三章 12.魔石で出来た武器
俺は走り、リリフィナはマジカロイドで大地を駆け、共に区長を救いに向かう。
「で、聞きたいことって何だよ?」
「……何のこと?」
「いや何のことって、さっき言ってたじゃねーか、聞きたいことがあるって」
「……ああ、あれね」
移動中暇なので、リリフィナが聞きたいことがあると言っていたことを思い出し尋ねてみたのだが、どうも反応が悪い。
まさかそこまで気になることでは無かったのだろうか。
「何だよ、大して興味無かったのか?」
「……そういう訳じゃない。でもそれは後でいい」
「ふーん、まぁ別にいつでもいいけど」
先程から煮え切らない返事ばかりだが、リリフィナは俺に一体何を聞きたかったのか。まぁ本人が後でいいと言うのなら、聞きたくなった時に聞いてくればいいが。
「そういや俺、リリフィナの戦闘スタイル知らないな。これから区長救う際には戦うことになるだろうし、連携が出来なきゃ話にならないから教えてくれるか?」
「……私の武器はこれ、バーロック」
俺の質問にリリフィナは答えながら、一丁の魔道兵器を背中から引き抜く。それは折りたたみ式の大型魔道兵器で、連射性能に優れた中距離用魔道兵器をデカくしたような見た目をしていた。
基本の型とはだいぶ離れた造形をしている為、恐らくは専用魔道兵器だろう。
「強そうだな、性能はどんな感じなんだ?」
「……中距離用魔道兵器ブースピッドの連射性に遠距離用魔道兵器ロングラーの威力を加えた最強兵器」
「最強って……まぁその性能が事実なら間違いでは無いかもだけど」
「……力は本物。でも反動が大き過ぎるから、私以外に扱える人間は居ないけど」
連射性と威力を限界まで上げた魔道兵器ってところか。確かにそれだけ無茶なチューニングを施せば反動が大きくなってまともに照準も合わせられなくなるだろう。
そんな暴れ馬を使いこなしているとは、見かけによらず案外馬鹿力なんだな。
「……今、私のこと馬鹿にしたでしょ」
「なっ、し、してねーよ!」
「……ふーん」
リリフィナのことを馬鹿力だと思ったことが速攻でバレてしまった。何でこうも皆俺の考えを簡単に読んでしまうのだろうか。
今度暇な時にポーカーフェイスの練習でもしようかな。
「……リーシャンの戦い方は?」
「俺は基本近接戦だけどこの魔道兵器も使うぜ。リリフィナも一回見たことあんだろ?」
「……ああ、あのセルフもどきね」
「もどき言うな!」
俺の戦闘スタイルは、以前禁止区域で彼女を助けた際に既に披露している。あの頃から俺の戦い方は変わっていないし、そこまで細かく説明する必要は無い。
リリフィナは俺の魔道兵器、トイブラスターの威力が憎たらしいのか、凄い目付きで睨んできているが。彼女やたらプライド高そうだから、強い武器が気に入らないのかもしれない。
『クウー(そろそろ近い気がする)』
「おっ、もう追いつくか」
リリフィナと話しながら移動していると、クウが敵の位置を察知してくれた。融合状態だとクウの鼻の精度は落ちるが、それでも察知出来る距離まで敵に追いついて来たらしい。
ここからは見つからないように、気配を殺して慎重に近づいていく。
「リリフィナ、敵が近いから静かに行くぞ。そのマジカロイドはうるさいからここに置いてけ」
「……分かった」
リリフィナの乗っていたマジカロイドは確かに速いが、鳴き声や走行音がやや目立つ。
救出任務とは相性が悪いので、ここから先は降りてもらうことにした。
「クウ、敵との距離はどのくらいだ?」
『クアー(まだ離れてるけど、向こうは止まってるみたいだよ)』
「そりゃ有難いな。動いてないならあとは追いつくだけだ」
もうクウの野生の勘で探知出来る距離まで詰め寄れているらしく、敵の位置や状態も把握出来始めた。
そうしてゆっくりと気配のする場所へと足音を立てずに近づいていき、遂に敵の居場所を目視できる距離までやって来る。
「……作戦はあるの?」
「そうだな、バレずに後ろから区長をかっさらえれば一番都合がいいんだが、あの感じじゃ無理そうだ」
