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アマンダに中へ案内されたカウザはみんなが集まる部屋で自分が覚えている限りのことを話した。

「そんなことがあったんですか…」

「気づけばすでにその魔女は赤の神を封印していて、父はまるで別人のようになっていた」


カウザが目を覚ましたとき、父親はうつろな表情をした人形となっていた。

「赤の神が移った人間はその意志を乗っ取られた時点で自分の意思がなくなるという。そしてその時間が長ければ長いほど、赤の神が去った後も意思が戻ってくることは難しくなる」

魔女は呆然とするカウザにそう説明した。厳しいことばかり言う父親だったが、数年は一緒にいた人間だ。それがこのような姿になってしまい、カウザはやるせない気持ちになった。

「赤の神はなぜこのようなことをするのでしょうか…彼はなぜ父を狙ったのでしょうか」

「赤の神の目的は人間を滅ぼすことだ。お前の父親はあいつらと相性も良く、地位も役職もあいつらにとって魅力的に映ったのだろう。もっとも、赤の神とは最初はそのような目的というものも持たない存在だったはずなのだが」

魔女はカウザに赤の神のことを教えてくれた。なぜ魔女が自分を助けてくれたのか、なぜそのようなことを知っているのか、なぜカウザにそのようなことを教えてくれるのか、疑問に思うことは尽きなかったが、魔女が話し始めた内容は衝撃的でカウザはその話をただ聞くだけしかなかった。


赤の神の原点は太陽の神によって生まれたただの魔力を持った石だった。太陽の神は月の神がいることで心を安定させ力を制御していた。だから月の神が姿を消した日、太陽の神の魔力は暴発し、人々に混乱を招いた。その暴発自体は月の神が現れたことにより収束したものの、このままではいけないと月の神はあえてその姿を隠し、太陽の神の力の制御を促すようになった。そして太陽の神の魔力が暴発した際、魔力をもった赤い石が生まれた。その石は漠然とした心を持っていた。ただ、その時はまだ何も知らない純粋な塊だった。ある時、1人の人間がその石を拾った。その人間は他人を蔑み、見下すような負の感情をもった人間だった。赤い石を持った人間は魔法使いのように魔法を使うことができた。赤い石はその人間に利用され、やがてその人間の意思を自分の意思だと思うようになった。その人間はやがて死んだが、石は残った。赤い石は誰かに拾われるたびに人々の心の中に入り込み、負の感情を強めていった。赤い石はやがて人々の感情を制御し、支配するようになった。支配された人間は赤の神と呼ばれ、人々から忌避された。そして赤の神たちは人間には害悪だとして人や魔法使いたちに淘汰されるようになった。そして戦争が起こった。


「赤の神は人間によって作り出された存在であるのに、なぜそれを淘汰しようとするのか。人間たちの中にある感情をなぜ否定しようとするのか。負の感情という存在は必ずしも悪であるというのか。奴らはそう言う考えに捕らわれていったらしい。赤の神のすべてがその思考で人を滅ぼそうとしているわけではないが、彼らの大きな目標はおおよそそのようなものだ」

そこで魔女は言葉を切りまるで独り言のようにつぶやいた。

「人間の中にも確かにたちの悪いやつはいる。最初にあいつらを拾ったやつなんかがまさにそうだろう。陰と陽、どちらもあるからこそ人間は面白くなる。どちらかに偏ってしまった世界など面白味もなくみにくいものだ」

カウザにはその声が小さく、何を言っているのか分からなかったが、その表情はどこか寂しそうに見えた。


「魔女は全てを知っているようだった。だけどこれ以上は関与できないと、俺に最後の赤の神の存在を教えて去ってしまった。だが、俺にはどうしても魔女が言っていた方が赤の神だという確証が持てない」

カウザの話を静かに聞いていた面々はカウザにかけられる言葉が見つからなかった。それはカウザから聞いた赤の神の考え方が衝撃的だったからか、もしくはこれから対峙しなければならない人物が強大過ぎるからであるか。

「そういえば…」

カウザはふと思い出し、懐から白い箱と手のひらサイズの丸い塊を取り出した。最後の最後、魔女がカウザの元を去る際に、魔法屋をやっている黒の魔女へと渡すように言われたのだ。彼のことだからきっとカウザがアマンダとつながりがあるということが分かっていたのだろう。カウザはアマンダへとその二つの道具を渡すと魔女からの伝言を言い渡した。

「確か魔女は『鍵は針時計の4本目の針の中に』と言っていた。俺には意味が分からなかったが、貴女ならば分かると言っていたが…」

その言葉を聞いた瞬間、アマンダは目を見開き、そして安堵の息をはいた。この家に針時計など存在しない。だが、鍵と言われれば1つだけ思い浮かぶものがある。そして4本目の針。

「わかりました。伝えてくださってありがとうございます」

どうやら自分たちの師匠は元気でやっているようだ。近くまで来たならここにもよってほしいものだが、彼の性格上なかなか顔は見せてくれないだろう。

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