22-21
山間の街から鉄の船が浮かび上がる。
ローターが空を切り裂く音よりも大きく、地上からは別れの言葉が吹き上がってくる。
赤龍が祝砲代わりの火を吹き、その旅路を見送った。
ウォール・マナタイトを返還後、ユートたちは一晩の休息の後に北へと針路を向ける。
クレオとパトラはもう少し遊びたいと駄々をこねたが、ユートたちにはまだやるべきことがすることが残っている。
目的地はエドン。
支援者であるウエに、報告をする必要があった。
◆◆◆
ワンドガルドの南東部の空を縦に飛ぶ。行く手を阻むもののない旅路は快適で、昼過ぎにはエドンが見えてきた。
何度も着陸をして草の倒れた平野に着陸をすると、ファイターユニットからユートたちが降りてくる。
ユートをはじめとして、クラマとアキヤマ、それにアパシアとクレオとパトラの大所帯であった。
皆が降りたことを確認すると、ユートを先頭に丘を越える。
水田の合間の道を歩き、エドンと広野とを隔てる城門の前に。そこには、見知った門番の顔があった。
門番はユートの顔を見ると、手を上げて気さくに声をかける。
「やあ、久しぶりだね、ユート君……それに、ライカさんもか」
「えっと、お久しぶりです」
まだどこかぎこちなく、少し困ったように眉を曲げていた。
「久しぶり。ユート君が言っていたように、今度はちゃんと一緒だったね……それに」
ユートの後ろの面々を見て、何とも言えない顔をした。
「何というか、友達が増えたみたいだね」
「ええ、嬉しいことです」
「うん、そうだね」
そして、一人一人に挨拶をする。
そして、最後に一人、新顔のシルリアを見る。
「君は初めて見る顔だね」
「……はじめまして」
「はじめまして。ようこそ東の果てのエドンへ!」
そして、門の先へと迎え入れた。
城門を潜った先にはエドンの街並。
雑多で、にぎやかで、彩り豊かな街並みが続いている。
シルリアは思わず息をのむと、周囲を見渡した。
「ブランシュよりも、ずっと人が沢山いる」
それに、クレオとパトラがうんうん、と首を縦に振る。
「驚くよね~、あたしも北から来た時驚いたもん」
「うん、それに物も沢山ある」
まだ昼間で閉まっている店も多いが、物の通りは未だに多い。
ブランシュでは見られない、北からの輸入品も多く見れれた。
「……いっぱい匂いが混ざってて、なんだか変な感じ」
「ブランシュの花の香りに慣れていると違和感がありますものね」
シルリアはずっと周囲をきょろきょろと見ながら歩いている。
目を離せば、ふらふらとどこかに行ってしまいそうだ。
「さて、一度家に帰りたいところだが、面倒ごとは早く済ませるに限るな。マツディラの小僧に顔を出さんと」
アキヤマのその言葉に、皆はひとまず最初の目的地を目指すことにした。
◆◆◆
東区から橋を渡って中央区へ。
珍しい物を見つけては足を止めるシルリアを引っ張るように進み、エドンの庁舎へ。
庁舎について受付に話を通すと、ユートたちはすぐにウエの執務室へと通された。
ウエはユートの顔を見ると、待ちかねたかのように話始めた。
「昨夜のうちにギルドから報告は上がっている。ユートをはじめ、皆、よくやってくれた」
なんとも早い話に、思わず顔を見合わせた。
「ほんと、いろいろあって疲れたぜ。暫くはアタシも休みたいぜ」
「ははは、後始末こそ大変なのだぞ」
「げっ……」
露骨に不満そうな声をあげるクラマを無視して、ウエは話を続ける。
次は、シルリアの顔を見る。
「さて、君がシルリア、かな」
「はい」
「話は聞いている。君の処遇については、アパシア達と同じようにアステアとユートの庇護下に入ることになるが……まあ、難しいことを言ったところで、ユートの障害にならない限りは自由だと思ってくれ」
そして、椅子から立ち上がるとユートの前まで歩いていく。
立ち止まり、少年の顔を見ると、優しく肩に手を置いた。
「改めて、これからも頼むぞ、ユート」
ユートはただ、黙って頷いた。
肩に置かれた手からは、熱とともに確かな期待が乗せられている。
不思議と、そこに重さを感じていた。
そんなユートに、アキヤマは言う。
「まったく、こいつが無茶を言うならおれが相談に乗るぞ。遠慮なくいえ」
鷹揚に笑うと、わざとらしくウエに視線をおくった。
「アキヤマ先生にそう言われると、かないませんね」
ウエはわざとらしく肩を竦めた。




