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【第二部完】地球に落下するコロニーごと異世界に転移した俺は、次に何をすればいいんだ  作者: 狼二世
【第2部】ミッション22 第二次巨大構造物地球落下阻止
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309/315

幕間 22-17.5


 地球圏――ラグランジュⅣ一番コロニー。人工の大地は想定された速度で回転し、想定通りの疑似重力を生み出している。住民たちは地球圏の時間に応じて一日をはじめ、人工の大地で生きていく。今もかわらず。


 数カ月前にすぐ近くのコロニーが落ち、つい最近もまた巨大構造物が地球へと落下しようとした――けれど、市民は変わらず生活を続けている。


『それでは、次はコメンテーターの――』


 街の中央、街頭の大型モニターでは訳知り顔の芸能人が、適当な推論を話している。

 ――曰く、二回目のコロニー落としは七番コロニーの穴埋めのための建造中のコロニーを利用した。

 ――タエナリウムと名乗る存在は、アルテミスの件を模倣した別の勢力である――


 と、どこかから台本が出ていそうな無い方を適当に嘯いている。

 市民たちも慣れたもので、今は既に平静を取り戻していた。


 結果的に犠牲者が最小で済んだ事件は、いつの間にか生活に埋もれていく。


 ――そう、一般市民には――


◆◆◆


 二度のコロニー落としは、世間一般では破壊の成功によって被害が食い止められたと発表された。

 その立役者とされたリダは、様々なメディアにて『お行儀のいい』結論を述べ、形だけの昇進をする。

 その裏では、ユートからもたらされたワンドガルドの情報についての徹底的な管理が行われた。


 異世界の存在は俄かに信じがたいものではあるが、幻覚と言い捨てるには証拠が揃い過ぎていた。

 異世界の映像に魔法の存在。翻訳のための言語データや、魔法の発動による実証データ。

 それらすべては慎重に管理され、いつか公開される日を待っている。


 ただ、全てを管理することは難しく。

 一部の情報が、関係者の間で個人所有されていた。


◆◆◆


 地球低軌道に、フラット1の巨影があった。

 激戦を乗り越えて一カ月、船は穏やかに地球をまわっている。

 マガハラの破壊から大きな事件もなく、今もまた、ブリッジでは弛緩した空気が流れている。


 キャプテンシートに座るリダは、休憩に入ると手元のコンソールから一つの映像を再生しようとした。

 それを横から見ていた副長が、リラックスした様子で口を出した。


「艦長、またその映像ですか?」

「そんなに繰り返しているかな?」

「そりゃもう、休憩のたびに再生してますから」

「ははは」


 リダは笑いながら映像の再生スイッチを押した。

 再生された映像は、下から陽光の吹き上がる岸壁の下。

 空から降り注ぐ雨水が滝のようになり、風にあおられて大地の内側へと流れていく。

 下には地面はない。本来は見上げる筈の空と太陽が逆転している世界――ワンドガルドの世界の裏側であった。


 ――いつか、ユートが雨の日に撮影した映像――

 ――シーナが様々な情報のついでに、地球圏へと残した映像だった。


「こう、宇宙勤めだと、地球の雄大な自然と言うものがどうしても恋しくなるものでね」

「いや、地球じゃないですよ」

「ははは、そうだったな」


 そう、映像に記録されているのは、杖が突き刺さる平面の大地。

 大自然が生み出した景色であることは間違いないが、それは地球のものではない。別の宇宙に存在する、異なる文明をもった世界の景色であった。


「根源を同じとする、別の方向へと拡張していった世界。異世界が本当にあるなんて……」


 口に出してみても、いまだに信じられない現象である。

 だが、実際に世界を越えて旅をした少年が居た。

 様々な偶然と幸運、そして、本人たちの力によって、二度世界は繋がり、その証拠は確かに残っている。


「いつか、我々も手が届く時が来るだろう。

 この老人が生きている間は難しいが、君たちの世代であれば、あるいは」

「でも、偶然に今だけ繋がっただけですよ」


 リダは首を振った。


「偶然でも、だ。一度でも現象が確認できたのなら、状況から情報を集めて再現できるように実験を続ける。

 そうして失敗して、何が足りなかったのかを考え、繰り返していく。人類の進歩なんてものは、いつも同じだ」


 その言葉に、ブリッジの皆は黙り、思い思いに思想にふける。

 本当に可能なのか? 実証出来るのだろうか? そう不安に感じる者もいた――だが――


「そうですね」


 けっして、否定することはなかった。


「少年、君が行った偉業は、コロニー落としを止めただけではない。異なる二つの世界が繋がるきっかけを作ったのかもしれないのだよ」


 その言葉に、異を唱えるものはいない。


 ――あれから、様々な人が動き出した。

 ユートが地球にもたらした情報は少年の目線で記された情報も多く、その多くが血の通った感覚を含めて記されており、幻と切り捨てることは誰にも出来なかった。

 ウツロブネが複数建造されていたのであれば、地球圏にその痕跡があるのではないか? そう考えて極東地域に飛ぶものもいれば、『ロズウェル事件は本当だったのではないか、と北米大陸へと調査に向かった者もいた。彼らが結果を出すのは先であろうが、少なくとも全てが無駄になることは無いだろう。

 そして、なにより――魔法である――

 今まで原因不明とされていた現象のいくつかは、マナによる物質化で解決出来るのではないかと研究が既に始まっている。


 世界はまた、動き出している。

 いつの日か、事件の情報が表に出た時――少年はまた、大きな痕跡を地球に残すであろう。


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