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VS雷槌のルカ&双剣のブリュンヒルデ

「大型ルーキーはどっち……って、聞くまでもないか」


 腰に双剣を佩いた女性が言って、俺を見る。


「やっほ〜ルーキー。私はルカ。こっちはブリュンヒルデ〜」

「ルカち、それだと私、ブリュンヒルデーさんみたいだよ」

「まあまあ細かいことはいいじゃな〜い」


 自分の身長よりも大きそうなハンマーを持った女性が言う。

 ルカと呼ばれた女性が、棒付きのキャンディーを咥えながら、ブリュンヒルデー……もといブリュンヒルデと呼んだ女性を見上げた。


「有名なのか? クラッド」

「有名なんてもんじゃない。SSS級の中でもさらに上澄みだ。正直、化け物の類だな。そうか、このふたりならさすがにお前さんでも」

「いいね」


 俺はふたりを見る。

 初めて見るSSS級だ。


 クラッドも言っていたが、実際に相当強い。

 あの気配の消し方。そして溢れ出る膂力のオーラ。


 ダンジョンコアを守っていたギガンテスよりも、明確にふたりは強い。


「準備はいいかな〜? いいよね〜?」


 棒付きキャンディーを口から取り出し、齧り取られて鋭利な槍みたいになった棒をこちらに向けるルカ。

 表情は変わっていない。

 しかし、目の奥が暴力を行使するモノの“それ”になった。


「持ってるよね? コア。勝ったほうが総取りね」


 ブリュンヒルデが言う。

 そしていつの間に握ったのか、双剣が両手に構えられている。


 ヒッ──。


 誰かが息を飲んだような音が耳元でした。


 首は傾けてある。

 耳をかすめたのは、ルカが持っていたはずの棒だった。


 つまようじほどのサイズ。

 しかし無防備に当たっていれば、額か目玉を貫通して脳を破壊されていただろう。


「さすが。避けるんだ」

「ちょっと、ルカち殺す気だったでしょ? 楽しめないじゃん」

「いいじゃ〜ん。死んでないんだから……さっ!」


 喋りながらルカがその場から消える。


「あっ! ずるっ!?」


 気づいたときにはもう目の前に現れている。

 巨大な槌を背中側に回して、振り落とす格好だ。


「早いもの勝ちぃっ!」


 ルカの驚異的な速度の振り落としは、しかし空を切った。

 空気が真空波を生んで木々を切り、槌が触れた地面を破砕する。


「うっそ〜!? 避けるの?」

「さっすがルーキー! 今度は私だよー!」


 ルカの後方からブリュンヒルデが跳んできた。

 構えた双剣を身体の前で振り回しながら飛び込んでくる。


「さあ! 避けられるかなぁー!」


 一分の隙も見当たらない斬撃だ。

 どう逃げようともどこかしらは斬れてしまう恐ろしい攻撃だった。


 だから俺は──。


「嘘でしょ!?」


 ブリュンヒルデが驚愕に叫ぶ。

 そう、俺は避けられないなら止めてしまえばいいと、指先で双剣の刃先を挟んで止めた。


「うっ……ご、かないぃーっ!!」


 押しても引いても動かない。

 俺が力を込めて止めているからだ。

 斬りかかる空中姿勢のままでブリュンヒルデはなんとかしようとするが、上手くいかない。


 と、思ったら顔に衝撃が走った。

 蹴られたのだと気づいたときにはブリュンヒルデが双剣から手を離して後方へと宙返りしたあとだった。


「ルカち頼んだー!」

「まっかせなさ〜い!」


 声は聞こえる。

 しかしルカの姿は見えない。


 下だ!


 反射的に目を下に向けたときにはもう、懐に入り込んだルカが槌を振り上げるところだった。


「うぅりゃあっ!」

「ぬぅっ……あぁあっ!」


 だから俺は右拳を握って最速で振り下ろした。

 小指側から振り下ろす鉄槌の形だ。


 雷鎚VS鉄槌。


 ドンッ──!!


「うわぁあっ!?」

「ひゃあああっ!?」


 ふたつの槌から生まれた衝撃波でクラッドが吹っ飛び、ブリュンヒルデが顔の前を両腕で覆った。


 そして結果は──。


「……どんな力してんの? マジで〜」

「なんか、すいません」


 俺の勝利だった。

 ルカの手から雷鎚が落ち、俺の手は無傷だ。


「降参〜。虫のいい話だけど殺さないで〜」


 言ってルカが両手を上げる。


「私も私もー」


 後方ではブリュンヒルデも同じように両手をあげていた。


 俺は追撃のために構えていた左の拳と構えを解く。

 別に殺し合いをするつもりはなかったからだ。


 もちろん相手が殺すつもりでまだやるなら“そう”するつもりだが。


「わかった。あんたらを殺したりはしない。だが」


 俺が全部言う前にルカが懐から球を取り出す。


「わかってる〜。はい、これ。西のダンジョンコアだよ〜」


 そう言って、俺にとってはふたつ目となるダンジョンコアを差し出してくるのだった。


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