一章 34.魔道兵器の新たな使い道
セルシー先輩による狙撃の援護も受けつつ、俺達は空へ飛翔して近接戦を繰り広げる。
魔剣が主体のマリナは、果たしてどう対応するつもりなのか。
「アカリ、避けなさい!」
ガイアントを次々と殴り倒していると、下から突然そんなマリナの叫び声画聞こえてきた。
「へ?避けるって――どわっ!」
何事かと思い下へ振り返った瞬間、俺達の鼻先ギリギリをマリナの放った何かが一瞬にして通り過ぎて行った。
もう少し警告が遅れていたら、俺もその何かの餌食になっていただろう。
「おい、危ねーだろ!」
「何言ってるのよ、あなたならあれくらい簡単に避けれるでしょ」
「そういう問題じゃねーよ!」
マリナは俺が避けることも計算に入れて攻撃したとか言ってるが、的は沢山いるのだからもっと余裕のある攻撃をしてほしいものだ。
「てかそもそも、さっきの攻撃は何なんだよ。マリナ魔道兵器も持ってたのか?」
「あー、今のは魔道兵器じゃなくて魔剣の攻撃よ。魔剣の刃は意識して振るうとその方向に飛ばすことが出来るの」
「え、何それめっちゃかっこいいじゃん!」
どうやら先程の攻撃はマリナが魔剣の刃を意図的に飛ばした攻撃らしい。刃を飛ばして遠距離にも対応するとは、この時代の魔剣は中々優秀だな。
それになんと言っても、演出が派手でかっこいい。ここがかなり大きいな。
「そ、そう?ふふん、ならもっと見せてあげるわ!」
俺の感想を受けマリナは機嫌が良くなったのか、楽しそうに魔剣の刃を連続で飛ばしだした。
不意では無くなった為今度はその形状もはっきり目視で確認出来たが、刃はマリナの持つ魔剣から放たれると、三日月型に変化しガイアントを次々と斬り落としている。
実際にはかなり凶悪な攻撃だった。
「私も負けてられないわね!」
「よし、俺達もやるぞクウ!」
『クアッ!(任せて!)』
マリナに負けじと、俺達も更にガイアントを討伐していく。その為地面にはだんだんと魔石の山が形成され始めてきた。
だが、残念ながら俺達がいくらガイアントを仕留めようとも、その数は一向に減る気配を見せない。
このアリ共、無限に湧いてるんじゃないだろうな。
「くそっ、数が多過ぎるな。魔道兵器も弾切れだ」
時折魔道兵器を使いながら広範囲に渡りガイアントを迎撃していたのだが、遂に予備弾倉も含めて弾が全て空になってしまった。
もう少しストックを持ってきておけばよかったか。
『クウー(同じ魔力なのにすぐ無くなるから不便だね)』
「ああ、全くだよ。自分の魔力も弾に変えられればいいんだが……ん?自分の魔力?」
クウの言葉に何気なくそう答えた瞬間、俺はあることに気がついた。
魔道兵器の動力は魔石だが、その根本は同じ魔力であることに変わりは無い。
ならば、自分の魔力を操作して魔道兵器に流せば撃てるんじゃないか?
「よし……試してみるか」
『クウ?(何するの?)』
「まぁ見てな。上手くいけば面白いものが見られるぞ……!」
俺はクウにそう告げると、早速セルフに魔力を流し込む。すると俺の見立て通り、先程まで空だった弾倉に魔力による光が灯りだした。
これは面白いことになりそうだ。
「おらっ!」
フォオン!
