ナッシュが誰かにやられたらしい。かわいそうに。
「これで、依頼は完了です」
「ああ」
俺とエリサは元いたミュラントの街へ帰ってきて、ギルドで手続きをして解散となった。
「本当にありがとうございました。リクドのおかげで、すごく快適な買付になりました」
「それは良かった。また護衛の依頼があったら声をかけてくれ」
「はい、もちろん!」
エリサと笑顔で別れ、まだ昼過ぎだったこともあって、俺は再び受付に戻る。
もちろんレジオのところだ。
「よぉ、お疲れさん。どうだった、依頼は」
「大変だった。魔物はほとんど出なかったが、野盗だな。行きと帰りで一回ずつ」
「ははは、運が悪いな。いや、悪いのは相手のほうか」
「ん? どういうことだ」
「将来のB級相手じゃあ並の野盗は勝てねぇって話だよ」
レジオは言うが、俺はピンと来なかった。
あんな程度なら、俺と同じFかE級でも倒せるだろうと思う。
もちろん同じ人数ぐらいは必要だと思うが。
「それよか、聞いたか。S級の話」
「S級のってなんだ?」
「どうにもS級冒険者、雷剣のナッシュが誰かにやられたって話でな。命に別状はないらしいが、診療所を抜け出してどこかへ消えたらしい」
「そいつなら、会ったぞ」
「なに? どこでだ?」
「隣街で。ギルドに立ち寄ったら、あいつが入ってきて依頼を受けてたよ」
「何の依頼を受けてた」
「アイアンリザード」
「アイアンリザードぉ? 確かに強いがS級がボコされるレベルかぁ?」
レジオは唸り、それから首を振った。
「まあ、俺も詳細は知らんし、ここだけの話、ナッシュはいけ好かないヤツだからな。命に別状がないなら大丈夫だろう」
「そうか」
詳細について尋ねられないなら、特に答える必要もないだろう。
実力を隠していたのか、あれが本気だったのか俺にはわからないが、そんなに面白い話でもないだろうし。
「ところで依頼は何かあるか?」
「ああ、そうだな。お前さんに回そうと思ってたのがひとつあるんだ」
そう言って、レジオはカウンターの下から依頼書を三枚取り出した。
「全部討伐依頼だ。オーク5匹とフォレストブル2匹、それからスモールコカトリス1匹だな。市場に出回る肉になるから、E級相当の依頼だがけっこう重要な仕事だ」
「なるほど」
俺たちが日々食べている肉というわけだ。
これは腕が鳴る。
「依頼を達成すれば、お前もE級になれる。冒険者になって一週間以内で昇級するのはとんでもない速さだが、お前には相応しいと思ってる。E級になればひとつ上のD級クエストが受けられるし、そうなると出来ることの幅も広がるしな」
「わかった。じゃあこの依頼を受けよう」
「OK。じゃあ張り切って行ってこい」
「ああ」
俺は冒険者カードに魔法で依頼を記入されたあと、早速魔物たちがいる場所へ向かうことにした。
E級に昇級。
うん、楽しみだ。
俺はレベル上げをしていた頃から思っていたのだが、コツコツ何かをやるのが好きなようで、前世ではコツコツ何かを積み上げても可視化されなかったが、現世ではこうして可視化されることが嬉しかったのだと思う。
だからこそレベルは999なわけだし、冒険者ランクを上げていく工程にワクワクしている自分がいた。




