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「納得いかねえ」

アマンダ達とヒカリが話をしていると、入り口付近に立っていたカウザ・アカルディが声を上げた。

「ヒカリから協力してほしいって言われたからついてきてみれば…こんな魔女の店に連れてこられて。ヒカリ…お前、騙されてんじゃねえのか」

カウザは魔女が嫌いだ。なぜならカウザの母は魔女が原因で命を落としたと父から聞かされていたから。魔女はあざとく人をたぶらかし、カウザから大切な人を奪っていく。

「嫌なら帰っていただいて結構です。もともとこちらもあなたを呼ぼうと思っていたわけではありませんから」

ウォルフは初めて会った時からカウザが気に入らなかった。魔女というだけで人を判断し、軽蔑するような人間、碌なやつではない。

「カウザさん落ち着いて」

「ウォルフもそんな喧嘩腰にならないで」

一触即発の雰囲気の中、ヒカリとアマンダが間に入り何とか話し合いを始めることができた。


「それでウォルフさん。協力してほしいことって一体なんですか?」

アマンダはお店を閉め、2階へとみんなを招待した。アマンダの魔法屋に客間はないので、少々狭いがリビングに椅子を並べ、話し合いをすることにした。

「そうですね…まず、これにサインをもらってからにしましょう」

「?それは何ですか?」

ウォルフが取り出したのは『しょけい約書』だった。『しょけい約書』はただの紙のように見えるが、魔法がかかっている特殊な紙で、交渉事等の際によく使われる。『しょけい約書』には名前、契約内容、処刑内容の3つの欄があり、名前には『しょけい約書』を使用する人の名前を、契約内容には条件を、処刑内容にはその条件が達成されなかった際の罰を書く。もし条件が守られなかった場合、条件を破った者にこの罰がくだされる。ウォルフが持っているものには、契約内容としてここでの話を口外しないこと、処刑内容としては文様の剥奪と記載されていた。つまり、ここでの話を口外した者は今後一生、魔法を使うことができなくなるということだ。

「なんでそんな物騒なものにサインしなきゃならないんだ」

「これからする話はそのくらい重要な話です。これにサインできないようでは協力などできようもありません」

「分かった。私はサインする」

「ヒカリ!?」

最初に声を上げたのは聖女だった。

「ならば私もサインをしよう。何より国民が困っているのだ。手助けしないわけにはいかないだろう」

「ソルさま!?」

次に声を上げたのは第1王子だった。

「僕もサインするよ~」

「レーブまで!?」

次に声を上げたのは魔術師団長の息子だった。聞けば彼はアマンダの魔法具に何やら感銘を受けたらしい。

「いや~、木と金属性の複合魔法なんて普通の人間にはできないよ!魔力消費量が多すぎて不発に終わっちゃうし。しかも、さっき僕が見てた魔法具って3属性の複合魔法だろ!?ほんとありえない!最高過ぎる!ただえさえ魔力量が少ないはずの魔女なのに!こんな偉大な魔女に会えるなんて光栄だよ!」

「レーブ君がこんなにしっかり話してるところ、私初めて見た」

「レーブは重度の魔法オタクなんだよ。普段は変な口調だけど、魔法のことになると止めてもずっと語ってる」

「まあ、そこがレーブの面白いところだよね」

アマンダはあのテンションどこかで見たことあるなと思った。

「あとの二人はどうされますか」

ウォルフは聞いた。まだサインに了承していないのはサジェスとカウザだ。サジェスは少し考えこんだ後、アマンダに聞いた。

「このお店の魔法具は全てあなたが作っていらっしゃるのですか?」

アマンダは頷いた。

「ええそうです。全ての魔法具の考案をしたわけではありませんが、製作は私が行っています」

「…わかりました。いいでしょう。私もサインします。ただし、この問題が解決した後にあなたに協力してもらいたいことがあります」

サジェスは少し考えた後、頷いた。サジェスには思案している魔法具があるらしい。だが彼の魔力量ではその魔法具を作ることができず思い悩んでいた。そこにアマンダのような魔力量豊富な人間が現れたため、彼女に協力する代わりに魔法具つくりに協力してもらいたいということだった。

「そういうことでしたら私も興味がありますし、協力いたしましょう」

「…それで、あなたはどうするのですか」

ウォルフはカウザに聞いた。その声は冷たく、視線も冷たい。

「俺は魔女の手伝いなんて…」

「先ほどから魔女魔女と、あなたはそれしか言えないのですか?あなたが魔女に対してどのような思いを抱えているかは知りませんが、決めつけで相手を見るのはどうかと思います。自分の目で見る前から他人を判断するなんて滑稽ですね。とても不愉快です」

「ウォルフちょっと言いすぎ」

カウザは俯いてしまった。確かに、自分はアマンダのことなど何も知らない。知っているのは、この魔法屋の店主で、魔力量が多く、ウォルフというヒカリが協力したいと思っているような人物と仲がいいということくらいだ。

「カウザ君。ここがいいチャンスなんじゃない?自分を変えたいんでしょ?」

カウザは自分が嫌いだった。剣に対して天賦の才を持っている兄のような父親に期待される人間でもなく、弟のように多才で周りから慕われる人間でもない。カウザは中途半端な人間だった。カウザは段々と人を信用できなくなり、人と向き合って話すことをやめるようになった。どうせ自分は誰からも期待などされていない。そして自分を守るために周りにも攻撃的に接した。そんな自分が嫌いでそのことをカウザはヒカリに相談していた。

「もっと楽に考えよう。誰かのために行動すればいつかは自分に返ってくる。何かを変えたいならまず行動して見なきゃ」

「…わかった。俺も協力する」

カウザは頷いた。自分の為ではなく他人のために行動する。そのことをカウザは初めて実践してみようと思うのだった。

「別にいやいや協力しなくてもいいのですよ。あなたの協力が絶対必要というわけでもないですし…」

「ウォルフ、しつこいよ」

こうして『しょ契約』には全員のサインが得られた。

「ありがとうございます。では次に、皆さんにはとある人物のことをお聞きしたいと思います」

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