魔族捕縛部隊
「アンナ? どうして終わりなんだ?」
聞くと、アンナは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「王都から魔族捕縛部隊が来た。予定よりもかなり早い到着だが、相手が魔族では国も本腰を入れるってことだろう」
「魔族捕縛部隊?」
「王都だけに存在する魔族専門の部隊だ。魔族を退けてからその存在意義はなくなってたんだけどね、未だに活動は続けていたみたいだ」
「……なるほど。そいつらが、こいつを引き渡せと?」
アンナは頷き、地下牢の扉の先、階段の上方を見つめる。
「ちなみに拒否権も引き渡しを遅延させることもできない。なにせ相手は国だ。抵抗すればこっちが地下牢にぶち込まれる可能性もある」
「わかった。じゃあそいつらに引き渡しつつ、俺が手に入れた情報を渡そう」
「何かわかったのか?」
「それも含めて上で話すよ。アンナは同席するだろ?」
「もちろんだ。しかし、まさか本当に尋問を成功させているとはな」
「いや、こいつが勝手に喋ってくれただけだ」
「手練れの尋問官はみんなそう言うんだ」
「……本当なんだけどな」
☓ ☓ ☓
「こいつが件の魔族か」
「ああ、そうだ」
俺が魔族を連れて出ると、待ち構えていた魔族捕縛部隊がひったくるように魔族を奪う。
「で、こいつが話したことについてだが」
「いらん」
俺の申し出を、捕縛部隊の隊長と思われる男がピシャリと突っぱねた。
「貴様は正規の尋問官ではなくただの冒険者だろう。信頼に値する情報など引き出せるわけもない。尋問はこちらで行う。ご苦労だった」
「……」
傲慢な男だった。
後ろの捕縛部隊の隊員たちは、こちらを見てニヤニヤと笑っている。
嫌な感じだ。
「おい、いくら王都の部隊とはいえ、それはないだろう」
「やかましい。女のギルマスが出しゃばるな。お前なんてどうせ身体で得た地位だろう。置物みたいにそこにいればいい。正しく働く男たちの迷惑だ」
「なっ……」
「……」
反応したのは受付嬢のリムだった。
アンナは……何も言わない。顔からも表情が消えている。
これは相当怒っているな。
さすがの俺も今のアンナに殴られたら吹っ飛ばされるかもしれない。
だが、隊長始め隊員たちはそんなアンナやリムの怒りを無視して、ギルドから出ていく。
と思ったら、隊長が顔だけ出して俺を見る。
「そうそう。報酬をねだろうとするなよ。貴様ら冒険者が魔族捕縛に協力するのは義務だからな」
「……はぁ」
俺が気の抜けた返事をすると、隊長は鼻を鳴らして今度こそ出ていく。
ギルドの中の空気が重い。
どうしてくれるんだ、あのバカタレどもは。
「やれやれ。愚図もあそこまで極まれりとは」
「ギルマス?」
アンナの呆れた言葉に、リムが顔を向ける。
「魔族捕縛部隊は元はエリート集団だったんだ。魔族が脅威として残っていたころはね。ただ、脅威がなくなり、お飾りとなったことでプライドだけが肥大しちまったのさ。だからあんな、傲慢でクソみたいな連中になったんだよ」
「ぶん殴らなくてよかったか?」
聞くと、アンナは首を振って笑う。
「あんなの殴ったらあんたの手が汚れる。それに腐っても王都の、つまり国の使いだ。とんでもない問題になるよ」
「そうか。まあ、アンナがいいならいいんだが」
「ありがとな。ところで、あの魔族から得た情報ってのは?」
「ああ、それなんだが。魔王が復活して、近々廃魔族領に本隊が攻め込むらしい」
「…………は? はぁあああぁぁっ!?!?」




