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曇天の下、クラベ村。
地肌が剥き出しの道が南から北へと続いている。細い、馬車がすれ違えない程の狭い道は、エドンまで続いている。
林業と農業、南に広がる森からの恵みを得ながら、細々と人々が暮らしていた小さな村――それは、少し前までの話。
人が消え、村の中央にあるウォール・マナタイトも光を失った。
今、闊歩しているのはゴブリン、そして村の入り口で門番のように立ちはだかる岩の化け物――ゴーレムだけ。
にわかに、異変が訪れる。
最初に、鳥が飛んだ。
木々から一斉に飛び立つと、南へ向かって逃げて行く。
次に訪れたのは、音の波。
獣の鳴き声とも違う。鳥の羽ばたきとも違う。
機械が空を切り裂く音だ。
ローターが風を切り裂く音――そして、『鉄の鳥』が見えてきた。
ローターを回し、空を飛翔する鳥。
ファルコンのファイターユニットが急速に接近する。
『まもなく作戦領域に突入します――エール、準備はいいですか?』
「問題ありません、待ちわびていましたから」
コックピットの中で、戦闘用AIは短く告げる。
シーナも僅かに確認をすると、それ以上は言わない。
『ユートから承認が下りました。発砲を開始してください!』
「了解!」
そして、鉄の鳥は咆哮する。
両翼の下に取り付けられたガトリング砲が火を噴く。
無数の弾丸が岩の巨人に向かって降り注ぐ。
「■■■■■■■■■■■!!!」
岩の巨人は言葉にならないうめき声をあげる。
岩の腕は金属の弾丸によって削られ、脱落した岩塊が草原に突き刺さる。
ゴブリンたちが奇声をあげて空を見る、投石を行うが届かない。
『エール、やはり減衰があるようです』
「分かりました。さらに接近します」
ファイターユニットは加速する、円の動きで砲火を続けながら距離を詰める。
「オ■■■■■ア!!!」
ゴーレムは自らの腕をちぎると、強引に投げつける。
だが、高速で旋回するVTOL機をとらえることなどできず、岩はあらぬ方向へと飛んでいく。
「グレネードガン、発射します」
そして、十分に距離を詰めたところで、機体の下部中央からグレネードガンが展開する。
ガトリングの銃弾よりも数倍の大きさの擲弾が放たれると、岩の巨体に着弾する。
瞬間、爆裂。
岩の巨人は断末魔の咆哮すら上げられず、岩の破片と化した。
同時に、草原の彼方からローバーが走ってくる。
未だ混乱するゴブリンたちを尻目に、ユートが飛び出してくる。
「よし! ありがとうエール!」
『エールは一時的に離脱。作戦目的はウォール・マナタイトの起動および制圧』
入れ替わるようにエールが交代していく。
そして、作戦の開始がシーナから通達される。
「これより作戦を開始します」
■■■■■■■
■作戦『クラベ村 ウォール・マナタイトの再起動』
概要:
エドンより南東に存在する廃村、村の中央にある結界装置、ウォール・マナタイトの再起動作業中に、謎のモンスターによる襲撃が発生した。
速やかに制圧をし、周辺の安全を確保せよ。
作戦目的:
ウォール・マナタイトの起動。
襲撃してきたモンスターは、幻体ゴブリンならびにゴーレム。
ただし、ゴーレムは既に排除されている。
必ずしも敵の殲滅は必須ではないが、激しい戦闘が予想される。
■■■■■■■
ユートに続き、ローバーからケラウスとライカ――そして、マイトが降りてくる。
オートマトンは二手に分かれ、三機がユートの隣に。残りの四機はアッカと一緒にケラウスたちを守るように立つ。
「よし、俺はこのまま村を回って陽動にうつる! アッカ、オートマトンを3機借りるよ!」
「うっす、残りはオレッチに任せて!」
ユートは走り、村の中へと切り込んでいく。
剣を抜き、銃を放つ。その後ろをシールド・オートマトンがフォローする。
ゴブリンたちは、まともな抵抗も出来ずに村の奥へと追い詰められていく。
そして、十分に距離を取ったことを確認すると、ケラウスたちも動き出した。
作戦の二段階目は、村の制圧。
そのためには、ウォール・マナタイトの起動が必要だ。
――ウォール・マナタイトさえ起動してしまえば、幻体モンスターは消失する――
とは、ケラウスの言葉である。
事実、エーテルの塊である幻体モンスターは、ウォール・マナタイトによって浄化された状態では存在することが出来ない。
そのために、ケラウスとライカは起動に集中。
ユートは、敵が集まってこないように村内を攪乱することになった。
「俺とライカ、それにマイトは起動準備だ!」
「はい、お師匠様!」
力強く応えるライカ。
だが、少年はか細い声が応えるだけだった。




