逃亡先
地図に記された場所を目指して山道を歩いていると、目印となるものを見つけた。
「……」
それは巨大な焦げ跡だった。
地面の広範囲が黒くなっている。
道の脇には黒く焦げた木材や、ちょっとした山のようになっているものに布がかけられていた。
布で覆われているのは人と馬の死体だ。
偵察隊だけですぐに運ぶことはできず、せめてということで脇に寄せられてまとめて布を被されているのだった。
嫌なヤツだったら、俺は死んでいった彼らにそっと手を合わせたあと、山道を進んでいく。
そしてしばらくすると、地図に示されたとおり、ダンジョンが存在していた。
「リクドさん、ですか?」
「ああ、そうだ」
ダンジョンの前にはふたりの男が立っていた。
どちらも軽装の冒険者だ。
「ギルドから派遣されている偵察隊のシッドです」
「ガラクと申します」
「リクドだ」
偵察隊のふたりと挨拶を交わして、誰からともなくダンジョンの入口を見る。
入口は薄い膜に覆われていた。
結界魔法陣だ。
中から凶暴化したゴブリンやオークが出てこようとしているが、結界に阻まれて出ることができないようだ。
代わりに互いに攻撃し合い、仲間内で殺し合いを始めたりもする。
ちょっとした地獄絵図だ。
「ここはまだ低級のダンジョンなので凶暴化しても魔物には対処できますが、魔族は正直に言って厳しいです」
「それに低級だとしても、戦うすべのない人々は抵抗できない」
「なるほど。あいつらを出さないようにしつつ、さらに中にいるはずの魔族も始末しないといけないってわけだな」
「はい……無茶な依頼だとはわかっていますが……」
「大丈夫。俺は、あの魔族に負けたことはないから」
そう言って、俺はふたりに安心してもらおうとする。
実際に安心したかどうかは別として、むやみに謙遜して不安を煽る必要はない。
「じゃあ、行ってくる。あの結界、俺は通れるんだよな?」
「はい、大丈夫です」
「リクドさん、ご武運を」
俺は片手をあげて、ダンジョンの入口に向かう。
さあ、ステゴロの時間だ。




