幕間 22-12.5
マガハラを望む宙域――終式ウツロブネ待機宙域。
開かれた次元の断裂を支えていた赤龍――ロゼルロンの口が開かれる。
黄金の背ビレが赤く発色すると、世界に低い唸り声のようなものが響き渡る。
それは、周辺に展開していたエクステンションマッスルや戦艦でも観測が出来た。
巡宙空母フラット1のブリッジは未知の現象に困惑をする。現象としての振動は観測出来るものの、具体的に何が起こって居るかは分からない。
艦長席のリダは、浮足立つスタッフを見ながら一つの推測をする。
――もしや、我々が知らなくても、彼等なら――
「すまないが、ユートたちの船……ウツロブネだったかな。通信を繋いでくれ」
艦長席のリダはすぐさま異世界からの帰還者に助言を求めた。
数分の後、通信は繋がる。応答したのはシーナであった。
『接続完了しました』
AIからの応答があった。まったく驚いていない様を見ると、リダは自分の判断が間違っていないことを確信した。
「単刀直入に聞こう、何が起こっているのかね」
『最初に専門用語を用いた説明をします。おそらく現段階での理解は難しいと思うので、『そういう物』として流してください。
マナと元素を物質世界にエーテル化して顕現させています』
前置き通りの説明に、リダは思わず苦笑する。
「まるで意味が分からないのだが」
『『魔法』です』
そのAIらしからぬ言葉に、リダは目を見開いた。
「魔法?」
『魔法の元があって、それを実行する力があり。そして、それを観測できます』
◆◆◆
ロゼルロンは大きく口を開き、体内のマナを口部に集中させる。
龍が持つ膨大な量のマナが一気に物質世界へ出現する。その余波はエーテル化の途中でも世界へと干渉し、世界を震わせている。
マグマ――それを越えた熱量。
深紅のマナはエーテル化すると小型の太陽の如く輝きを放つ。仮に地上で顕現しようものなら、周辺一帯が既に熱で焼けるか溶けるかしていたであろう。
龍の眼がマガハラを捉える。
既に攻撃の射線上からは味方は退避済み。アンカーに引っ張られた機械龍もまた、その身を強制的に移動させられた。
――もはや、懸念はない――
龍の口から太陽の如く火球が放たれる。一瞬のうちに加速をすると、誰も反応出来ない速度でマガハラへと突き刺さった。
着弾からの変化も一瞬であった。
火球はマガハラの内部で爆発をすると、瞬く間に巨大構造物を粉々に消し飛ばす。
爆心地に近い中央部分は消す済みも残らない。僅かに外周部の破片が残るが、それも溶けて元の形は留めていない。
ユートが、リダが、エクステンションマッスルのパイロットたちがその迫力に茫然としていた。
――そして、それは機械龍も同じであった――
失った筈の首の先、龍の顔が歪んでいるように見えた。
「さて、少しは気が晴れたかのう、フロラフール」
その亡骸を利用された友の名を呟く。
「そうは言わんか」
そして、自嘲するように笑った。
寂しげで、ただ空虚であった。
「さあ、次は任せたぞ、ユート」
残る敵は機械龍タエナリウム。
遥か遠方、少年は最後の障害と対峙していた。




