エルザールの街
「もう着いたのか」
ミュラントの街を出て一週間。
馬車による旅は快適そのものだった。
野盗が出るわけでもなく、ゴブリンなどの魔物が少しばかり出たが、俺の敵ではない。
俺だけではなく、他の乗合した人間も心得があったらしく、魔物が出てくるたびにさっさと片付けていた。
そんなこんなで一週間の旅を終えて、俺は少しばかり歩いてエルザールへとたどり着いたのだった。
エルザールは堅牢な門に、屈強な衛兵、門番が控えていた。
「身分証を」
「これを」
門番に言われ、俺は真新しい冒険者カードを提示した。
「む、これは……」
門番は冒険者カードをマジマジと見つめたあと、視線を上げて今度は俺の顔をジッと見つめた。
「B級という記名に嘘はないな?」
「ああ、もちろん。嘘だったらそのカードは発行されないだろ」
「そうとも限らん。が、君の言うことは信用しよう。なにより今はランクの高い冒険者の力を欲しているからな」
「凶悪な魔物の件ってやつか?」
「そうだ。なので君には街に入ったらまっすぐギルドへ向かってほしい。この街は今、冒険者にとって稼ぎ時になっている。仕事には困らない。仕事にはな」
「わかった。そうしよう」
俺は門番からカードを返してもらい、その足でギルドへ向かった。
エルザール、聞いていたよりも人手不足のようだ。
☓ ☓ ☓
「ようこそ、エルザールの冒険者ギルドへ。ソロだとしてもB級以上の冒険者は大歓迎だよ〜」
俺を迎えてくれた受付嬢は、リムというらしい。
緩い喋り方だが、話している最中にも色々と手を動かして書類などを処理している。
「さっそくで悪いんだけども、頼みたいクエストあるんだよね〜、お願い出来る?」
「依頼の内容によるが……なんだ?」
「それもそっか。まあB級なら大丈夫だと思うけど、ヤバいと思ったらすぐに引き返してね〜」
リムは言いつつ、書類を一枚カウンターに置く。
それは討伐依頼書だった。
『ウォー・モンキー 15匹の討伐』
ウォー・モンキー。聞いたことがない。
しかし名前の感じからして猿系の魔物だろうか。
「こいつはここら一帯を縄張りにしている魔物の猿軍団ね。1匹ずつでもそれなりに脅威だけど、集団になると手に負えないこともしばしば。A級冒険者のパーティーがなんとか大所帯を片付けてくれたけど、まだ小さなグループは生き残ってるみたいで、定期的に餌を求めて街を襲撃してくるのよ」
リムは依頼書の15匹のところを人差し指でトントンと叩く。
「数字上は15匹と書いてあるけど、これはあくまで努力目標でかまわないよ。5匹でも10匹でも、まあ3匹以上だと嬉しいかな。15匹に満たなくても倒した数に応じて報酬を差し上げてるからね〜」
「ということは、やはりそれなりに強いということか」
「倒してもらえるなら、そのほうがありがたいのはもちろんだけどね〜」
「逆に15匹以上倒したらどうなる?」
「その場合は報酬に色を付けて、適正価格をお支払いするよ。素材なんかもそれなりのお値段で売れるから、余裕があったら死体は持って帰ってきたほうがいいかもね」
「……なるほど。そうだ、アイテムバッグの貸与はあるか」
「アイテムバッグならそこ」
リムが指さした先には平台があって、そこに使い古されたボロボロのバッグがいくつか並べられていた。
「色んな人が使うからね。容量は少ないけどちゃんと使えるから、好きなの持っていっていいよ〜」
「助かる」
俺は言って、アイテムバッグのひとつを取る。
そしてさっそく、ウォー・モンキー狩りに出るのだった。