魔力を流した上で引き金を引いてみると、いつも通り機械音の様な銃声と共に、魔弾が発射された。
魔弾はガイアントへ命中すると、そのまま爆散し消滅させる。威力もこれまで通り……いや、むしろ今までよりも遥かに強化されているぞ。
「はははっ!これは面白いことを発見したな。これならもっと色々楽しめるぞ……!」
魔道兵器の新たな使い道を発見した俺は、楽しさから思わず自然と笑みが零れてしまう。
『クウ……(アカリ、怖い顔してる気がする……)』
「い、いやいや!気のせいだよクウ。怖い顔なんか全然してないから!」
どうやらだいぶ酷い顔になっていたらしく、クウに指摘されてしまった。今後は気をつけなければ。
と、ひとまずそれは置いておき、まずは新たに発見したこの魔道兵器の使い道を色々試させてもらおうか。
「はーっはっはっは!これはいいな、魔力を直接流してるから弾切れが無くなったぞ!おらおらおらっ!」
まずは連続で何発撃てるのかを試してみたのだが、魔力を直接魔道兵器に送り込んでいる為、弾倉を交換する必要が無くなり、無限に弾を撃てるようになっていた。
お陰でさっきまで以上に、ガイアントの残骸が地面に落下していく。
これは最早、ただの害虫駆除作業だ。
「え、アカリくんずっとセルフ使ってるのにまだあんなに弾残ってるの……!?」
「いえ、あれはそうじゃないわね。また面倒なことを思いついたんでしょ……」
下でセルシー先輩とマリナが、俺のこの新しい戦闘方法に何か言っている。
まったく面倒なこととは酷い言い草だ。この使い方を広めれば、魔道兵器の能力はさらに飛躍するというのに。
『クウー!(すごーい!どんどん落ちてくね!)』
「これは思った以上の威力だな。よし、このままアリ共を殲滅するぞ!」
『クアッ!』
クウも魔道兵器の強さに驚き、楽しげな鳴き声を上げている。
そして既にガイアントの群れは四割以上が倒されており、ぽつぽつと空の光も漏れ出してきていた。
この速さと威力が合わされば、殴る蹴るよりも遥かに早くガイアントの群れを全滅させられるだろう。
「うわー、これもう私達何もしなくていいんじゃない?」
「えぇ、本当に強さだけは段違いね……」
下でマリナ達が何やら話していた気がするが、もうそちらに耳を傾ける暇も無い。
そこから俺達は、ひたすらにガイアントを撃ち落としていく作業に移ったのだった。
――
「ギィィ……」
それから小一時間が経過した頃、俺はガイアント最後の一匹を仕留め終えた。
魔道兵器に自らの魔力を流し入れた際の強さは想像以上で、魔物の群れなど敵では無くなってしまう。
だが、それだけ高威力になればそれ相応のデメリットも存在したのだった。
「アカリくん、学園の備品をよくここまでボロボロにしてくれましたわね……」
「す、すみませんでした……」
俺は現在額に青筋を立てたシーラに説教を受けている最中だった。
理由は当然、借りていた魔道兵器セルフを使い物にならなくなる程ボロボロに壊してしまったからである。
「あんな無茶苦茶な使い方をしたら、兵器の方が耐えられなくなることくらい少し考えたら分かることですよ」
「楽しくてそこまで考えが回りませんでした……」
俺が先程まで使っていたセルフは、銃身が内部から破裂したように膨らみ、いくつもの穴が空いていた。
これではもう武器としては機能しないだろう。
「でも実を言うと、貴方様が居なかったらわたくしが手を貸さなければいけませんでしたから、その点は感謝していますのよ」
シーラは俺の耳元に顔を近づけてくると、小声でそんなことを言ってきた。
確かに彼女ら魔人の力はこの世界では非常に特異なものだから、そう易々と手を出すことは出来ないだろう。
そう考えれば、俺の頑張りも少しは役に立ったということか。
「なら今回のことは、それでチャラってことにしてくれよ」
「それとこれとは話が別ですわ。でもまぁ、これだけ魔石を手に入れたのですから、魔道兵器一丁を弁償する報酬くらいにはなると思いますわよ」
「えぇ、これだけ魔石を集めてやっと一丁かよ……」
シーラは辺り一面に散らばる魔石に目を向けながら、笑顔でそんなフォローを入れてくる。
だが魔石の量に魔道兵器の金額が釣り合わなすぎて全然慰めになっていない。
「シーラ先生、アカリの説教は終わりましたか?」
「えぇ、みっちり叱っておきましたわよ」
駆け寄ってきたマリナにシーラはそう告げる。
それにしてもかつての仲間に叱られたなど、恥ずかしいし悲しくなってくるな。
「この後はどうするんですか?」
「そうですね、わたくし達だけではこの量の魔石を持ち帰るのは不可能でしょうし、一旦学園へ帰りましょうか」
「あーそれなんだけど、一つ確認したいことがあるんで一度さっきの町に寄ってくれませんか?」
シーラは学園に真っ直ぐ向かう様指示を出したが、俺はその前に一つ確認したいことがあった。
それを確かめるまでは、今回の騒動が解決したとは言えない。
「何かする気なの?」
「へへっ、まぁちょっとな……」
怪しむ様に尋ねてくるマリナに対し、俺は笑顔を返す。
多分また悪どい顔をしていたんだろうなぁ。




