22-11
ファルコンを乗せたファイターユニットがマガハラの回廊を飛ぶ。背後からは機械龍が迫る。龍は巨体を無理矢理動かし、時には壁に接触しながら荒々しくユートたちを追いかけていた。
時折タエナリウムからビームによる攻撃は飛んでくるが、お互いに高速での移動中ではロクに狙いも定まらず、ファイターユニットに掠ることもなかった。
機体をエールに任せ、そして攻撃も激しくない。
ユートにとっては、休息とまでは言えなくとも、息をつける時間になっていた。
(エネルギーの補充の完了、各部のダメージ状態チェック……あとは)
ユートはコックピットでファルコンのチェックを終わらせると、サブモニターを確認する。
タエナリウムは未だにユートを追いかけて来ている。
「エール、相手が見失わない程度に速度は落とせる?」
『誘導が目的でしょうか』
「ああ、その通り」
『わかりました』
エールに誘導のための操縦を任せると、ユートはヘルメットを取る。
深く息を吸って、サブモニターの機械龍を見た。
(さて、どうやってあいつに対処するか)
首を失った龍は未だに健在。攻撃能力が多少落ちた程度である。
(理想論を言うのならば、ライカたちを救出したうえでタエナリウムを破壊する)
人質をとられ、その所在も敵の体内にあると言う事しか分からない。
大火力での一撃ではどうしても中の人間の安全が問題になる。
(どうすればいいか、一つ一つ考えるんだ)
まず優先したいのは人質の救出。
救出するのにまず必要になるのは何か――それは、何処にいるか。
(そどこにいる……いや、そもそも、あいつってどういう構造になってるんだ?)
ユートはすぐさまシーナに確認をする。
「シーナ、四式ウツロブネが機械龍になった時の映像はある?」
『録画していたものがあります』
「タブレットに送ってもらっていい?」
『了解しました』
すぐにコックピット内に置いてあるタブレットを手に取る。
映像を確認する――
宇宙空間で突如変形を始めるウツロブネ。円盤の中央を残して外壁が歪み、球体となりそこから四肢に首とスバ差が生える。
(……船だったものが変形する。溶けると言うよりは、各部の装甲が分かれてる融合して、無理やり龍の形になってる)
おおよそ、想定されていた変形とは思わなかった。
各部の機構が想定された動きで変わるのではなく、『龍と言う形』に無理矢理当てはめるように装甲が集まっていく。
(巨大な『何か』が機械の形を借りてるだけみたいだ)
機械の腕は動き、口や胴体の各部から光線を出し、攻撃する。ウツロブネとしての機能と言うよりは、化け物が機械の皮を被っているようにも見える。
(待てよ。攻撃とかの動きってどうしてるんだ? 火器じゃなくて内部から光線を出してたけど)
ユートは交戦時の動きを考える。
宇宙空間での移動はエーテルによる推進。動きもそれに類推する。そして、エーテルによる光線は――装甲の下から放たれている。
(待てよ……装甲がスライドするってことは……板を組み合わせたようになってるのか……だとしたら)
そこで、エールから通信が入った。
『マスター、もう少しでマガハラを抜けます』
ユートも一つの仮説にいたり、思考を急速に戦闘へと戻す。
「タエナリウムは?」
『まだ追いかけてきています』
タエナリウムは逃さないと言わんばかりにしつこく追いすがってきている。
このまま、と言う仮説を考えたうえで、ユートは次の行動へとうつる。
「わかった、なら……ロゼルロン!」
返事は即座に脳内に返ってきた。
「聞こえているぞ」
「このままタエナリウムが俺たちを追いかけてくるのなら、そのままロゼルロンの射線外に誘導する」
「そうなったら攻撃じゃな」
あくまでタエナリウムの誘導が成功したら、ではあるが、即座にロゼルロンの攻撃でマガハラを破壊する。
ロゼルロンも、わかったと厳かに応じた。
「シーナは宙域の友軍機に予想射線を共有して」
『既に準備しています』
タブレットに映像が送信されてくる。マガハラ周辺の宙域図と、ロゼルロンの攻撃で予想される射線が簡易的に表示されていた。
「助かる」
行動の早いシーナに感謝を告げると、ユートは再びヘルメットを装着した。
モニターに表示される景色から、鉄の色が途切れる。
目の前に広がるのは宇宙。交戦する敵と味方の機体たち。
そして、背部には――ユートと同じようにマガハラを飛び出したタエナリウムの姿があった。




