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強者たちが集う組織

「な、なんで……ナイフが砕け散る? こいつは今まで何人も人を殺してきた……」

「レベル差だろうな」


 ビーニーが驚愕の顔で俺を見ていた。

 それも当然だ。ナイフで刺されたら普通の人間は死ぬ。


 A級ぐらいになれば耐えられる冒険者はいそうだが、D級だとまだここまでは鍛えてないだろう。


「レベル……? 何の話をしてる? お前、何か魔法を使ったのか?」

「いや? 魔法なんて欠片も使えない。俺とあんたじゃ鍛え方が違うって話をしてるんだ」


 俺はビーニーの真正面に立ち、拳を握る。


「ちなみにひとつ聞いておきたいんだが、ヒョヨルドってのは本当にいるのか?」

「…………」


「まあそうだよな。言うわけないよな。たぶん、いないだろうけど」

「……化物が……どんなトリックを使ったかわからんが……」


 ビーニーは歯噛みした顔で言いながら、ジリ……と後ろに下がる。

 そして急に右手を地面に向かって振ると、破裂音とともに大量の煙が噴き上がった。


 逃走用の煙幕だ。

 刺激臭もする。目潰しや噎せさせる効果もあるのだろう。


 もちろん、俺には効かないんだけど。


「おい、逃げるなよ」

「ひひゃぁっっ!? な、なんでっ!?」


 俺はダッシュで煙幕から脱出し、ビーニーに並走する。

 ビーニーは速度には自信があったようで、かなりの距離を稼いでいたが、レベル999の速度を舐めるなよ。


 ということで追い抜かしてから、平手でビーニーの頬をぶっ叩いた。

 当然、ものすごく手加減をした。


「へべっ?!!」


 ビーニーの首が死なない程度にグリッと回り、慣性の法則で身体だけが前に吹っ飛ぶ。

 そしてビタンッと地面に落ちたビーニーは、ピクピクと痙攣していた。


 よし、死んではいないようだ。


「さぁて、じっくり話を聞かせてもらおうかな」


 標的を仕留めた俺がビーニーの首根っこを掴んでギルドに持ち帰ろうとしたときだった。


「やっぱり採用試験の方法を改めるべきだと、俺ぁ思うんだよなぁ」


 路地の反対側から、ひとりの男が現れた。

 巨漢だ。


 ボサボサの黒髪をボリボリと掻き、パツパツのシャツから見える体毛が濃い。

 筋肉質で、目つきが鋭い。


 一目で表の人間ではないとわかるような、ただならぬ気配を纏った男だった。


 ビーニーよりも、よっぽどヤバそうな相手だ。


「よぉ、兄ちゃん。あんた強いな」

「……どうも。あんたは?」


「俺は……まあ覚えなくてもいいぜ。どうせこれから死ぬんだ」

「……死ぬ?」


「ああ、そいつな。ビーニー。うちの組織に入りたいと言ったから採用試験を行ってる最中だったのよ。手段を問わないから冒険者を五人殺せば仮採用ってな。だがしかし、不意打ちばっかでよぉ。まあ反則ではないから構いやしねぇんだが、俺としては釈然としないわけよ。なんせ俺らは真正面から戦って最強を掲げた殺し屋集団なんだから」

「ずいぶんと長く喋るじゃないか」


「いいんだ。どうせ生かして返すつもりはないし、俺たちがただの卑怯な殺し屋だと思われたまま死なれるのは嫌だからよぉ」

「自信があるんだな」


「当然だ。これ一本で鎧を着た連中をぶっ殺してきた。兄ちゃんもそうだろう? ステゴロでやってきたって雰囲気がある」


 男が拳を握った右腕を持ち上げて見せる。

 かなり太く、鋼を束ねたような腕だ。


 腕だけではない。鍛え上げられた肉体。しかも相当だ。


「なあ、そうだろ?」

「そうだ」


 この男、かなりできる。

 そんな雰囲気があった。


 もしかしてレベルも高いのだろうか。

 SSS級だったりするのか? 自分以外ではまだ、たぶん出会えていないレベル900台。


 技術もあるレベル900台の組織があるってことか?

 そんな連中がゴロゴロしている組織……なんて魅力的なんだ。


「なあ、もし俺が勝ったら、あんたの組織について教えてもらえるか?」

「うん? ははははは! いいぜ、勝てたら全部教えてやるよ。ま、一分も持たねぇだろうがな」


 男が構えた。

 すごい。とんでもなく雰囲気がある。


 これは強者だ。絶対に強者だ。


 皮膚に鳥肌が立つ。

 人間相手にこんな感覚になるのは初めてだ。


 俺はこれから、人間の強者と戦う。

 全身全霊で挑まなければ、負けるかもしれない。


 異世界に転生してきて、自由に動く身体が楽しくてついつい鍛えすぎてしまったおかげでレベル999。

 相手になる魔物も少なくなってきた中で、やっと巡り会えた強敵。


 必ず聞き出す。

 レベル900台と思わしき殺し屋集団。


 野良のSSS級レベルの強者たち。

 まずは、生きて勝たねば。


「いくぜぇっ!!」


 男が駆け出す。

 速い。常人の目では追いつけない速度だ。


 男が拳を突き出す。

 巨大な拳だ。当たったら、頭はスイカみたいに粉々に砕け散るに違いない。


 そんな恐ろしいパンチを、俺は紙一重で避けながら、カウンターで全力の拳を合わせた。


 ドパンッ──。


「……………………え?」


 男の頭が消失していた。

 血煙が舞って、風に流れて消えていく。


 どさっ、と男の身体がゆっくり前のめりに倒れていった。


「……………………え?」


 何者なのかさっぱりわからなかった男はこうして、一分も持たずに、たった一撃で絶命してしまったのだった。


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