見た限りでは、敵は区長が居そうな荷車を囲む様に陣を形成して外敵を見張っている。荷車の中までは見ることは出来ないが、あの中に区長が居るのは間違いない。
ただ、あれではどの方向から忍び寄っても、荷車に辿り着く前に必ず捕捉されてしまう。
「俺が最初に突っ込んで隙を作るから、その間にリリフィナは荷車に乗り込んで区長を救出してくれ」
「……リーシャン一人であの数を相手にするつもり?」
「あの数なら問題ねーよ。見た感じヤバそうな雰囲気の敵もいなさそうだしな」
作戦はシンプルに俺が囮となって、その隙にリリフィナが区長を救出するというものである。俺のリスクが大きいことをリリフィナは懸念しているようだがそこは心配無い。
ただの犯罪者に負ける程ヤワな鍛え方はしていないからな。
「にしてもあいつら、ほんとに大したこと無さそうだな。これじゃあの魔物騒動と関連があるようには思えない。ただの火事場荒らしだったのか……?」
問題があるとすれば、敵があまりにも弱過ぎることだ。まだ戦っていないから分からないが、それでも奴らからは明らかに小物臭しかして来ない。
あれだけの魔物騒動を起こした敵なら、もっと凄まじいオーラを放っていてもおかしくない筈なんだが、やはり予想が外れたのだろうか。
「まぁもうここまで来たんだから助ける以外に選択肢は無いか。先行くぞリリフィナ、救出は任せる!」
「……任せて」
今更考え始めたって結果は何も変わらない。今は下らない考えを持つのはやめて、救出することに全力を注ぐ。
どの方位から攻めても見つかるのは時間の問題はなので、俺はあえて正面から突撃しつつトイブラスターを放って、先制の攻撃を与えていく。
「ぐあぁっ!」
「どうしだはぁっ!」
「敵襲―!」
「敵は一人だ、囲め囲め!」
誘拐犯二人を仕留めたところで敵に見つかってしまう。後は上手くこいつらを引き付けてその隙にリリフィナに救出してもらおう。
「かかって来な、三下共」
「このガキ、なめるなよ!」
「おらぁっ!」
敵の数は残り七人。そのうちまず二人が剣を持って近接戦に持ち込んで来た。俺の武器が遠距離様なである為、近距離なら勝ち目があると踏んだのだろう。
だが、残念ながら近接戦は俺の専売特許だ。
「よっと、ほいっ!」
「なっ、こいつ速い!」
「それに、強いぞ……」
敵二人の剣を軽く見切った俺は、そのまま拳と足を捩じ込んで一撃でダウンさせる。最近魔剣持ちとの戦闘が多いせいか、剣を持った敵との戦闘はかなり熟練してきていた。
「ん?何だ、この剣……?」
倒れた二人が落とした剣に何気なく目を向けてみると、何とも言い知れぬ違和感を覚えた。
何故かその剣はどちらも煌びやかに輝くクリスタルで形成されていたのだ。透き通る刀身は美しいが、何故クリスタルで出来ているのか。
宝剣とかそう言う値打ち物の類だとしても、それをこんな戦闘で使うのはあまりにも不自然である。
「何でこんな高そうな物を――っ!こ、これ、魔石で形成されてやがる……!」
何気なく敵の持っていた剣を拾い上げた瞬間、全て理解した。この剣は全体が魔石で形成されていた。
魔石をそのまま剣の形に加工して使うとは、何とも変なことを思いつく連中だ。
「このガキ強いな……!」
「囲って攻めるぞ!五人でなら負ける訳ねぇ!」
「ああ!」
ここまで来てようやく俺の強さを理解した敵は、残り五人で俺の周囲に分散してくる。これで敵は上手く引き付けられたから、後はリリフィナが救出するまでの間にとっとと倒し終わろう。
「近接戦じゃ勝ち目はない、遠距離武器でいくぞ!」
「よし、今だ!」
剣では勝てないと判断した敵は、遠距離用武器をそれぞれ投擲してくる。槍、ナイフ、矢、ブーメラン、手斧と多種多様な武器が飛んでくるが、やはりそれらの武器も全て魔石で形成されていた。
「何で全部魔石で出来てんだよ……?」
一体どういうことだ。いくらなんでも魔石で武器を加工するなんてそんな簡単じゃないだろうし、そもそもこれまでこの世界でも見たことが無い。
色も通常の魔石の様な濁った色とは違って、氷のように見事な透明だ。こいつらこれだけの量の魔石を、一体どこから手に入れたといるのだろうか。




