22-12
マガハラの外壁に穿たれた穴から光が飛び出す。
推進剤の光を吹き散らしながら飛び出したのはエールが操るファイターユニット。機体の上部で屈んでいたエクステンションマッスルは立ち上がり、再び宇宙へと飛翔した。
ユートはファルコンを旋回させ、徐々にマガハラと距離を取る。モニター越しにマガハラを確認すると、ちょうどタエナリウムが外へと飛び出したところであった。
(さて、どうする)
ファルコンの左腕のシールドを構え、まずは状況を観察する。
タエナリウムは全身を露わにしつつも、マガハラの周辺に留まっていた。
周辺で戦闘を行っていたエクステンションマッスルが異形の存在に気がついた。
――おい、あいつは――
――それよりも指示があります。ここから離れましょう――
三機一組の小隊がお互いに確認を取ると、慎重に距離を取る。
それを追いかけるように翼が分離したデバイスが追撃する。
「ちっ!」
即座にユートはファルコンのスラスターを起動させると、わざとタエナリウムの視界に入るように動く。すると、機械龍は標的をユートにかえた。
飛翔するデバイスがユートのファルコンへと向かう。ユートはシールドを構えたまま、回避行動を取る。
(まずいな、流石にこれ以上は離れてくれないか)
タエナリウムはマガハラを守るように佇んでいる。
自分が盾になると――そう、理解をしている動きであった。
「ロゼルロンの射線には?」
『被っています! マガハラを守るように動いているようです』
推測の裏付けが取れるとともに、ユートは考え込む。
(さすがに最後の一線は越えてくれないか。となると……)
動かないのなら――ならば、動かしてしまえばいい。
「何かしらの方法で強制的にタエナリウムを動かす」
『で、その方法は?』
「ここまで来たのなら、直接動かす!」
既にマガハラの外に出ている。今なら干渉する手段はいくらでもあった。
ユートはシールドでデバイスを弾き飛ばすと、タエナリウムへと向かおうとする――だが、それよりも早く、赤い光が戦場を駆けて行った。
『それなら任せて』
「クレオ?」
光の主はクレオであった。
赤い塗装が施された装備をしたファイターユニットを駆り、一気にマガハラの周辺へと飛び込んでくる。
『この、新装備のアサルトアンカーなら……っ』
タエナリウムに接近すると、ファイターユニットからアンカーが射出される。
矢――と言うよりは、突撃槍を思わせる鋭い衝角が射出されると、タエナリウムの脚を貫いた。
射出されたアンカーの先からリキッドメタルが噴き出して物理的に固定される。その状態で、クレオは旋回。アンカーごとタエナリウムをマガハラから話すために飛翔する。
奇襲からの一撃。回避できずに被弾し、ファイターユニットの推力で徐々に強制的に動かされる。
さしもの機械龍も焦ったのか、突如通信をおくってきた。
『コロニーの新装備ですか』
『そうだよ!』
『それでも、エクステンションマッスル単独では!』
いくら推力が上でも、タエナリウムと一機のエクステンションマッスルと宇宙戦闘機では質量が違い過ぎる。タエナリウムはアンカーを掴むと、無理やり引き戻そうとする。
巨体が徐々に戻っていく。だが――
『おっとそうはいかないぜ!』
『露払いだけで終わるかと思ってたぞ』
『龍退治なんて、もう一生体験できないでしょ』
周辺からファアルコン――ユートの仲間たちが集まってくる。
クレオの機体を支えると、それぞれの機体の推進装置を全開にしてブースターになる。
タエナリウムの巨体が再び動いた。今度は引き戻せない。
タエナリウムは翼を全て分解すると、攻撃デバイスとしてクレオ機に向かわせる――
だが、それも防がれる。
ロケット砲とミサイルの嵐がその行く手を遮る。パトラの機体が尽くを撃墜した。
『クレオたちの邪魔はさせない!』
仲間たちに合流するためにスラスターを噴かせながら、ユートはそれを見ていた。
「突撃用のアンカーに、重武装形態」
『ユートがあの日、コロニー突撃するうえで欲しかった装備でしょう。
あれから、開発したのでしょう。同じことが起こった時に、繰り返さないために』
アサルトアンカーも、重武装パックもユートが消えた日から本格的に開発されたものである。
――もしあの時、この装備があったら――
そう、あの事件を見ていた人々は感じていたのだ。
その成果はあった。
今、巨大な龍を要塞から引きはがす小人たちの力になっているのだから。
巨体が動く。そして、遥か遠く――赤龍の眼が機を悟る。
「待ちわびたぞ」




