表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/371

二章 4.三度目の居残り掃除

 ガゼルとネネティアの近況報告のお陰で沈んだ空気になったまま、本日の実技演習は始まった。


「今日はこの擬似魔物型マジカロイドのデボーンを相手に、各部隊で部隊連携の訓練を行う。各々先日考えた戦術を頭にイメージしつつチームワークを第一優先として戦闘を開始しろ!」

『デュロロー!』


 セリーダ先生の指示に続くように、デボーンとか言う擬似魔物型のマジカロイドは鳴き声をあげた。

 なんでこうマジカロイドの鳴き声は全体的に気持ち悪いのかね。

 デボーン自体は骨組みでしか構成されていない、完全にコスパ重視の見た目最悪なマジカロイドだ。外見は犬みたいな四足獣で、恐らくは下位魔物のガルファングを模してるのだろう。

 大きさもちょっとでかい大型犬くらいか。


「クウー(変なのー)」

「だな、もう少しマシな鳴き声があったろ」


 クウもあのデボーンの鳴き声はお気に召さなかったようだ。まぁ当然だろうが。


「アカリ、隊長はお前なんだから早く指示を出せ」

「ああそういやそうだったな。よし、それじゃ全員まずは隊列を組むぞ!」


 デボーンの奇妙さに呆れていると、ガゼルに早く指示を出すよう急かされてしまった。他所に目を巡らせてみると、他の部隊もそれぞれデボーンを前にそれぞれ魔道兵器を構え始めている。

 俺達も遅れを取らないように、取り敢えず隊列を組むよう指示を出し、俺達は先日考えた陣形をに並ぶ。


『デュロロー!』

「来るぞ!まずは牽制だ、ネネティア任せた!」

「はい!」


 デボーンは俺達部隊を標的に定めると、奇妙な鳴き声と共に勢いよく襲いかかってくる。

 まずは手始めに狙撃で一発怯ませておこう。


「あ、あれ?弾が、あれ?」

「おいおいネネティアさん?また何か事故ですかー!?」

「弾が詰まってるみたいで……ご、ごめんなさいー」


 残念ながら牽制の狙撃は失敗した。ネネティアの不運は今日も健在だな。

 そしてそんな悠長なことをしている間に、デボーンもかなり至近距離まで接近して来ている。


「ここは俺に任せろ。はあぁ!」


 攻撃出来ないネネティアをフォローするようにガゼルが身を乗り出し、手のひらから真紅の炎を噴射する。

 まだ属性変化しか使えないとはいえこれもれっきとした魔法なので、なかなかの威力があった。


『デュロロ……!』


 デボーンは炎を嫌ってか、一度俺達から距離を取り直す。

 ガゼルの魔法は近ければ威力は高いが、離れると熱が冷めて弱くなってしまう。中衛としては少々物足りない火加減だ。


「突っ込むぞセロル、守りは俺がやる!」

「うん、任せて兄貴!」


 デボーンが体勢を立て直す前に仕留める為、前衛の俺とセロルは距離を詰めるように駆け出す。

 戦術も以前考えた通り俺が守ってセロルが攻めだ。


『デュロロー!』

「おらよっと」


 接近した俺達目掛け、デボーンは骨剥き出しの顔で噛み付いてくる。

 対する俺はセロルに先行して動き、上顎と下顎を掴むことで器用にデボーンの動きを封じた。


「今だ、決めろセロル!」

「せやあぁっ!」


 デボーンを両手で受け止め動きを封じ、セロルに攻撃の隙を与える。魔剣も特訓通り攻撃直前まで出していなかった様なので、魔力の温存も十分のはず。

 これでセロルがデボーンを斬れば俺達の勝利だ。


 ボォン!


「へ?どわぁっ!」

「な、何っ!?」


 だが、残念ながらセロルの攻撃は決まらなかった。何故かセロルが斬る直前で、俺達の足元に長距離狙撃用の魔弾が直撃し、デボーン諸共その場にいた奴は全員吹き飛ばされてしまったのだ。

