一章 28.俺達の戦術 前編
セロルを新たに仲間に加え四人組の部隊を編成してから数日後、ついに演習の当日がやって来た。
どうにか締切日までにチームを完成出来たことに、俺は少しほっとしている。
「全員集まっているな。今日は前回伝えた部隊編成の締切日だ。まだ部隊に所属していないものはこちらでランダムに振り分けておいたので、各自確認しておくように」
演習場に集まっている五組の前でセリーダ先生はそう告げた。
やはりまだ部隊を作れていないクラスメイトも何人かいたらしい。
「いいかお前達、部隊というのはただ四人が一緒に居るだけという訳では無い。四人それぞれの個性を活かしたチームワークを発揮してこそ、部隊の存在意義がある。よってこれからお前達には、部隊毎に集まってそれぞれの戦術プランを提出してもらう」
確かに事前にどういう陣形で行動するか、誰がどう攻めるのかを決めていなければ、部隊を組んだ意味は無い。
今日の演習ではそういった戦術面を掘り下げていくようだ。
「では各部隊毎に集まって作戦会議を始めろ!」
セリーダ先生の指示に従って、五組の生徒達はそれぞれの部隊に別れ始めた。
しかし、俺達も集まって戦い方を決めようと動き始めたのところで、変な奴らがまたセロルに絡もうとしてるのを発見する。
「よう弱虫野郎、どうせお前余り物だったんだろ?」、「可哀想になー、お前を入れる部隊が不憫だぜ」、「なんならまた俺達が構ってやろうか〜?」
「あ、あの……」
あいつらはこの前セロルをいじめてた奴らとは違うっぽいけど、それでも同類であることに違いは無い。
セロルも随分と多くの奴らに狙われてるもんだ。
「おいお前ら、うちのチームメイトに何か用か?」
「あぁ――って、リーシャン!?」
「何でお前らが同じ部隊に……!」
「んなことはどうでもいいだろうが。用がないなら、とっとと失せろ」
入試やこの前の模擬戦の影響で、俺の実力はクラス内に知れ渡っている。
そんな俺がセロルの味方をしているとあってか、そいつらはビビって散り散りに消えていった。
「あ、ありがとう兄貴……」
「気にすんなよ。それにセロルならすぐにあんな奴ら見返せるさ」
「で、出来るかな……?」
絡まれてしまった影響か、セロルはかなり弱気になっている。
確かに嫌な思いはしただろうが、あいつらはセロルにとって超えるべき壁なんだ。いつまでも怯えてる訳にはいかないだろう。
「安心しろよ。俺が戦い方を教えるんだから、あんな程度の奴らで躓いてもらっちゃ困るぜ」
「……うん、分かった。僕頑張るよ!」
「おう、そんじゃ二人の所にさっさと行くぞ!」
セロルの表情に覇気が戻ったのを確認した俺は、ガゼルとネネティアが待っている場所へと駆け足で向かう。
「遅いぞお前達」
「何かあったのですか?」
「悪い悪い、何でもねーよ。そんじゃ早速作戦会議始めようぜ」
二人は俺達が遅れて来たことが気になっていたようだが、俺がそう口にすると意識は作戦会議へと持っていかれる。
どうやら二人も早く始めたかったようだ。
「さてと、それじゃこれからこの部隊の戦術プランを決める訳だが、その前に改めてそれぞれ何が出来るのか話しておくか」
「そうだな、ならまずは俺から。この前の模擬戦で見せたから知っているとは思うが、俺は基本的に魔法を主体として戦う。ただこれは燃費と火力が今一つだから、現在改良案を模索中だ」
俺の提案を受けて最初に切り出したのはガゼルだった。確かに彼の戦い方は五組なら全員知ってるので非常にイメージしやすい。
そして、その点では俺も同じだろう。
「なら模擬戦繋がりで次は俺だな。俺は魔力操作で身体能力を強化し、急接近して近接戦に持ち込む。今後はネネティアに魔道兵器の扱い方も教えて貰って、遠距離面も対応していくつもりだ」
「クウッ!」
俺の説明にクウが同意するように頷く。今日も今日とて可愛いやつだ。
「言ってることは大したことないのに、魔力量がえげつないせいでバケモノに昇華してるんだよな」
「バケモノって、もっとマシな褒め方があるだろ!」
「私は魔力操作出来ませんから、それだけでも十分素晴らしいと思いますよ……」
ガゼルは癪なのか憎まれ口混じりに褒めてくる。素直になればいいものを。
それに比べてネネティアは、さりげなくフォローを入れてくれるあたり良い奴だ。
「では次頂きますね。私は勉強の成績も魔道兵器の扱いも、平均よりは上だと自負しています。特に長距離射撃に関してはそれなりに自信があります」
「おぉ〜、結構高スペックじゃん!」
「ふん、ななかなかやるようだな」
「ネネティアさん、凄いね……!」
ネネティアの自己評価に対し、俺達は自然と賞賛の拍手を送っていた。
それだけ自信があるなら、実技試験で俺と被りさえしなければ結構いい所まで行けたんじゃないか?
「でも、私には一つとても残念な欠点があります……」
「え、残念?何だよそれ」
「実は……私は非常に運が悪いんです」
溜めながら言うからどんな欠点があるのかと思ったら、まさかの運が悪いというものだった。
そんなの欠点に加えていいか怪しいし、そもそも自分が不運かどうかなんて分かるものなのか疑問だ。
「運が悪いっつってもな……何か証明出来る出来事とかあるのか?」
「そうですね、直近ですとあなたと試験会場が被ったことがまず不運でした。後は序盤から五人もの受験生に囲まれたのも、不運としか言い様が無いですね」
「確かに、それは運が悪いな」
「おいこら」
ネネティアが提示した具体的な例は、まさかの俺関係のことで少し悲しくなった。しかもガゼルはすぐに同情しだすし。
まぁ実際その二つの例自体は運が悪いと言っても過言では無いから、強く否定出来ないんだが。
「後は私が初めて魔道兵器を握ったのは十歳の頃なのですが、その時は兵器の暴発で全治三週間の怪我を負いました。他には街を歩いていると突然マジカロイドが暴走しだして、襲われたこともありますね」
「さ、災難だったね……」
語り出すと止まらなくなってしまったネネティアに対し、セロルは同情の言葉を送る。
確かにそれだけ稀有な出来事に会っているなら、不幸体質なのも納得せざるを得ないな。
「他にもですね――」
「もう分かった、十分だ!ただ、運が良いだの悪いだのまで作戦に考慮するのは無理だから、それは一旦置いとくぞ」
まだまだあるぞと語り出そうとするネネティアを遮る様に俺は言葉を被せ、そこで不幸話は終了させた。
彼女には悪いが、これ以上聞いていたらなんだかこっちまで不幸になる気がする。
「だが、運が悪いというのは問題だと思うぞ」
「分かってるよ。ただその不運がいつ発動するかなんて分かんねーんだから、対策なんか立てられねぇよ。その事態に直面したらその時に全力で対処する。それでいいな!?」
「仕方ないか。分かった、それでいい」
「ご迷惑をおかけします……」
ガゼルの言う通り不運というのは厄介な問題だ。だが、明確に答えが出るものでも無いのだから、対策のしようも無い。
全ては未来の自分達に託すということで、話しは一旦纏めておく。
任せたぞ未来の俺。




