じゃあ受注完了だ。行ってこい」
そして俺は、ギルドの魔法で依頼内容を冒険者カードに入れてもらい、魔物たちがいる森へと向かうのだった。




