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【第二部完】地球に落下するコロニーごと異世界に転移した俺は、次に何をすればいいんだ  作者: 狼二世
【第2部】ミッション22 第二次巨大構造物地球落下阻止
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314/315

22-22


 夕日が地平線にかかり、夜が訪れる僅か前。紫色の空が地平線から広がっている時間帯。その頃になって、ようやくユートたちは庁舎を出た。

 長く続いた話し合いで疲れたのか、クレオとパトラはとぼとぼと歩いている。後ろのユートたちも、疲れた顔をしていた。


 太陽が大地に沈むと、一気に空が暗くなる。それと同時に、夜の訪れを告げる鐘が鳴る。

 クレオとパトラは目を覚ましたように背筋を伸ばすと、思わず上を見る。

 庁舎の上、古い鐘楼にある鐘は、大気を振るわせていた。


 やがて、残響を残して鐘の音は消えていく。

 それすらも遠くへと去って言った時、シルリアが呟いた。


「鐘の音が、聞こえた」


 すると、ライカが前に出て得意気に言う。


「夜の訪れを告げる鐘の音だよ、エドンのみんなは、この音を頼りに一日を過ごすんだ」

「……そうなんだ」


 もう一度、シルリアは鐘楼を見上げる。


「すごい大きいけど、すごい優しい音色がする」


 さて、そんな余韻に浸っているのはシルリアだけで――


「それよりおなかすいたー」

「ぺこぺこ」


 子供二人は、そんな我儘を言っていた。


「ごめんなさいね。育ち明かりなので」

「はっはっは、子供はそうでなくてはな」


 アキヤマはそう言うと、皆の前に立つ。


「さて、頃合いもいいだろう、いくぞ」

「どこにですか?」


 ユートが問いかけると、老人は北東の方角を指さした。


「おれの家だ。オハルが待っている」


◆◆◆


 中央区から北区へ向かう橋を渡り、東へ向かう。

 家へと向かう人々と一緒に道を流れるように進む。

 大通りから外れた堀の傍、アキヤマの隠宅。玄関にはオハルが立っていた。

 オハルは一行を見つけると、パタパタと駆け寄ってくる。


「おかえりなさい、先生!」

「うん、長く留守にしてすまんな」

「そうですよお、それなのに、ウエ様からつかいがあったと思ったら、帰るからみんなの食事を用意しろ、だなんて」


 皆の視線が一斉にアキヤマに集まる。その視線に居心地が悪そうにアキヤマは目を逸らす。


「先生、それはオハルさんに謝らないとダメですよ」


 思わずライカが言うと、オハルも頷いて。


「そうですよ、ライカちゃん、もっと言って言って」

「やれやれ、オハルには負けるなぁ」


◆◆◆


 アキヤマの隠宅に上がると、ユートたちは広間に通された。

 広間には全員が吸われるテーブルが用意され、湯気の上がる鍋を中心とした料理が用意されている。


 全員が集まり、着席をすると「いただきます」と挨拶をする。

 アキヤマの合図で鍋の蓋を開けると、出てきたのは黄金の汁と香ばしい香り。

 エドンの野菜と鶏肉の鍋があった。


「これは」

「鴨の鍋だ」


 オハルが得意気につけたす。


「鶏ガラで出汁もとって、準備したんですからね。さあさあ、召し上がってください」


 促されるままにユートは椀にスープと肉をよそい、おもむろに口に運ぶ。

 そこで、『違い』に気がついた。


「……これはっ」


 思わず声が出ていた。


「濃厚な出汁と、それに負けないくらい甘い油……それに、なんて柔らかいんだ!」

「ほほう、おれに言われたからか、まともに評するようになったか」


 アキヤマは得意気に笑うと、皆に食べるように促す。


「さあさあ、くえくえ」


 そう言うまでもなく、クラマはすさまじい勢いで鍋を食べる。


「かああああ、うんめええ!!」

「クラマきたな~い」


 思わずパトラが言うが、その隣のクレオは――


「パトラ、それより食べないと、もったい、ない」

「ちょっと、クレオも落ち着いてよ」


 負けないくらい汚い食べ方をしていた。


「オハルさんでしたっけ、よければどんな料理か教えてくれませんか?

 この場にいない夫にもいつか食べさせたいので」

「あらら、それなら今度うちに呼びなさいな」


 アパシアはオハルと一緒に話に花を咲かす。

 そして、ユートは鍋だけではなく米を食べ――


「くそ、このライスだって全然味が違う……俺が今まで食べてきたメシはいったいなんだってんだ!!」


 やはり、違いに驚いていた。

 クラマも何度も頷き、同意する。


「気持ちは分かるぞ、アタシもここまで美味い飯は初めて食べだ」

「ふふふ、だから言っただろう。美味い飯を食べ、それを味わい、言語化出来るようになる。そうすれば、より人生は豊かになる、とな」


 その賑やかな光景を、ライカとシルリアは眺めていた。


「……」

「シルリアちゃん、どうしたの?」

「……鐘の音と同じ……大きな音なのに、心地よいから」


 騒がしいくらいに音は響いている。

 けれど、不快感はない。

 知らず知らずのうちに、シルリアも顔を和らげていた。


「ふふ、そうだね」

「賑やかって、こういうことだよね」


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