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「1つ私たちについて教えてやろう」

赤の神は乗り移る際の能力について説明した。相性が良い人間ほど器とのなじみがいいこと、条件を満たすことで相手の体を器として乗っ取ることができること、急激な乗っ取りはその代償に器が長くはもたないことを。そして赤の神は冷静な口調でアマンダに告げた。赤の神が告げたその言葉にアマンダは身を震わせ、赤の神が手を離すと同時に呆然とその場に崩れ落ちた。

「この狼はもう間もなく息絶える。だがそれは私の能力ではなくその身の運命ゆえだ。そなたも知っていたことであろう。この狼の状況には」

ウォルフは狼だ。その寿命は人間とは異なる。きっとアマンダが成人を迎えるかその前後にウォルフの寿命も尽きてしまう。アマンダは現在17歳。成人まであと数日もない。

「狼とは忠実で…そしてなんとあわれな生き物であろうか。自己満足のためにそばにいさせようとする人間に自分の命を削ってわざわざ付き従うとは」

赤の神は芝居がかった様子で言葉を紡いだ。そして項垂れるアマンダへとその魔の手は伸ばされていた。



『私は何をしていたんでしょうか』

ウォルフは真っ白な空間にいた。どこまでも白いその空間の中にウォルフは1人佇んでいた。

『ここは一体…』

ウォルフはあたりを見渡した。どこまでも真っ白で広い世界。誰もいないその状況は異様と言えるものだが、不思議と恐怖感はなかった。その時、ふと見覚えのある色が目の前を横切った。

『あれは…アマンダ様?そうだ…私は…』


「ちっちゃいわんわん」


『!』

気づけば白い空間はなくなり、ウォルフは薄暗い路地裏に立っていた。目の前には薄汚く小さい物体を見つめる小さな少女が映っている。

「きったねーな」

『カルラ様!?』

後から聞こえた声に振り向けば、そこに現れたのは全身を黒に染めた自由気ままな魔女、亡くなったはずのカルラであった。

『カルラさ…なっ!』

カルラはまるでウォルフに気づいていなかった。そしてウォルフの体をすり抜けアマンダへと近づいた。

『これは…』

ウォルフは自分の手のひらを見つめた。その手は薄く透けており、その先の景色が見えている。

「まあ、きたねーはきたねーけど…立派になりそうじゃねえか」

ウォルフはその言葉を聞き確信した。これはウォルフが初めてアマンダと出会ったときの記憶だ。


場面は移り変わり、時間帯は夜に変わっていた。目の前にはベッドに横たわるカルラとそのすぐそばにアドルフがいた。この景色はウォルフの記憶にはないものだった。

「あなたは何を考えているのですか!ウォルフを人間にするなどと!」

アドルフは見たことのない剣幕でカルラへと迫っていた。だがカルラはそんなアドルフに構わず飄々としている。

「だけどあのままじゃあいつは人間たちに縛られたままだった」

「だとしてももっと他にやり方があったのではないですか?倒れるまで魔力を消費して…体にも負担がかかっているではないですか」

「時間ももうなかったし、私はこれが最善だったと考えたんだ」

ウォルフは自分が人間にされたのはカルラの気まぐれだと思っていた。カルラにもそう説明されていたから。だがどうやら違ったらしい。2人の会話からわかったことはウォルフには従属魔法がかかっておりその魔法がウォルフの体を蝕んでいたこと、そして従属魔法をかけた人間以外がそれを解除しようとした場合、ウォルフに並々ならぬ負担がかかり、場合によっては耐えられない可能性があったことだった。カルラはどうすべきか悩み、最終的に魔法薬を作りウォルフに飲ませた。肉体を狼という獣型から人間へと変化させる際に体の状態をリセットさせることで従属魔法を解いたのだった。

「…まあ、仕方ありませんね」

アドルフはため息をつきつつもそっとカルラの額に手を置いた。

「ウォルフのことは責任をもって私たちが育てなければなりませんよ。この世界で生きていくために必要なことを教えなければ」

「ああ、それは十分わかってる。あいつはもう私たちの家族だ。大切にする」

カルラのその言葉にアドルフはにこやかに笑った。

「そうですね、彼はもう私たちの家族です。しかし、そんな言葉をあなたから聞けるなんて…出会ったころから随分と変わりましたね。カルラ」

「誰のせいだと思ってんだ」

そこで場面は変化した。ウォルフはまた白い空間に戻っていた。


『まさかそんな理由があったなんて…』

確かにウォルフは拾われてからまもなくは高熱とだるさによってまともに動けなかった。だが人間になってからその感覚はすっかり忘れていた。

『それに…私のことを家族だと思ってくれていたとは』

愛情というものを感じないわけではなかったが、ウォルフはこの家族といてもよいものかと思い悩むときもあった。アマンダが懐き、自分を必要としているからここにいるのではないかと、アマンダがいなければ自分などいらない存在となるのではないかと、アマンダに依存し、彼らに対して素直になれない部分も多かった。

『もう少し素直にしていれば良かったですかね』

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