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二章 29.剣舞会開幕!

 ガンマと再会した翌日からは、午前中はマリナの特訓に付き合い午後はガゼル達と一緒に過ごしたり、ガンマから適当な魔物討伐クエストを受けたりして時間を潰して過ごしていた。

 そして数日が経過し、いよいよ剣舞会当日がやって来たのだ。


『さぁー!今年もいよいよこの日がやって参りました!全人類が待ち望んでいた勇者一族による一年に一度の伝統祭典、勇者剣舞会!いよいよ開幕です!』


 剣舞会は世界中の人々が心待ちにしていた世界最大の祭典。当日はアルテラでも大量の露店が並び、会場となる巨大闘技場では司会者が拡声用魔道具を片手に祭りを盛大に盛り上げている。

 こういう雰囲気を肌で感じると、なんだかこっちまでテンションが上がってくるな。


「うぅ……き、緊張してきたよ……」

「ビビるなよセロル、今のお前ならどんな相手でも負けはしないって!」

「う、うんありがとう兄貴。頑張ってくるよ……!」


 現在俺の部隊は、会場入りするセロルに最後の激を飛ばしているところだ。


「落ち着いていけば大丈夫だ」

「頑張ってくださいセロルさん!」

「うん、二人も応援ありがとうね!行ってくるよ!」


 こうして俺達に応援されながら、セロルは剣舞会の会場へ堂々と入って行った。


「よーし、それじゃ俺達も観戦席に移動するか!」

「気が早いな。試合までまだ時間があるのだから、露店は行かなくていいのか?」

「おっとそうだった!さっきから目をつけてた美味そうな奴が色々あったんだ。行くぞクウ!」

「クウー!(沢山食べるぞー!)」


 剣舞会が始まるのは今から約二時間後、時間にはまだまだ余裕があるのだから、今はこの祭りを楽しませてもらおう。

 ずっと美味そうな匂いが漂ってて、いい加減我慢も限界だったんだ。


「はは、楽しそうですね……」

「アカリは剣舞会は今年が初らしいから、ああなるのも仕方ないだろう」

「おいお前ら何してんだ!早くしないと置いてくぞ!」

「分かってる!すぐ行くから余りはしゃぐな!」


 出遅れているガゼルとネネティアに声を掛けると、二人はやれやれといった雰囲気で駆けてくる。全く、そんなちんたらしていて目的のものが売り切れたらどうするつもりなのだろうか。

 さて、試合が始まるまで思う存分祭りを堪能させてもらうぞ。









 ――










 露店で大量の食料を手に入れた俺達は、食べ歩きを続けながら闘技場の観客席に腰を下ろす。試合が始まるまでは、一時間程あるからまだ少し暇だ。


「そういやガゼルは初日から数日は実家に行ってたよな。何か話でもしたのか?」

「別に大した話はしていない。ただ紅業火を見せてきただけだ。魔法は古い技術では無いことを証明する為にな」

「おー、そうだったのか。どんな反応された?」

「……紅業火は俺の実力では無いと言われた」


 ガゼルは先日造った魔道兵器、紅業火一式を見せる為に実家へ帰っていたようだ。だが、身内の反応は思っていたものとは違ったみたいで、少し元気を無くしている。

 確かにガゼルの魔法は魔道兵器で強化されはしたが、それで魔法の技術が上達した訳では無い。だからガゼルの身内の言いたいことも分からなくは無いのだが、それでも少し酷いな。


「魔法を使えるのも、魔道兵器を操ってるのも全てガゼルの力だろ?あんま細かいことは気にすんなよ」

「だが、ガントツの造ったこの紅業火が優秀だというのも一理ある……」

「だったらもっと誇れよ。お前はその優秀な相棒を使いこなせる、唯一の使用者なんだろうが!」


 いい加減なよなよしているガゼルに腹が立って、つい言葉が強くなってしまった。だが、そんなことをいちいち気にしてたって仕方ないだろうが。

 誰だって一人じゃ強く離れない。皆誰かの力を借りて少しずつ成長していくものだ。

 魔道兵器の力を借りたかどうかなど、グダグダくだらないことを考えるのは止めろ。そんなこと言ったら、俺なんか何も残らないただの凡人だからな!


「……ふん、言われるまでもない。俺は俺の信じた道を進むだけだ」

「ったく、やっとらしくなってきたか。借金してる分際で細かいこと気にしてんじゃねーよアホ」

「なっ、借金は関係無いだろうが!」

「まぁまぁ、二人ともその辺で……ほら、そろそろ出場者が闘技場に集まってきましたよ?」


 ガゼルもようやくいつもの調子を取り戻してきたようだ。全く世話のやける隊員だよ。

 そしてそんな話をしているうちに、いよいよ剣舞会が始まろうとしていた。

 ネネティアに指摘されて闘技場に目をやると、結構な数の勇者一族が勢揃いしている。年齢もバラバラで、なんだかこうしていると他人の法事を他所から見てる気分だ。


「そういや剣舞会って実際どんなことをするんだ?ただ出場者同士で斬り合うのか?」

「それは本戦でやることだ。毎年膨大な数の出場者から数を絞る為、予選で多くの勇者一族を振るいにかける」

「予選は毎年内容が変わるから、そこがまた楽しみなんですよね」

「へぇー、まずは人数を減らすのか」


 どうやら剣舞会とは言っても、ただ魔剣で斬り合うほど単純では無いらしい。

 なんだか昔いた世界のオリンピックとかを思い出すな。まぁそっちは四年に一回しか行われないんたが。


『さぁー、ことしも続々と勇者一族の皆様が闘技場に出揃って来ました!おっと……ここでようやく今年の予選内容が届いて来たぞ!』


 闘技場の至る所に設置されている拡声用魔道具が鳴り、司会者の声が響き渡る。どうやら予選内容が判明したらしい。

 さて、どうなるかな。


『それでは発表致します!今年の勇者剣舞会予選は〜〜……なんと、「宝探し合戦」だー!』


 宝探し合戦、字ズラだけでも何となく予想は出来るが、セロルには少しきつい競技になりそうな予感がする。


『ルールは至って簡単!今年の剣舞会会場となっているアルテラの街中を駆け巡り、指定された宝を探すゲームだ!宝にはそれぞれ点数が定められており、より高得点の宝を多く集めた選手が決勝本戦へと駒を進めることが出来る!』


 やはり思った通り、セロルに不利な内容だったか。

 セロルは基本的に短期決戦が得意である為、街中を長時間走り回るのは向いていない。この弱点をどう埋めるかが、セロルが勝ち上がる鍵になるだろう。


「宝探し、セロルさん大丈夫でしょうか……?」

「厳しいだろう、あいつはスタミナを競う競技には向いていない」

「ああ、それに問題はそれだけじゃない」


 恐らくこの競技はただ宝を探すのが目的では無い。

 正式名称は「宝探し合戦」だ。この合戦にどんな意味が隠されているのかは知らないが、もしかしたらこっちの方が難関になる可能性もありうる。


『宝の形状、大きさ等情報は一切不明のままだが、さてさて勇者一族はこの難題をどう乗り切るのか!?』

「それではこれより、勇者剣舞会予選「宝探し合戦」を開始する!」


 ドオォン!


『審判員の合図が鳴り響き、同時に勇者一族は一斉に闘技場の外へ駆け出していく!さぁ、今年も遂に剣舞会の開幕だぁ!』


 審判員の手にしている魔道兵器から白い煙が立ち昇る中、いよいよ剣舞会の幕が上がった。

 宝探しについて情報がほとんどない中、セロルはどう戦うのだろうか。


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