魔王はどれぐらい強いのだろうか
「急いで各地のギルドへ連絡を送れ。確証ランクはB以上。それから近隣にいるAランク以上のパーティー及びSランク以上のソロを集められるだけ集めてくれ」
「わ、わかりました!」
アンナの命令に、リムを始めとしたギルド職員たちがバタバタと慌ただしく動き始める。
「そんなにまずいのか? 魔王復活って」
「まずいなんてもんじゃない。魔王ってのはあの化け物じみた強さを持つ魔族の王だ。過去に魔王が現れたとき、人族の4割以上が滅ぼされたとこともある」
「4割……尋常じゃないな」
「ああ。直近で現れたのは40年前。あのときは勇者が現れて討伐されたはずだが、こんな短期間で新たな魔王なんて。普通、魔王復活までは最低でも200年だというのに」
「やっぱり強いのか?」
「強いなんて言葉では表せん。現に当時、勇者以外の戦士たちは全員死んだ。生き残ったのは後衛職だけだ。というかなぜ知らないんだ。この世界に住んでるものは子どもでもおとぎ話として知っているはずだろ」
そんなことを言われても困る。
俺はこの世界に来てまだ半年も経っていないんだから。
「まあいい。最近の魔物の凶暴化、魔族の出現などから考えて魔王復活はほぼ確定だろう。だとするなら、ギルマスとして仕事を真っ当しなくては」
「どうするんだ?」
「ひとまずはお前が得た情報、廃魔族領への警戒に当たる。S級をガンガン使うならギルドの金庫は空っぽになりそうだが、人命が失われるよりマシだ」
「なあ、アンナ。その脅威って、魔王を倒せば終わるのか?」
「ん? ああ、終わる。と言っても現在のように魔物は残るが、ここ最近のようにB級やA級のパーティーがなすすべなく蹴散らされる、という事態はなくなる。それほどまでに、魔王復活による魔物強化は厄介なんだ」
「ふーん、倒せばいいのか」
「おい、無理だぞ」
「まだ何も言ってないだろ」
「魔王を倒すには、勇者だけが装備できる聖剣が必要だ。それ以外では何度も復活する。勇者がたどり着く前に魔王に挑んだ戦士たちも強かった。だが、無限に復活する魔王にやがて全滅させられたんだ」
言って、アンナがビシッと俺を指さす。
「だからいくらお前が規格外だろうと、勇者でもないお前が、しかも単独で討伐することなんて絶対にできないからな。行くなよ! 絶対だぞ!」
「ああ、わかった」
アンナは疑いの目を俺に向けつつ、新たな命令を下すために奥のほうへと走っていった。
「うーん、魔王。どれぐらい強いのか気になる。やっぱりレベルも高いんだろうな」
俺は魔王の強さに想いをはせた。
見たこともない強者たちが蹴散らされていく様子も想像する。
レベルがカンストしていても、あっさり蹴散らされてしまうだろうか。
試してみたい。戦ってみたい。
魔王に自分がどれほど通用するのか。
それにアンナがあれほど言うのだから、きっとレベルも900台。
いや、俺と同じく999かもしれない。
自分以外のレベル999。
いったいどんな戦いになるんだ。
俺は慌ただしく騒々しいギルドの中で、無意識に拳を握りしめるのだった。