 こんなことが出来る奴はただ一人――


「痛っ……ネネティア!何してんだ!」

「ご、ごめんなさい、いつでも撃てるようにと構えてたら急に暴発しちゃって……」

「詰まってる魔道兵器を構えるなよ!」

「す、すみません……」


 やはり犯人はネネティアだった。またも彼女の不運が発動したらしく、俺とセロルはその巻き添えを食らってしまった。

 セロルの方は無事だろうか。


「う、うぅ……」

「おいセロル!大丈夫か!?」

「あ、兄貴……僕は平気だよ。ただ、防ぐのに魔力全部使っちゃったから、もう動けない……」

「そ、そうか……」


 セロルも魔力操作で肉体を強化し、上手く攻撃を凌いだらしい。だがその代償で全ての魔力を使ったらしく、もはや気絶寸前だったが。


『デ、デュロロ……!』


 デボーンの方もそれなりにダメージは入ったらしいが、それでもまだまだ動けそうである。

 こいつと戦うにも、まずは部隊を立ち直さなければ。


「ガゼル、セロルが限界だから守ってやってくれ!」

「任せろ」

「ネネティアは取り敢えずその魔道兵器地面に置け!んでお前もセロルの護衛だ!」

「は、はい!」


 とにかくまずは、この事態に陥った元凶である魔道兵器を手放させる。ネネティアには悪いが、これでもう事故が起こることもないだろう。

 結局もう、戦えるのは俺とガゼルしか居なくなってしまったが、二人いればなんとかなる筈だ。

 今は部隊連携の訓練だから、俺が本気を出して瞬殺する訳にはいかないからな。


「クウッ!(来るよアカリ!)」

「おう、じゃあ援護頼むぞガゼル!」

「了解だ」


 体勢を立て直したデボーンは、再びこちらへ向かって駆け出してきていた。これ以上セロル達を襲わせる訳にはいかないので、俺も前へ走って正面からぶつかる。


 と、後ろから温度が上がる気配を察知したので素早く横へ飛ぶと、タイミング良く後ろからガゼルの炎がデボーンに襲いかかった。

 いい攻めだが炎を出す前に何か合図が欲しかったな。俺じゃなかったら巻き添えだぞ。


「サンキューガゼル、ちょっと危なかったけどな」

「アカリならあの程度当たっても平気だろ」

「いや、当たると結構熱いから!」


 入学時の模擬戦で俺はガゼルの炎を手で軽く払っていた為、あいつは炎など当たっても平気だと思っているらしい。

 実はあの時は、熱いの我慢しながら払ってただけなんだが。


「ほぅ、熱いのか……そうか、ふふ……」

「笑ってないでもっと攻撃しろって!」


 何が面白いのか知らないが、唐突にガゼルは静かに笑いだした。意味が分からないけど、取り敢えず今は攻撃に専念してほしいものだ。


「悪いなアカリ、今ので俺の魔力もほとんどカラだ」

「えぇ!?まじかよ、ほんと属性変化はコスパ悪いな……!」


 どうやらガゼルの攻撃が止んだのは、単純に魔力が足りなくなったかららしい。

 魔力の属性変化は詠唱をしてない分指向性が薄れ、余計な魔力も消費してしまうので消費が著しいのだ。

 これでまともに戦えるのは、とうとう俺だけとなってしまった。もはや部隊の意味が無いな。


「くそっ、こうなったらとっととデボーンを倒して終わらせ――」


 デボーンを倒すと宣言しかけたその瞬間、何故か俺の後方から凄まじい爆発が発生した。

 耳鳴りがする程激しい爆発音が響き渡るその原因は、ネネティアの持っていたあの魔道兵器だ。危険だからと地面に置かせていたそれが、何故か爆発して粉々に砕け散っていた。


「おい、ネネティア……」

「あ、あははー、これは予想外ですね……」

「不運だと聞いてはいたが、これほどとは……」

「な、何なの今の音……?」


 幸いうちの部隊は全員魔道兵器から離れた場所に居た為、爆発の被害を受けることは無かった。不幸中の幸いだ。他の部隊にも被害は出ていないみたいだし。

 ともかくこの自体には、ネネティアももう笑うしかない様子である。本当に彼女は超ド級の不運体質だな。


『デュロロー!』

「ちっ、あーもう鬱陶しい!」

『デュ、ロッ……』


 さっきからデュロデュロとさっきからうるさいデボーンを相手に、俺は八つ当たり気味に全力の一撃をお見舞する。

 その結果デボーンの頭部は粉々に粉砕され、あっさりと機能を停止してしまった。これで戦闘訓練は終了だ。


「貴様ら、これは一体どういうことだ……」

「セ、セリーダ先生……!」


 デボーンを破壊した直後、背後からセリーダ先生に声をかけられた。

 声音は非常に穏やかだが、その穏やかさが逆に彼女の怒りの度合いを感じさせる。これは非常にまずい。


「お前達……ただの連携訓練で、よくもここまで訓練場をボロボロにしてくれたな!」

「いや、でもこれは故意にやった訳じゃなく全て事故で――」

「言い訳は無用!アカリの部隊は全員、放課後居残り掃除だ!」

「なっ!ま、またなのか……」


 俺の訴えにもセリーダ先生は一切聞く耳を持たず、流れるままに居残り掃除を言い渡された。

 一体俺は、あと何回居残り掃除をすればいいのか……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